インターネット技術の発達により、社会においてICTが積極的に取り入れられるようになりました。しかし学校の教育現場においては、十分に浸透しているとはいえません。

そこでこの記事では、学校におけるICT化の現状や、国が取り組んでいる「GIGAスクール構想」について解説します。ICT化の実現に向けた課題についても記載したので、ぜひ参考にしてみてください。

ICTとは、「Information and Communication Technology」の頭文字をとったもので、情報通信技術を利用したコミュニケーションのことを指します。似た言葉に「IT」がありますが、ICTにおいては、「C(Communication)」の言葉が入っていることから、コミュニケーションを重視しているのが特徴です。

学校のICT化とは、情報通信技術を利用した教育活動の全般を指します。たとえば、タブレットを使って作成した資料を全員へ共有したり、Web会議を使って不登校の生徒向けに授業を配信したり、といったことが挙げられます。

ICT化は企業において続々と進められていますが、学校教育の現場においては、まだまだ進んでいるとは言えません。ICT化が実現することで、生徒の理解度向上・学習の効率化・校務の効率化といったメリットが期待されています。

学校のICT化に関する日本の現状

では、世界各国と比べた、日本のICT化の進み具合はどのようになっているのでしょうか?文部科学省・国立教育政策研究所が発表した「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」によると、1週間のうち、教室の授業でデジタル機器を利用した時間は、以下の結果になりました。

国語・数学・理科ともに、「週に1時間以上」「週に30分以上、1時間未満」「週に30分未満」と答えた割合はOECDの平均を下回り、「利用しない」と答えた生徒においては、OECD加盟国の中で最も多い結果となりました。

上記の調査を見るだけでも、日本の学校教育におけるICT化が遅れていることが分かります。

ICT化を日本で推進するための取り組み「GIGAスクール構想」とは?

世界におけるICT化の遅れの問題を解決するため、日本の文部科学省において「GIGAスクール構想」が掲げられています。

GIGAスクール構想とは、多様な子どもたち全員の能力・資質を育てるため、1人1台の端末と、高速ネットワークを各学校に整備する、教育ICT活動の構想です。文部科学省の「GIGAスクール構想の実現へ」によると、GIGAスクール構想を以下のように定めています。

“1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで、特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できるICT教育・環境を実現する”

これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出す“

引用:文部科学省:GIGA スクール構想の実現へ

GIGAスクール構想が実現することで、教員がタブレットを使いながら、生徒一人ひとりの反応を把握したり、理解度に応じた個別学習を展開したりすることが可能になります。また、スクリーン上に、全員の意見をリアルタイムで共有することにより、生徒がさまざまな考え方に触れられるようになるのです。

GIGAスクール構想の実現に向けて国が取り組んでいること

GIGAスクール構想の実現に向け、国はさまざまな取り組みを実施しています。ここでは、令和2年度に文部科学省が発表した「令和2年度補正予算概要説明~GIGAスクール構想の実現~」の資料をもとに、4つのポイントでご紹介いたします。

参考:文部科学省:令和2年度補正予算概要説明~GIGAスクール構想の実現~

「1人1台端末」の実現に向けた整備支援

1人1台端末は、令和5年度までに実現するとされていましたが、新型コロナウイルスの影響により、前倒しで整備が進められています。主に国公私立の小・中・特支等を対象に、1台4.5万円を上限として、都道府県や地区町村へ補助金を出しました。

導入端末としては、Windows OS端末・Chrome OS端末・iPad OS端末などが挙げられます。ベンダーから提供される、無償の教育機関向けアプリケーションも導入することにより、ソフトウェアの安価な調達が可能です。

ほかにも、視覚や聴覚、身体に障害のある児童生徒に向けて、それぞれの障害に応じた入出力装置の整備を支援する取り組みも行いました。

高速ネットワークの整備支援

高速ネットワークの整備支援においては、全ての小・中・特支・高等学校等を対象に、校内LANの整備を支援しました。これは、導入する公立の都道府県、政令市、市区町村を対象に、導入費用の1/2を補助するものです。

主に、「校内LAN整備工事」や「電源キャビネット整備工事」が補助対象となり、学校単位で最大3000万円を補助しています。

GIGAスクールサポーターの配置支援

GIGAスクールサポーターとは、学内でGIGAスクール構想を円滑に進めるために、学校が配置するICT技術者のことです。具体的には、以下をはじめとした業務を行います。

  • ICT環境整備の設計
  • 工事や納品対応
  • 端末の使用マニュアルの作成
  • 端末の使用方法の周知

GIGAスクールサポーターは、4校に2人が配置され、導入した都道府県や市町村に対し、経費の1/2を補助しています。

GIGAスクール構想の現状

令和2年度から「GIGAスクール構想」が推し進められ、学校のICT化に向けた準備が着々と進んでいます。ここでは、令和3年時点での進捗状況を解説します。

端末やネットワークの整備が急速に進む

出典:文部科学省:1人1台端末の積極的な利活用に向けた文部科学省の取組について

1人1台端末や、高速ネットワークの整備については、令和2年度内に97.6%の自治体で納品が完了する見込みです。ここでいう納品とは、各児童生徒へ端末が行き渡り、インターネット環境がすべて整えられている状況を指します。

残りの2.4%の自治体は、「発注が遅くなった」「機器やネットワークの設定に時間がかかる」といった理由で、令和3年度中に納品が完了する見込みです。

また令和2年12月に、公立高等学校のICT端末の整備に関する経済対策が、新たに閣議決定されました。これにより、公立高校においても端末やネットワークの整備が進む見込みです。

参考:文部科学省:GIGAスクール構想の最新の状況について

GIGA StuDX推進チームを発足

GIGA StuDX推進チームは、端末や高速通信環境の活用を促進するため、⽂部科学省 初等中等教育局において発足した組織です。

主に、端末の活用方法や優良事例などを紹介するWebサイト「StuDX Style(スタディーエックス スタイル)」にて、教育機関向けの情報を発信し、教育委員会や学校がGIGAスクール構想を実現するための支援活動を行います。

アフターGIGAにおける課題・ポイント

アフターGIGAとは、GIGAスクール構想が実現したあとの、教育活動や社会を指します。生徒一人ひとりへ端末が普及し、高速ネットワークが整備されたあと、それをどのように活用していくかが社会や学校で問われています。

ここでは、アフターGIGAにおける教育改革を成功させるために、どのような課題が待ち受けているのかについて解説します。

EdTechサービスの利活用促進

EdTechとは、「Education(教育)」と「Technology(テクノロジー)」を組み合わせた言葉で、テクノロジーによって教育活動が変わっていく動きを指します。現在では、さまざまなEdTechサービスが登場しており、端末を使ってそれらをいかに活用できるかが、アフターGIGAにおけるICT教育の成功のカギとなっています。

経済産業省が立ち上げたWebサイト「未来の教室」では、学校の端末上でも利用できるクラウドサービスが多数紹介されています。EdTechサービスが学校にとって必要不可欠なものとなることにより、導入した端末が当たり前のように利用されるようになるでしょう。

教員へのITリテラシー・スキル研修

アフターGIGAにおいては、教える側である教員が、ITに関する基礎的な知識を身に着けている必要があります。もし、ITに苦手意識を持っている教員がいれば、適切な教育を施さなければなりません。

イー・ラーニング研究所が実施した「2021年 GIGAスクール構想とマイナンバーカードによる学習管理に関する調査」によると、GIGAスクール構想の実現に向けての課題として、「教師や保護者などITリテラシー・スキルの不足」が最も多いものとして挙げられました。(イー・ラーニング研究所調べ)

ハードの面においては、ICT化への環境整備が進みつつありますが、教える側のスキルや能力といったソフトの面においては、まだまだ改善の余地があるといえるでしょう。

出典:2021年 GIGAスクール構想とマイナンバーカードによる学習管理に関する調査

トラブル発生時におけるサポート体制の整備

GIGAスクール構想が実現すると、今までの教育活動が大きく変わるため、トラブルが発生する可能性もあります。その際に、学校だけで対処しきれない問題も多いため、国や企業によるサポート体制がいかに敷かれていくかもポイントとなります。

起こりうるトラブルとして挙げられるのは、アクセス集中による通信遅延、第三者によるサーバー攻撃、端末利用時の故障・破損などがあります。

とくに端末利用時の故障・破損においては、「故障が発生した際の修理代は誰が支払うのか」についての責任所在があいまいになりがちです。もし、機器補償に関するルールが厳しすぎれば、経済的なリスクを避けるため、保護者が利用を拒むケースも増えるでしょう。

GIGAスクール構想が実現することによって、セキュリティや運用ルールに関するさまざまな問題が発生します。それらに対して、国や企業がいかにバックアップ体制を整備していくかが、学校におけるICT化の成功に直結するでしょう。

データを活用した教育方法の改善

GIGAスクール構想の実現によって、生徒や教育方法に関するさまざまなデータを取得できるようになります。それらを収集し、分析することで、教育活動の改善につなげられるようになるのです。

たとえば、生徒一人ひとりに着目すると、その子の苦手科目や得意科目、学習スタイルの傾向といった情報を集められます。集めたデータを教員間や進学先で共有することで、個々の事情に合った教育を提供できるのです。

また、学習履歴や行動履歴などをビッグデータとして収集し、分析することで、教材や指導方法の改善につなげられます。なかなか改革が進まないといわれる教育現場においても、データ活用が進むことで、劇的な変化が期待できるでしょう。

アフターGIGAにおいては、データを活用した教育改革が欠かせません。学校や自治体の単位で、いかにデータを収集・活用していくための仕組みを整えられるかがポイントになります。

学校におけるICT化の現状を知って、理解を深めよう

この記事では、学校におけるICT化の現状と、国が勢力をあげて取り組む「GIGAスクール構想」についてご紹介しました。OECD加盟国の中で比べても、日本のICT化は進んでいるとは言えないため、急ピッチに環境整備が進められています。

令和3年度には、9割超の学校で端末やネットワークが普及しました。しかし、単に導入しただけで終わらせるのではなく、活用を継続していくことが大切です。そのためには、学校や教員はもちろん、保護者、ひいては社会がICTに対する理解を高めていく必要があるでしょう。

ぜひこの記事を参考にして、アフターGIGAや、今後のICT化の展望について考えを深めてみてください。

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