クラウド接続に必要なネットワークの種類や選び方とは?

クラウド上にあるサーバーを利用するには、まず「WAN(広域通信網)」という外部ネットワークへの接続が必要です。このクラウド接続の際に選択するネットワークは、必要に応じて複数の種類があるので、検討する前に接続の方法、そして特性を知るのは大切です。この記事は、クラウド接続に必須となるネットワークとその種類を、特徴や選択時のポイントとあわせて解説していきます。

 

企業の拠点からクラウド上のサーバーに接続する場合、オンプレミスでのサーバー使用と同じネットワーク構成を、そのまま当てはめることはできません。適切な外部ネットワークへ接続する必要が生じます。

「クラウド」とは何か?

「クラウド」とは何か?

クラウドは、「クラウドコンピューティング」と呼ばれ、ストレージ、サーバー、ネットワーク等のコンピュータリソースを、いつでも、どこからでも、利用者が活用を自由に行えるシステムのことです。クラウドの活用は、急激なアクセスの増加や拡大するビジネスへの対応を容易にします。また、ITリソースの効率的な使用を促し、柔軟な共有の実現に寄与します。

クラウド接続を行う際の、ネットワークの種類

クラウド接続を行う際の、ネットワークの種類

クラウドの接続方法は、実装モデルによってネットワークの種類を大きく4つに分類できます。

  1. パブリッククラウド
  2. プライベートクラウド
  3. マルチクラウド
  4. ハイブリッドクラウド

以下に、4つのネットワークの種類の概要と、それぞれの特徴について列記します。

1.パブリッククラウド

「パブリッククラウド」は、あらゆる業界や業種、企業や個人に対してオープンに提供されているタイプのクラウドコンピューティング環境を指しています。

この形態の場合、専用ハードウェアの所有は特に必要ありません。企業または個人は、必要になった時に必要な分、サーバーやネットワークリソースを自由に利用することが可能です。使用者はオンライン上にて申込みの手続きをすることで、即座にクラウドサービスの利用を行えます。
この「パブリッククラウド」へは、2通りの接続ネットワークを選ぶことができます。

  • インターネット接続
  • インターネットVPN接続

インターネット接続

インターネット接続とは、自社拠点からクラウドへの接続にインターネットを利用して通信を確立する手法です。手軽で、インターネット環境があれば利用できる一方、沢山の人が同時にネットワークを共有している仕組みのため、不特定多数の利用者による傍受という危険性を孕みます。

インターネット接続で利用する場合には、危険性を鑑みて、自社での充分な情報セキュリティ対策が必須です。具体的な対策としてはSSLを利用した暗号化や、ゼロトラストセキュリティ対策などが推奨となっています。

インターネットVPN接続について

インターネットVPN接続とは、自社拠点からクラウドへの通信確立に、インターネットとVPNを構築する手法です。インターネット経由の際にVPNを構築すると、最低限はセキュリティが確保されるという利点があります。

デメリットとしては、VPN設定にルーター等の機器がいることが挙げられます。また利用時には、VPNの実装及び設定という手続きが発生し、上記インターネット接続と比べると若干、コストや時間がかかる場合があります。

2.プライベートクラウド

「プライベートクラウド」は、企業・組織が独自のクラウド環境構築を行い、その社内や組織内で、各部署・関連する会社へ提供する方法です。従前の社内システムと同じく、企業独自のシステム設計と管理が可能となり、柔軟なサービスが設計できます。そしてセキュリティ面においても、セキュリティポリシーを独自に適用できるので強固なセキュリティを敷いて運用していくことができます。

「プライベートクラウド」のネットワーク接続には、以下の3つの種類があります。

  • IP-VPN接続
  • 専用線接続
  • 広域イーサネット

それでは、各特徴を確認してみましょう。

IP-VPN接続について

IP-VPN接続とは、自社拠点からクラウドへの通信確立に、IP-VPNを利用する手法です。IP-VPNというのは「通信事業者の所有している」専用閉域ネットワークを使って通信する技術です。

IP-VPNで使用される閉域ネットワークは、公のアクセスではなく、通常は通信事業者の許可を得たユーザーのみの使用に制限がなされます。

IP-VPN接続によるメリットはまず、安定した通信品質で使用できることです。そしてクラウド接続が通信キャリアの設備を経由し行われることによって、第三者から傍受される可能性は極めて低いものとなり、セキュリティ確保がなされる利点があります。

専用線接続について

専用線接続とは、自社拠点からクラウドへの通信確立に、専用の通信回線を使う手法です。専用の帯域が確保されることで、通信品質においても契約した通信帯域の性能を最大に活かせるのが大きなメリットです。IP-VPN接続と同じく、専用回線のため第三者から傍受される可能性は極めて低く、高いセキュリティが確保されます。

デメリットとしては、専用回線の敷設が必要なため他の手法と比べて納期に時間を要してしまいます。価格についても他の接続方法よりも高額になりやすいのには留意が必要といえます。

広域イーサネットについて

広域イーサネットとは、所在地が分散した複数拠点が用いるローカルエリアのネットワーク(LAN)を、イーサネット(Ethernet)を使用し、相互接続した広範ネットワークという概念を示します。
IP-VPNと同じように閉域網を使った通信技術ですが、使われるプロトコルが異なります。IP-VPNはIPプロトコルを採用していますが、広域イーサネットで利用するのは多様なルーティングプロトコルです。

広域イーサネットのメリットはカスタマイズ性が高く、幅広い設定ができるため、企業や組織の各拠点を効果的に接続することができることです。

ただしそれゆえに費用が高い傾向にあり、高度な設定が必要となるケースも考えられます。

3.マルチクラウド

「マルチクラウド」は、パブリッククラウドを複数利用することによって、最適な環境構築を行う方法です。「マルチクラウドネットワーク(MCN)」と呼ばれています。そのメリットとしては、企業や組織ごとのニーズにあわせたサービスを組み合わせられること、また特定のクラウドベンダーへの依存によって起こる、他サービスを利用する際の制約が回避できる、等があります。

さらにクラウドを複数活用することは、障害が一方のクラウドサービスで発生してもシステム停止の回避し、リスクの分散と軽減させるという利点へつながります。留意点として、コストの管理と運用負荷が増大しやすく、セキュリティの統制を要することが挙げられます。

4.ハイブリッドクラウド

「ハイブリッドクラウド」は、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたり、パブリッククラウドと物理サーバーといった種類の違うサーバーやサービスの組み合わせによって、単一環境として運用する方法を言います。異なるサーバーを組み合わせれば、各々が持つ利点を最大限に活用しながら、同時にデメリットを補完しあうことも可能です。

一例として、セキュリティ面に優れているプライベートクラウドと、低価格で使うことができるパブリッククラウドを組み合わせることで、低価格で高度なセキュリティを確保した体制を構築するというような場合です。デメリットとしては、複数クラウドの組み合わせを実現するため、システム設計や構築、運用など複雑になるという側面があります。

クラウド接続のネットワークをどう選ぶか

クラウド接続のネットワークをどう選ぶか

沢山のクラウド接続方法がある中で、自社に適しているクラウド接続ネットワークを選ぶために、選択のためのポイントを5つご紹介します。

ポイント1:セキュリティの観点で選択

クラウド接続のネットワークを選択するにあたって、セキュリティは重要な要素です。セキュリティ対策を適切に行うことによりプライバシーを確保し、データの機密性を保持しながら安全に企業活動を遂行していくことができます。

セキュリティの観点で選択する時は、最初にクラウドプロバイダーが提供しているセキュリティ機能、認証手段の検証を行い、業界の基準や法的要件に適合しているかを確認するのは重要なポイントです。

あわせて確認することは、クラウド接続にデータ暗号化やアクセス管理など、具体的なセキュリティ機能が組み込まれているかです。柔軟にセキュリティ要件に合わせた対応が可能なネットワークの選択によって、より安全で信頼度の高いクラウド環境を構築することが可能です。

ポイント2:業務を行う所にあわせて選択

クラウド接続のネットワーク選択には、業務を遂行する場所や、拠点分布を考えることも必要です。地理的に遠い場所に拠点が存在する時や、リモートで従業員が業務を行う可能性がある場合には、ネットワークが広域に対応している必要があるでしょう。

もし特定地域にデータを保存するという制約や、法的規制などがあるようなら、クラウド接続のネットワークをその条件に合わせて選ぶようにしましょう。

ポイント3:通信速度と安定性で選択

通信速度の高さと安定性は、迅速で円滑な業務の遂行のために欠かせない要素です。クラウド接続のネットワークを選択する時は、ビジネス上で求められる事項にネットワーク性能が対応できるかも確認ポイントとなります。

大容量のデータ転送、リアルタイムの業務処理においては、通信速度が影響を与えます。

ネットワークが安定しない場合、サービスが中断されたりデータ損失を起こすこともあり得ますので、剰余性や負荷の分散が考慮されていて、信頼性の高いネットワークを選ぶのが大切です。

ポイント4:費用で選択

クラウド環境を構築するには、費用の面での検討も欠かせません。適切にネットワークを選択することはコスト面での負担軽減につながるのです。

クラウド接続は、各ネットワークプロバイダーが色々な価格のモデルを提供しているため、自社の予算に合っているプランの検討を行いましょう。初期費用の他、追加でかかる費用があるかどうか、そして将来的にビジネスを拡張する場合に発生する費用の変動を考慮に入れた上で、正確にトータルのコストを評価するのがポイントと言えます。

ポイント5:構築しやすさと構築期間で選択

ネットワークの構築しやすさ、そして構築にかかる期間は、ビジネスを効率良くスピード感を持って進めるために大切な要素です。クラウド接続を扱うネットワークプロバイダーには、専門的な知識のあるエンジニアが手軽に利用可能なツール・サポートを提供することによって、企業が迅速に、そして効果的にネットワーク設定や管理が行えるよう、環境を整備しているサービスも存在しています。自社に専門エンジニアが少ない場合は特に、構築のしやすい接続方法を選ぶと良いでしょう。

まとめ

クラウド接続のネットワークは、複数の種類があります。それぞれにあるメリットとデメリットを知り、理解した上で自社に最適であるネットワークを選び、クラウド環境を展開していくのが重要となります。

同時にセキュリティについての対策、業務を遂行する場所に合わせてネットワークを選択すること、そして通信の安定性や速度、費用、構築しやすさが検討ポイントとなります。

上記の要素について総合的に検討し、自社に最適なネットワーク選定を行うことが、クラウド環境の円滑な構築につながります。

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