以前に「RPAがどういったものか」や「各社RPAツール紹介」など記事を書かせていただいて早くも3年以上が経ちました。当時は、まだまだRPAと言う言葉だけが先行している感じでしたが、最近では、多くの企業で地に足が付き、それなりに浸透してきているのかと思います。皆さんの会社では、どのような状況でしょうか?
私共の会社でも、これから新規でRPAのPoCや特定部門での初期導入を始められる企業様の割合が減り、既にRPAを開始されている特定部門からより多くの部署への展開や基幹システムへの利用など本格的に幅広い範囲でRPAを利用していく上でのお困りごとをご相談いただく割合が格段に増えてまいりました。
そこで今回は、そういったRPAを全社への展開することやより高度な利用への拡大などを弊社では「エンタープライズ型RPAへの展開」と称し、弊社なりにエンタープライズRPAはどういったもので、どういったメリットがあり、どのような機能が必要とされるかなどを複数回に分けてご紹介させていただこうと思います。
1. エンタープライズ型RPAとは
弊社なりに従来のRPAと比較してエンタープライズ型RPAとは、どういったものであるかを対象業務や利用部門などの「自動化業務範囲」の側面からと自動化対象業務をどのように発見/分析し、開発/利用し、モニタリング/評価を行っていくかなどの「自動化メカニズムの範囲 (ハイパーオートメーション)」の側面でご紹介させていただきます。
1) 自動化業務の範囲
a)利用部門
まずは、RPAが対象としている利用部門の視点から考えて行きたいと思います。
従来多くの企業様では、RPAの動作特性や他社の導入事例から、経理や人事、総務部門など間接部門(バックオフィス部門)から導入を始められていることが多いと存じます。
しかし、RPAに適した業務は必ずしも間接部門だけに限られたわけではなく、むしろ直接部門である営業部門や製造部門、物流部門などにも多く存在します
また、RPAは人の作業を代行すると言う特性から、どちらかと言うとより多くの人が従事する部門へ適用することにより、より多くの効率化が図れることが期待されます。
さらに、ご存知の通り、RPAを導入される場合より多くの範囲を対象とすることにより、シナリオの共通化/流用やロボットの動作/運用などの多くの面で効率化が計りやすいと思われます。
そういった意味においては、個別部門で別々に導入を図るのではなく、会社全体としてより多くの部門で利用することにより、より多くのスケールメリットを享受する事が可能になるのです。
b)対象業務
2番目の視点は、RPAが対象としている業務内容です。
従来多くの企業様では、RPAの動作特性や不具合が発生した場合の業務に対する影響や対応などの面を配慮して、ネット上や社内に点在する情報を目的に合わせて収集/レポートするような業務、Office ツールを利用して情報加工するような業務、複数のシステム間での取引先/商品などマスター情報の転記業務などどちらかと言うと主幹業務そのものではなく主幹業務を補助するような業務を中心にご利用をすすめられているかと思います。
しかし、今後は従来から進められていた主幹業務を補助するような業務での利用実績を踏まえ、主幹業務を補助するような業務だけではなく、主幹業務そのものへの対応の拡大を期待されるのではないかと思います。
そのためには、従来にも増してより一層安定的動作の保証するために、従来からの利用されている業務アプリケーションの画面連携の仕組みだけではなく、業務アプリケーションのAPIを使ったより高度な連携の仕組みの利用が必要です。また、エラーが発生した場合に自動的に処理のリトライを行う仕組みやガバナンス/コンプライアンスに配慮したIT統制への対応なども検討する必要が出てくるかと存じます。
さらに、従来の人手では対応できなかった新たな業務などへの応用や、今回のコロナ渦に対応したテレワークなどの新しい働き方への対応などにも大きく期待が膨らむのではないかと思います。
c)開発体制(IT部門開発/現場部門開発)
3番目の視点は、RPA自身の開発体制の面です。
多くのRPAメーカー様では、ノンプログラミング開発ができることをうたい文句に売り込みを進めたため、IT知識がなくても「だれでも簡単に開発ができる」と誤解を招いてしまい、実施にやってみると従来のプログラミングに比べるとかなりハードルは低いものの、変数や式などのある程度のIT知識がなくては開発ができないツールが多いため、期待を裏切られたと感じられたお客様も多くいらっしゃったのではないかと思います。
ある程度のIT知識がなくては開発ができないツールを導入された場合、それなりに教育体制を整え、現場部門の方での開発を行っている会社様もいらっしゃいますが、対象業務の選定などは現場側で行っていただくものの開発自身は、自社IT部門や外部に委託するなどを行っている会社様も多いのではないかと思います。
また、ツールの中には現場部門の方にも比較的簡単に利用できるツールもありますが、同ツールでは対象の業務アプリケーションが限定的であったり、メーカーが想定する簡単な業務での利用に限定されるなど、現場における比較的簡単な業務には耐えられるものの前述の対象業務範囲の拡大要求などに合わせた本格的な業務への対応ニーズには耐えられないものになっているのではないかと思います。
そういった意味では、今後さらにRPA範囲の拡大を加速されていくためには、ある程度のIT知識がなくては開発ができないツールや比較的簡単に利用できるツールを単独で利用するのではなく、ある程度のIT知識がなくては開発ができないツールや、トップダウン的に本格的な業務の開発と比較的簡単に利用できるツールを使い、ボトムアップ的な現場の簡単な業務の開発を組み合わせていくことによって、より効率的な拡大が計ることが期待されます。
d)RPAの利用形態
4番目の視点は、RPAの利用形態の面です。
現在のRPAの利用形態の多くは、人が作業中心となり、操作員が事前/事後作業の合間にロボットの実行指示に従い同PC上でロボットの実行を行う有人型ロボット(Attended Robot)、時刻やファイルを特定フォルダに配置するなどのシステム事象に合わせて操作員が事前/事後作業を行うことを前提にサーバー機上で時刻スケジュールやシステム事象によりロボットの実行を行う無人型ロボット(Unattended Robot)と呼ばれる形態で運用をされているかと思います。
(RPAツールにより、有人型ロボット/無人型ロボットの一方のみを提供している場合もあります)
しかし、この利用形態では人が作業の中心であり、操作員の作業分担の適正化や権限管理、セキュリティなど運用に関する多くの部分が利用者にゆだねられており、より一層の効率化を図ることができていませんでした。
今後は従来のように人が作業中心となり作業を進めて行くのでなく、従来のワークフローツールで行っていた人と人を連携する機能をRPAと融合し、同機能が作業の中心となり、人の作業が必要な部分では、捜査員の作業負荷、権限管理やセキュリティなどを配慮し、適任者に対して作業の指示や確認を求め、適任者の作業や確認が完了次第、必要なロボットを自動的に実行することによって人とロボットの協働をより効率的に行っていくことにより、より効率的な自動化が図れると期待されています。
e)定型業務から非定型業務への拡大と自立化への期待
最後の視点は、定型業務から非定型業務への拡大と自立化への期待です。
RPAの対象とするデータは、デジタル化されたデータのみであるため、先進的な企業では事前にOCRにより紙のデータをデジタル化することにより、さらにRPAの対象範囲を拡大して行くのみではなく、OCR処理自体をRPAに操作させ、紙データを処理する業務もRPAの対象に拡大するなどが始まっています。
また、既に非定型問合せの窓口として活用されているチャットボットと組み合わせて、非定型問合せに合わせてRPAを動作させることにより、従来、人がガイダンスすることに行っていた入力内容やデータ選択が分かり辛い業務や専門の作業員がいないと行えなかった業務などを人のガイダンスなしにより簡単に実行させる試みや、AIと組み合わせることにより、業務の中でより条件が複雑で高度な判定が行う業務への適応なども始まっているようです。
さらに、まだ実験の段階で本当の意味で実用化まではもう少しかかりそうですが、従来、事前に人間がルール化を行い、そのルールに従って設定することによりRPA化を行っていましたが、事前に人間がルール化や設定を行わず、実行操作の履歴から自動的にルールを学習させることにより、RPA化が行えるなど自立化への発展が期待されています。
今回は、「エンタープライズ型RPAとは」と題し、対象業務や利用部門などの視点から「自動化業務範囲の拡大」の側面をご紹介されていただきましたが、次回は自動化対象業務をどのように発見/分析し、開発/利用し、モニタリング/評価を行っていくかなどの「自動化メカニズムの範囲(ハイパーオートメーション)」の側面でご紹介させていただきます。