DX(デジタル・トランスフォーメーション)が社会のバズワードとなって少し立ちます。

社会課題を解決するために、5G、クラウド、ソーシャルメディア、IoT、ビッグデータなどを活用し、物流業界が持つ力で世の中へ貢献していくのがDXです。

全体の生産性向上を目指して、物流業界を改革していく流れとして、DXは大きな役割を果たしてくれます。DXは必ずしも物流業界だけの話ではなく、社会全体にとって必要な改革です。

物流業界がかかえる課題とは

物流業界がかかえる課題とは

では、そもそも物流業界が抱えている課題とはどのようなものでしょうか。

まずネットショップ増加による小口配送が増えています。

いま、ホチキスの針をひと箱、ボタン10個という単位で、ネットショップでオーダーすることは多いのではないでしょうか。軽くて小さい荷物は、実際に増えています。

小口配送の増加は、同時に多頻度化につながります。つまり、小さくて軽くなった荷物の代わりに、何度も何度も配送があり、ドライバーへの負担はとても大きくなってしまうのです。これは、物流を利用している人にも心当たりがあるのではないでしょうか。自宅にやってくる荷物が増え、同時に個数が増加し、軽くなっているのです。

それに伴い、ドライバーには負担が増えています。ただし、給料が上がっているかというとそうではなく、ただ負担だけが増えているのです。そして、物流業界に入ってくる人は減り、人材不足に拍車をかけています。ただでさえ人口が減る中、積極的にドライバーをしようという人も減っているのです。

さらに、新型コロナウィルス感染症の蔓延で、社会は一気にオンライン化・在宅化に舵を切りました。これが結果として、さらなる物流業界への負担につながっているのです。

小口・多頻度化と、人手不足のスパイラルを招いています。これが物流業界に大きなインパクトを与えているのは事実です。

物流業界におけるDX

では、DXと物流業界にはどのような関係があるのでしょうか。

上記で見た、小口化・多頻度化・人材不足に、どのような影響を及ぼしているでしょうか。

まず、複数の会社が組んで、倉庫をシェアしたり、輸送をシェアしたりなどの、経営統合が考えられます。倉庫のシステムを一括で行い、全体としての効率化を目指すものです。これまで以上に連携し、会社ごとの全体最適から、物流業界全体の最適に移行しています。

配送の効率化を実現し、ライバル企業のドライバー同士もいがみあうことなく、協力し合って、配送を進めていきます。

また、物流業界全体の課題として、再配達率の低下も重要な要素です。コロナで在宅が増え、再配達率は下がっているものの、全体の20%の労力が、再配達に割かれているのも事実です。

SNSでの不在管理

SNSでの在宅管理

DXのうちに、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を使って、再配達を下げる取り組みもなされています。たとえば、LINEを使って配達時間を指定することを周知づけるなど、地道な利便性の向上がなされています。ただし、LINEなどのSNSは詐欺などの犯罪に悪用されることもあります。不在の時間を狙われたり、犯罪に利用されたりなどのネガティブな側面もありますから、詐欺を未然に防いでいくこともこれからのソーシャルメディアの課題だと考えられます。

AIでの在宅管理

AIでの在宅管理

さらに、不在の通知はまだ人力ですが、AIによって自動で不在をチェックするという試みも可能性としてあります。AIによる不在管理はプライバシーと非常に強い関連があるので、厳密な運用が求められますが、それでも全体の生産性向上という大きなメリットは見逃せません。

また、AIは需要の予測にも使えます。世の中のニーズがどのように変化するとか、ホリデーシーズンにどの地域の荷物が増えるとかによって、人員の配置を適宜、変更するといった行動変容が可能になるのです。また勤務を最適化することで、ドライバーの負担を大幅に下げられたり、人件費を上手にコントロールしたりなども可能になります。

自動運転という未来も

自動運転という未来も

さらに、技術が進歩すれば自動運転も未来にやってくることでしょう。

そうすれば、負担の大きいドライバーの仕事の中でも、運転業務に関する負担が大幅に減ります。テスラを代表として、かなりの自動運転技術が進んでいますので、人材不足や負担の軽減に役立ってくれます。

ZARAによるSDGsのための物流

ZARAによるSDGsのための物流

持続可能な発展はこれからのビジネスにとってとても大切になってきます。

環境に配慮することは、アパレルでも重要で、それを物流で実現しているのがZARAです。

電子タグを用いて現場の需要予測を行い、そこから物流も最適化して、在庫をコントロールしています。ZARAの取り組みはグローバル企業ならではです。
これによって、より消費者へ選ばれる企業へと変化しようとしているのです。

これからの消費者は、SDGsで企業を選ぶようになります。とくにZ世代より若い人たちは、地球に優しく環境への配慮が行き届いた企業を好んで選びます。そこで、DXによるSDGsへの適用で、ZARAは変わろうとしているのです。大量生産、大量消費の時代を脱却し、環境に優しい企業へと変わることで、時代に合った企業になろうとしています。

物流の未来はDXでかなり変わってくる

DXによって、物流業界はかなり変化するとみられます。

物流は単純な仕事にみえて、社会にとって非常に重要な位置をしめます。しかしあまり進化してこなかった業界であるのは事実です。ドライバーにとってはきつく稼げる仕事でありますが、事故を起こしてしまうと仕事を減らされるなど、安定して稼ぐのは大変です。

そこで、AIや自動運転技術などによって、一気に負担が軽減すれば、ドライバーも少し楽になりますし、安定して稼げる職になるのはよいことではないでしょうか。物流の仕事がなくなることは決してないので、あとはいかにして人材不足の世の中で負担を減らすかというところが課題です。

最後に

物流はグローバル規模です。

そこで、世界規模での全体最適が求められています。環境に配慮しつつも、発展していくために、物流業界も再編を求められているのです。DXによって、そうした地球規模の変化が可能になります。

日本企業もいずれこの流れに追随していくことでしょう。今はまだあまりエコに配慮されてるとは言いがたい状態ですが、いずれ世界の求めに応じて変わっていきます。

AIや自動運転はその筆頭として、物流業界を変えていくことでしょう。テクノロジーがより配送の最適化だけでなくエコフレンドリーになることで、働きやすく、気持ちよく、他者の存在を考えた仕事に変わっていきます。

DXは、物流業界をより良い方向に変えていくでしょう。ガソリン車も廃止される方向に向かう今こそ、変化のタイミングです。物流をよりよく変えることで、同じ地球に暮らすすべての人にとって、良い影響をもたらすことができるのです。テクノロジーによって、企業もよりよくなる好例ではないでしょうか。