AIの普及によるデータセンター需要拡大の理由と事例、課題を解説

昨今、AIの需要が急速に拡大したことにより、企業がデータセンターを新設・活用することが進められています。ですが、そもそもAIの需要が拡大することでなぜデータセンターを必要とするのかがわからないという方も少なくないでしょう。こちらの記事では、AI活用に関するデータセンターの需要・拡大と、それに伴うデータセンターの選択肢や課題について詳しく解説していきます。

AIや機械学習で注目を集めるデータセンターとは?

AIや機械学習で注目を集めるデータセンターとは?

日々ITの利用規模が拡張し、要求が多様化する今、企業は安定かつ安全なデータ・システムの運用を必要としています。主に災害への対策として、これらを保全する役目を果たしているのがデータセンターです。データセンターとは、IT機器、ネットワーク機器やサーバーを安全に保管しておく専門の施設です。IT機器を自社で管理するべき際も、十分なスペース・セキュリティ対策がない場合があります。これら様々な問題を解決するため、データセンターを利用する企業が増えている傾向にあります。この施設は、IT機器の運用や管理に優れており、色々な企業の要求を満たすことができます。

AIやDXによって需要が拡大

AIやDXによって需要が拡大

デジタルトランスフォーメーション(DX)やAIによって、データセンターの需要が拡大しています。金融や医療、エネルギー産業に至るまで多分野で、サービス提供・研究開発に影響を及ぼしていることも特徴です。デジタル化の推進は、ビジネスでもAIの利用幅を広げ、自然に対話が可能な生成AI「ChatGPT」のようなサービスの拡大にもつながっています。デジタル化の波が、クラウドサービスの需要増加とデータセンターの拡大に大きく関わっています。

特に、クラウドサービスプロバイダーの大手AWSなどが日本市場に入ってきてからは、クラウドのサーバを設置するデータセンターの建設が加速しています。この背景には、情報の信頼性や反応速度が要となる企業にとって、データセンターの選択が生命線であると認識があるからです。一方で、データセンターの地域集中も大きな問題となっていて、東京都心の地価高騰や大規模地震・首都直下型地震などのリスクも考慮して、関西地域などへの分散化が進んでいます。

AI活用拡大によるデータセンターの動向と事例

ここからは、AIの活用拡大によるデータセンターの動向や事例について紹介していきます。

国内では関西を中心に新設が進められている

データセンター新設動向において、国内では関西圏が主に中心とされています。これまでデータセンターの殆どは関東地域に集中しており、サーバーとの距離が物理的に近くなることによって情報処理の高速化が理由としてありました。ですが最近は、災害リスクの分散を図るといった意味で、関東圏外の地域への新設が進められています。
特に関西は、インフラと地理的に優位であるため、新たなデータセンターの設置候補地として注目されています。この動きにより、地方分散化によるリスク軽減また、効率性の追求ができます。
※出典:ITmedia NEWS

大規模言語モデルなどの生成AIを想定したデータセンターへの投資も拡大

AI技術が発展することによって、大規模言語モデルなどの生成AIに対する需要が増大しています。それに伴って、さくらインターネットでは、生成AIを利用に特出したサービスを提供するために、GPUクラウドサービスへの投資約130億円と予定しています。
2,000基以上のNVIDIAの「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を使用し、高い演算能力且つ拡張性を兼ね備えたサービス提供が予定されています。石狩データセンターでサービス提供予定。冷涼な気候を利用した冷却システムや、水力発電の再生可能エネルギーの使用により、CO2排出ゼロを可能にしているデータセンターです。これによって、持続的にAIを使用する新たな道が切り開かれています。
※出典:さくらインターネット株式会社

ソフトバンクとNVIDIAがAI活用の次世代データセンターで協業

通信技術とAIの進歩をサポートする次世代データセンターの構築を目指す共同プロジェクトが、2023/5/29からソフトバンクとNVIDIAによって始められています。この協業は、5G/6Gと生成AIのための新たなプラットフォームの作成を目指し、NVIDIAの「GH200 Grace Hopper™ Superchip」が置かれる予定です。このプラットフォームは全国に設ける新たな分散型AIデータセンターに取り入れる予定です。

構築されるデータセンターは、効率的にワイヤレス通信と生成AI向けのアプリケーションを提供できるエネルギー効率とコスト効率を目指しています。ここでは、「Arm NeoverseのGH200 Superchip」がベースの新しい「NVIDIA MGX™ リファレンスアーキテクチャー」が使用され、アプリケーションのスケーラビリティ、パフォーマンス、リソースの利用効率の向上が期待されています。

AIを活用しデータセンターは設計され、各種生成AIアプリケーションの実装やエネルギー消費の削減、データセンター間のリソース共有ができます。よって、高い拡張性を持った次世代のデータセンターができ、低遅延で5GとAIのワークロードを効率的に処理が可能と期待されます。
出典:ソフトバンク

AI活用で企業が選択できるデータセンターの形態と選択肢

AI活用で企業が選択できるデータセンターの形態と選択肢

データセンターとはいえ、企業が選べる形態にはいくつもパターンがあり、大きく3つに分けられます。それぞれを詳しく説明します。

ホスティング

ホスティングとは、データセンターの事業者が提供するホスト・サーバーを企業が共用・独占する形態のことです。この形態では、企業は定められたメモリやCPU性能の容量などに応じサービスの利用が可能です。この方法の一番の利点としては、サーバーの購入・運用にかかるコストの削減です。また、ハードウェア全体の運用を事業者に委任することができるため、ハウジング方式と比べてかなり手間が省けます。ですが、OSなどミドルウェアの種類、ハードウェアの構成などが一部制限されるため、柔軟性に欠けるといった制約もあります。

クラウド

クラウドデータセンターとは、ホスティングサービスが進化した形態とも言え、企業はほぼ全てのシステム運用をクラウド事業者に委ねることができます。OS・ハードウェア、ミドルウェアだけでなく、クラウド事業者によって必要なソフトウェアまで提供され、企業はメンテナンスの手間を省いて利用できます。
主にAmazonのAWSなどがありますが、ホスティングサービスと比較して、これらのクラウドサービスは提供範囲が広く、企業の運用負担を大幅に削減することが可能です。ですがまた一方で、ホスティングよりシステム自体の自由度は低下するというデメリットもあります。

ハウジング

ハウジングは、データセンター内に自己所有のサーバーを設け、施設の電源、ネットワーク、冷却装置などを利用する形態です。一番の利点は、すでに所有しているサーバーを移すだけで利用できる点です。基本的には、サーバーを設置する際データセンターが提供するラックに設置を行いますが、一部ではサーバールーム全体を借りたり、自社ラックを設置したりなどのオプションも提供されています。

AIや機械学習の活用で高性能サーバーを利用する際の課題

AIや機械学習の活用で高性能サーバーを利用する際の課題

高性能サーバーの利用で機械学習やAIを活用する場合は、まだいくつかの問題点があります。ここでは、2つの問題点を解説していきます。

消費電力の負荷が大きい

機械学習とAIでは、HPCサーバーやGPUサーバーに多くの電力が必要になる点が新たな問題となっています。これらのサーバーは多大な電力を消費するため、基本、1ラック内に複数収まりきらないのが現状です。その結果、電力供給が追い付かないため高密度に高性能サーバーを設置することができないという問題を抱える企業が増加しています。HPCサーバーやGPUサーバーの大量の電力消費は抑えられないため、サーバーは大量の熱が溜まり、適切に冷却する必要があります。これにより、迅速な起動、サーバー設置場所の選択、安定した稼働が問題化することがあります。したがって、AI基盤に対応するため適したハウジング環境が必須となります。

複数のラックを借りる必要がある

ラックが複数必要となることも課題です。
大体のデータセンターでは、2〜3kVA(1ラックあたり)の電力の供給が可能で、たとえ最新のデータセンターだとしても高くて6kVA程しか対応できません。しかし、最新のHPCサーバやGPUサーバは、1台で6kVAの電力を必要とするため、1ラック1台しか収容できず、コストが増加します。また、これらのサーバは大量に発熱するため、適した冷却をするために広くラック間の距離を取らなければなりません。これによって、スペースを無駄にとってしまい、運用のコストが増大します。この問題を取り除くためには、冷却設備の効率化・最新化が求められ、そして電力供給能力を兼ね備えた新型のデータセンターの選択も大事です。

まとめ

デジタルトランスフォーメーション(DX)とAIが普及するにつれ、急速にデータセンターの需要が増大しています。特に、生成AIや大規模言語モデルなどのAI技術の発展は、大量のデータストレージと高性能なサーバーが必要なため、新たなデータセンターへの投資を後押ししています。ですが、多くの電力を消費したりなど、課題として従来のデータセンターの枠組みを超える必要があります。これに対応するため、効率的に冷却可能な設備や高い電力の供給ができるな新たなデータセンターへの選択が必須です。今後のデータセンターは、問題に対応し、且つ企業の技術動向・ビジネスニーズに合わせたサービスの提供が求められます。