業種や規模を問わず多くの企業で、システムの老朽化が重要な経営課題となっています。システムの老朽化は、システムの肥大化、複雑化、サイト化、ブラックボックス化といった問題を引き起こす原因となり、業務を停滞・停止させるリスク要因となるだけでなく、慢性的な生産性の低下や高コスト構造を招き、企業の成長や事業戦略の足かせとなるからです。

そのため、多くの企業がシステムの刷新に取り組んでいます。しかし、いざシステムを刷新するとなると、「IT技術面の問題」に加え、「どのようなシステムを導入すればいいのかわからない」、「どのくらいのコストがかかるのかわからない(試算できない)」といったさまざまな壁に阻まれ、更改のタイミングが先送りになってしまったり、必要なコストやリソースを十分に確保できず、新システムの稼動に漕ぎ着けても思ったような成果が得られないといったケースも少なくありません。

IT技術面の問題

システムの刷新に取り組む際、まず大きな壁となるのがIT技術面の問題です。これまで企業の多くはシステム構築をITベンダーに丸投げするケースも多く、内部の情報システム部門への投資を抑える傾向がありました。その結果、内部の情報システム部門が弱体化しています。しかし、それはユーザー企業が一方的に悪いのではなく、技術者がITベンダーに集中し、システム構築を外部委託先に依存せざるを得なかったという環境も大きく影響しています。

そのため、企業内には旧システムに関する人材や知識、ノウハウがあったとしても、これから導入する新しい技術や先進的な技術に関する人材や知識を確保するのが難しい状況となっています。また、そのような人材を新たに育成するにしても、時間やコストがかかり、外部から優秀な人材をすぐに獲得するのも簡単なことではありません。そのような状況のもと、システムを刷新するにあたっては、これまで通り外部の専門ベンダーに委ねる(外部委託する)のか、それとも内製化するか決断しなければなりません。

内製化のメリット、デメリット

システムの刷新を内製化すれば、システムの全容を社内で把握できると同時に、関連する知識やノウハウも蓄積でき、ブラックボックス化が回避されるといったメリットがあります。さらに、人材育成にもつながり、事業戦略に合わせて柔軟にシステムの改変や運用が対応できるようになるというメリットもあります。

しかし、外部の専門ベンダーに依頼する場合と比べると、人材や知識が足りず、品質の担保が難しいというデメリットも考えなければなりません。最初は専門的なスキルやリソースが揃わず、立ち上げのスピードが遅くなるという恐れもあります。また、上手く人材を育成しても、そのような人材は引く手あまたですので、離職などのリスクにも供えなければならないといった側面も留意しておかなければなりません。

外部委託のメリット、デメリット

一方、システムの刷新を外部に委託した場合、専門的なスキルや専属のリソースを既に持ち合わせているので、一定レベル以上の品質が担保でき、開発のスピードも速くなるというメリットが期待できます。

その反面、社内にノウハウを残すことが難しく、後々、ベンダーを変更するとなると手間がかかるという点や、内製よりも外部委託する方がコストが割高になりがちだというデメリットがあります。

成否を左右する要件定義

内製するか外部委託するかは、それぞれのメリット、デメリットを踏まえ、コストや求めるスピード、自社の将来的なビジョンなどと照らし合わせた上で、検討する必要があります。加えて、要件定義すなわち実装する機能を決める作業がしっかりできるかどうかもシステム刷新の成否を大きく左右します。

要件定義にあたっては、まず既存のシステム機能や各システムに関わる業務の棚卸しをした上で、新しいシステムの機能を決めていくことになります。そのため、棚卸しをいい加減にしてしまったり、棚卸しをせずにゼロベースで新しい機能の詳細を定義してしまうと、既存のシステムや業務に内在する問題点をそのまま引き継いでしまったり、必要な機能が十分に網羅されていなかったり、重複している機能や業務が反映されてしまったりするなど、さまざまな問題を引き起こすことになりかねません。

情報共有のメリット

棚卸しされた情報が正確かつ、わかりやすく可視化されていれば、業務の現場担当者や経営層、システム開発担当者(内製、外部委託にかかわらず)の情報共有が進み、既存業務やシステムの問題点の洗い出しや、改善策の議論・立案も容易となります。その結果、新システムのTo-beモデルもイメージしやすくなります。

その上で、具体的な機能へと落とし込んでいけば、機能や仕様の優先順位付をしたり、それにともなう精緻なコスト試算をしたりすることができるようにもなり、結果的にシステム全体の最適化を図ることにつながります。

棚卸しをした結果が可視化されていないとコミュニケーションが滞り、各部門や経営層の意志が正確に反映されず、基本設計や実装の段階に入ってから数多くの手戻りが発生するという事態にもなりかねません。

可視化で綿密な連携を実現

システムの刷新は、膨大なコストや大規模障害のリスクを抱える割にメリットが見えにくいという印象を持たれることも少なくありません。また、現場や経営者の要望を十分に汲み取ることができず、作業に見合った評価を得られないという声も数多く聞かれます。

そのような状況に陥らないようにするためには、現場と経営者、そしてシステム開発担当者の綿密な連携が欠かせません。業務の可視化は、3者をつなぐ重要なコミュニケーションツールとなります。現場や経営者に満足してもらうシステムを稼動させるために、ITに関する専門的かつ高度な知識はもちろん、現場の業務を的確に捉え、経営方針や事業戦略に沿ったシステムのイメージを可視化するスキルが求められています。