RPA(Robotic Process Automation)やノーコード開発ツールの普及により、業務の自動化に取り組む企業が増えています。しかし、手間とコストをかけて自動化やデジタル化するためのツールを導入したにもかかわらず期待していたような成果を上げることができない、業務の効率化やコストの削減が実感できず、社内での利用が広がらないと思い悩んでいる企業も少なくありません。

今回のコラムでは、業務の自動化による成果が上がらない理由を考察し、最大化するためのポイントについて考えてみたいと思います。

業務自動化のメリット

業務の自動化によって、これまで人が中心となって作業していた業務を、夜間や早朝、休日などを問わず24時間365日、遂行できるようになります。同時並行で作業をさせることも容易なので、大量の業務を短時間で処理するのにも適しています。また、確実に作業を遂行することができるため、人的ミスや漏れの撲滅、業務の標準化、不正なといったリスクの排除等にもつながり、業務の品質が担保されるというメリットも期待できます。また、人的リソースをより付加価値の高い業務にシフトできるため、業務全体の効率化や時間短縮、品質向上、人件費の削減といった効果も見込まれます。

しかし、業務の自動化にはこのようなメリットがある一方、適用する業務や作業内容を正しく見極めないと、思ったように成果を上げることができません。

成果が限定的になってしまう理由

たとえば、非効率な業務をそのまま自動化した場合は、業務単体では一定の成果が得られるように見えても、関連する業務や業務全体で捉えたときに得られる成果は限定的となってしまいます。業務全体で最適化が図られていなければ、自動化やデジタル化ツールの潜在能力を十分に引き出すことができません。成果よりもツールを導入・運用するコストがかかってしまうようであれば本末転倒です。

また、自動化する業務の優先順位や適用範囲の見極めを誤ると成果が上がらなかったり、限定されてしまったりすることがあります。業務全体を見ずに適用する業務を判断したり、特定の人物や組織の主観などだけで適用する業務を判断してしまう場合がこのケースにあたります。

ではなぜ、適用する業務の見極めが重要になるのでしょうか。

仮に単体の業務が効率化されたとしても、その業務に続く工程(作業)を開始するまでに待ち時間が発生したり、業務処理能力を超えてしまい作業が追いつかなくなります。結果として、効率化・迅速化された成果は帳消しになってしまい、場合によっては自動化・デジタル化するよりも時間やコストがかかってしまうということにもなりかねません。また、これまでの作業では何らかの形で途中経過が残っていて、その情報を確認することで後工程における効率化やミスの防止などを図っていた場合、前工程が自動化されたことで作業環境が変わり、業務に支障が出てしまうというようなケースも考えられます。

可視化して自動化すべき業務を判断することがポイント

では、的確に自動化を適用する業務やその範囲を見極めるにはどうすればいいのでしょうか。その1つの解決策として、業務を可視化することが挙げられます。「業務の可視化」とは、業務を洗い出し、業務間のつながりを明確にして、文書化することです。多くの場合、フローチャートと各工程に関する付帯情報などで示されます。業務全体が可視化されると、業務が最適化されていないところやブラックボックス化されているところ、属人化しているところなどが把握できるようになり業務の流れを最適化する第一歩となります。

その上で、業務の前・後工程のつながりを踏まえて自動化に適しているのかどうか、自動化した場合にどの位の効果が見込めるのか、リスクなどほかの業務へのインパクトはどのくらいあるのかなどを、各作業について検討していくとともに、自動化の対応状況や、見込める成果、リスク、優先順位などを作業ごとに議論・評価していけば、客観的な分析や判断ができるようになります。このような取り組みは、野良ロボット対策なども含めた運用管理にも有効です。

一方、可視化する範囲も重要となります。基本的には1つ業務の開始から終了まで、複数部門からの業務をすべて洗い出す必要がありますが、あまり細かな作業の内容まで可視化するのは手間も時間もコストもかかってしまいます。各業務に関わる人・モノ・カネ、そして関連するシステムに着目しながら、自動化の範囲を明確にすることが重要となります。

スムーズに合意形成を図ることも重要

各部署や作業担当者がバラバラのドキュメントを持ち寄って議論すると、お互いの認識や議論がかみ合わなかったり、利害関係によって着地点を見出せなかったりすることがあります。業務の可視化は、このように適用する業務の判断をする基本材料となるだけでなく、担当や部署が異なる業務の利害関係者が議論する上で、互いが共通認識を持つためのドキュメントとしても重要な役割を果たすことが期待できます。

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