昨今のビジネス環境の急速な変化の中で、既存のビジネスの見直し・効率化が企業にてこれまで以上に求められています。
そのような状況の中、業務改善の必要性を感じているが「何から始めてよいかわからない」「どのように社内で推進するべきかわからない」方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、中小から大企業まで様々な企業様の支援をしている弊社業務改善コンサルタントが『企業でよくある業務改善のお困り事に対する解決への考え方』を連載記事でご紹介いたします。
業務ミスは「人」のせい?
今や企業にとっても一般生活者にとっても欠かすことができないインターネット。その通信が長時間、不安定になったり、大手銀行のATMが利用できなくなったり、社会生活や経済活動に大きな影響をおよぼすトラブルが数多く報道されています。自然災害など人間の力ではおよばない現象が原因となることもありますが、多くの場合、基本的な仕組みの問題であったり、ちょっとしたヒューマンエラーが原因となっていたりすることも少なくありません。
大規模なトラブルにいたらなくても、日々のさまざまな業務においてミスは発生します。むしろ、ミスを経験したことがないというほうが珍しいのではないでしょうか。一般的には、ミスが発生すれば、その原因を探り、対応策を考え、改善を図るという取り組みがなされるでしょう。
しかし、どのような対応策を実施しても、何度、改善を図っても、業務ミスが減らない、むしろ業務ミスが多発しており、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。また、ミスは人間が引き起こすもの。人間が関わっている限りミスはなくならないと諦めている方もいるかもしれません。
しかし、ミスを人間のせいにしていては、業務に人間が関わっている限りいつまでもミスを撲滅することはできません。また、人間が関わらない業務、たとえばシステムで自動的に実行する業務であっても、システムを作ったり運用したりするのには少なからず人間が関わっていますので、結局は人間のミスが業務に影響をおよぼすことになります。
本コラムでは、「人」のせいにせず、業務ミスを解消する方法について考察してみたいと思います。
業務ミスが繰り返される理由1:ミスが記録・共有されていない
業務ミスが減らない、もしくは多発する原因としてはいくつかのケースが考えられます。まず、業務ミスの情報を「記録として残していない」「共有していない」ケースです。言い換えれば、業務ミスを見える化していないことが、ミスの発生原因となる場合があります。
業務ミスが見える化されていないと、ミスをした当人以外はミスを正しく認識できず、ミスの内容や発生した原因を正しく理解できません。そして、同じような業務で同じようなミスが繰り返されることにもつながります。
業務ミスが繰り返される理由2:業務プロセスに潜むミスの原因を把握できていない
一方、業務ミスを見える化して、対応策を講じているにもかかわらず、思ったように業務ミスが減らないケースもあります。また、対策を講じた直後は改善が見られるものの、時間が経過するとともに対策の有効性が薄れてしまうということもあります。
このような場合、業務プロセス自体にミスを誘発する要因が内在していたり、関連するほかの業務の影響を受けてミスが発生したりしている可能性があります。しかし、これまで改善やミス防止に取り組んできた業務であればあるほど、闇雲に議論をしたり、目先の対策を講じたりしても、根本的な解決にはいたりません。
まずミスの情報の見える化だけでなく業務プロセス自体を可視化することが業務ミス解消の糸口となります。すなわち、誰が、どの業務を、どのように、どんな順番で実施するか、業務フローとして記されていれば、業務の現状(As-Is)を正確に把握して、ミスの原因を特定することができます。
一方、それであれば業務手順書や業務マニュアルがあるので、業務プロセスの可視化など不要だと考える方もいるかもしれません。
しかし、業務手順書や業務マニュアルには、その名の通り業務を進める手順は書かれていますが、業務プロセスは記載されていない場合がほとんどです。大半は文字による手順の説明で済まされ、並行して実施されるべき作業が把握しづらいという問題があります。
加えて、自部門の手順しか記載されていない場合がほとんどなので、直接関連する作業の前後の部門や関係者しか把握できず、さらにその手前やその先に存在するお客様や仕入れ先などとの関連性を知るための情報は示されていません。したがって、業務の全体像を俯瞰できる業務フローを作成することをお勧めします。
共通認識を持ってミスの発生原因を探る
業務プロセスの可視化という「共通認識」をベースに、ミスの発生原因を探ることが、今発生している業務ミスや潜在的な業務ミスの原因、さらにはほかの業務に影響されて発生しているかもしれない業務ミスの原因を探し出す近道となります。
「共通認識」があれば、部署の違いや担当者の違い、経営者や管理者、現場の担当者、さらに外部の関係者であっても、問題点やそれぞれの作業のつながり、そして影響度合いを見極め、同じ視点で議論や改善を図ることができるはずです。
これまで「共通認識」がないまま、議論や改善をしてきたのであれば、その場しのぎの対策となってしまったり、一部の声の大きな担当者や立場の強い人の意見に偏ってしまったりしたことが考えられます。その結果、効果的なミス防止策にはいたらなかったのかもしれません。
ビジネスインパクトによって優先順位を付ける
すべての業務ミスを同等に捉え、限られたリソースですべての課題や問題点を一気に解消するのは簡単なことではありません。また、さまざまなビジネス環境の変化にともない、改善後に新たな課題や問題点が浮かび上がることもあります。
そのため、実際に業務ミスを解消する取り組みを実施する上では、優先順位を付けて対応に当たることが重要なポイントとなります。その見極めの基軸となるのはビジネスインパクトです。すなわち、1つのミスが大きな損害や広範囲におよぶ影響をもたらすものや、コンプライアンスに違反するような事案に関しては、優先的に取り組む必要があります。
業務プロセスが可視化されていれば、特定の専門家の意見を鵜呑みにしたりせず、部署や業務を横断する事案だとしても、客観的に優先順位の判断ができるようになるはずです。
ミスを隠さない社風を築く
業務ミスを解消する方法について考えてきましたが、ミスは誰でも隠したい、ごまかしたいというのが人間の心理です。そのため、業務ミスが発生してもミスを隠さず、改善につなげる雰囲気、大げさに言えば社風を築くことがやはり重要となります。
ミスが発生したときこそ、業務を改善して、働きやすい環境を目指す「チャンス」だと捉えるようにしましょう。そうすることで、経営者から現場の担当者まですべての社員が、積極的に改善を図ることができます。その実体験を繰り返していくことが、ミスを隠さない体質の形成につながっていくのではないでしょうか。
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第2回 : 業務可視化で従業員の「やる気」にスイッチを入れるhttps://dxnavi.com/bpmconsultant-interview-2/
第3回 : 現場で活用される「業務マニュアル」の作り方
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