日々の業務を円滑に遂行するために、業務マニュアルは重要な役割を担っています。マニュアルがあれば、経験がない新しいメンバーでも、ある程度業務を遂行できますし、教育にかかるコストを低減することができます。また、マニュアルを見ながら業務を行ってもらうことにより、対応方法のばらつきを抑制し、業務を標準化することができます。特に昨今は、多くの企業でテレワークの導入をしており、新人の横に付き添って業務を教えられないため、その必要性は急激に増しています。

そして、マニュアルによって、特定担当者に業務が集中してしまう属人化現象を回避することもできます。部門毎の独自ローカルルールも排除できます。それにより、特定の部署、担当者だけ残業が多く休みもとれないという事象が発生しにくくなります。また、属人化した現場で発生しがちな担当者不在による業務遅延などのトラブルや、業務停止のリスクを回避することができます。さらに、マニュアルに従って業務を遂行すれば、業務ミスを回避でき、手戻りが少なくなるため、業務を効率化にもつながります。

業務マニュアルの有効活用

DXの内製化に必要な準備

業務マニュアルは、用意するだけでは全く意味がありません。現場で活用されてこそ前述のような効果を発揮します。それでは、現場で有効活用されるためにはどうしたらよいのでしょうか。

マニュアルには様々な形態があるため、まずは、その種類ごとの特性を理解する必要があります。その上で、ご自身の組織で有効活用できるマニュアルはどのようなものなのか、検討することから始めましょう。本コラムでは、様々なマニュアルの特性を考察しながら、現場で活用され、効果を発揮する「業務マニュアル」について考えてみたいと思います。

①文章型マニュアル

業務マニュアルが機能しない理由として、「わかりにくい」ということがよく指摘されます。特に、文章がメインで長文で書かれているマニュアルは、読もうとする気持ちが削がれ、時間や手間もかかることから犬猿されがちです。機能面で見ても、たとえばいくつかの条件によって業務が分岐する場合の記述などは、複雑でわかりにくくなります。

仮に、習熟するまでに手間や時間がかかったとしても、業務マニュアルに従って業務が正しく遂行されていれば、その役割はある程度果たされていると言えるかもしれません。しかし、「わかりにくい業務マニュアル」は時間が経過するにつれて使用されなくなり、業務品質の低下やミスを引き起こす要因となります。そのような状況が続くと、結果的に業務マニュアルを再整備したり、現場に再教育を施さざるを得なくなるなど、コストや時間を浪費する悪循環を生み出します。

②動画マニュアル / イラスト多用のマニュアル

文章がメインで書かれた業務マニュアルはわかりにくいと考え、動画マニュアルやイラストや図版などを多用した業務マニュアルを作成する企業も増えてきました。このようなマニュアルは、初見の業務を理解する際や集合教育のような場面では有効性が高く、理解速度を上げるというメリットがあります。

一方で、動画は検索性が劣るというデメリットがあります。何かわからないことがあって調べようと思っても、それを動画の中から探すのは困難です。結局、マニュアルを確認せず同僚からの伝聞で済ませてしまうことになります。また、修正の手間やコストがかかることから更新が遅れ、内容が陳腐化して「使われない業務マニュアル」となってしまいます。追加・修正事項を補足として記載している業務マニュアルも見かけますが、補足情報が増えるほど、わかりにくく、使いにくい業務マニュアルとなってしまいます。

③部署単位のマニュアル

部署毎に別々の形態で業務マニュアルを作成している場合、要注意です。部署内では精査されたものであっても、部署間を連携する業務が抜けたり、重複するという現象が発生します。また、当該部署内では業務が最適化されているとしても、前後工程の別部署に影響を及ぼし、必要以上に負荷がかかったり、非効率化を引き起こす場合があります。業務の標準化は、業務マニュアルの重要な役割の1つですから、それが実現されなければ、業務マニュアルが機能しているとは言えないのです。

業務フロー型マニュアル

業務フロー型のマニュアルは、業務フローをベースとして作業手順や必要情報を記載・閲覧できるようにしたものです。業務の初めから終わりまでの一連の流れが図解されていることにより、一目で確認することができます。また、各作業に必要な詳細情報(いつ、誰が、何を、どうすればいいのか)も同時に確認することができます。また、複雑な条件によって分岐する業務に関しても、視覚的に整理されるので、並行で実施する作業か、直列(前作業が終わらないと実施できない)作業かを瞬時に理解することができます。

このような業務フロー型マニュアルは、どのように作成したらよいのでしょうか。WordやExcelで作成している方が多いと思いますが、その場合、メンテナンスやバージョン管理に手間がかかります。最新の業務内容が反映されている状態を維持して担当者に共有するのは容易なことではありません。昨今では、業務フロー型マニュアル作成に特化したツールがありますので、それを利用することをお勧めいたします。

ツールを使用すれば、前述の課題を解消できるだけでなく、リンク機能を用いて当該業務の前後で関係する他部門のマニュアルを連結して管理することもでき、業務を漏れなくシームレスにマニュアルとしてまとめることが可能です。また、関連文書や規定文書もリンクしておけばすぐに閲覧できるので同僚に聞くよりも早く知りたい情報を確認できます。何よりも運用変更によって改訂した場合に、即座にアップデートでき、常に最新版を閲覧できる環境を構築することもできます。

人材の確保が難しい時代。テレワークの拡大など働き方も多様化する中、業務マニュアルに求められる役割や重要性もまた大きく変わろうとしています。これを機に、そういった環境に即した業務マニュアルの作成を検討してみてはいかがでしょうか。