デジタルサイネージとは、デジタルディスプレイやモニターを使用して情報を映像で表示するシステムです。
従来の看板や紙のPOP、掲示板などと異なり、デジタルコンテンツをリアルタイムで更新・表示できるデジタルサイネージは小売・飲食店、オフィス、交通・教育機関など多くの場所で活用されています。本記事では、デジタルサイネージの運用方法とよくある課題の解決策について解説します。
デジタルサイネージ運用の基本とメリット
まずはデジタルサイネージの概要と、効果的な活用の重要性について知っておきましょう。
デジタルサイネージ運用の基礎知識
デジタルサイネージは、主に以下の5つを目的として導入されます。
- 広告配信・販売促進
- ブランディング
- 顧客体験の提供
- 情報提供
- 環境演出
動画・静止画・テキストを用いたリアルタイムな情報提供と柔軟な更新が可能なデジタルサイネージは、主な効果として「注目度向上」「広告効果の向上」「情報の適時性確保」などが挙げられます。
デジタルサイネージを導入するには、以下の機器が必要です。
名称 | 役割 |
---|---|
ディスプレイ |
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プレーヤー(STB) |
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コンテンツ管理システム(CMS) |
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ネットワーク接続 |
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サーバー |
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デジタルサイネージを効果的に運用するメリット
デジタルサイネージの導入には、以下の5つのメリットがあります。
- 時間帯や状況に応じたリアルタイムな更新
- 場所や対象に合わせたピンポイントな訴求
- 動画や高解像度の画像による視覚的インパクト
- 視聴者の反応の効果測定も可能
- システムによっては顧客との双方向コミュニケーションも可能
しかし、デジタルサイネージを導入するだけで効果が出るとは限りません。デジタルサイネージで効果を最大化するためには、特徴を活かした適切な運用と継続的な改善が必要です。
デジタルサイネージの運用方法5ステップ
次に、デジタルサイネージを実際に運用する際の流れとポイントについて、5つのステップに分けて解説します。
1:運用プラン設計
デジタルサイネージの導入で期待する効果を上げるためには、まず何を訴求・提供したいのかについて明確な目的設定が必要です。機器選定や運用方針は販促、情報提供、ブランディングなどデジタルサイネージを導入する目的に応じて異なります。
例えば販促目的でデジタルサイネージを導入する場合には、キャンペーンやイベント、セールなどの販促計画を基にしてコンテンツの更新計画を立てるのが一般的です。
機器や設置場所についても、人通りの多さや視認性、滞留時間などを考慮して屋内か屋外か、ディスプレイのタイプや大きさをどうするかなど、目的に合わせて決定します。
また、目的が複数店舗での販促ならネットワーク型、更新頻度がそこまで多くない情報提供なら単独のスタンドアロン型など、デジタルサイネージのシステムについても初期段階で検討が必要です。
2:コンテンツ計画と制作
目的に合わせた機器やシステムの選定導入が終わったら、次にコンテンツの計画と制作に入ります。
適切なコンテンツの長さを決定するための主な要素は視聴環境です。例えば販促目的で駅構内や街中など一瞬通過するだけの人が多い場合には短め、待合室やレジ前など一定時間見てもらえる設置場所は長めにするなど、視聴者の滞在時間に合わせて設定します。
コンテンツは必ずしも動画がベストとは限りません。訴求内容やターゲットに応じて動画・静止画・テキストから適切な形式を選びます。
専門性の高い高品質なコンテンツを制作したい場合は外部委託も検討すべきですが、自社で制作する場合にはテンプレートのあるサービスを利用すると制作の負担が少なく済みます。
3:スケジューリングと配信
デジタルサイネージにとって重要なのはきめ細かい配信運用であり、定期的に更新しないと単なる「ポスターの電子化」になり効果が十分に期待できません。
以下のように時間帯、天候、ターゲット層、設置場所、イベントなどに応じてコンテンツを変更することで、デジタルサイネージの強みを活かし効果を上げられます。
- 飲食店で朝昼夕で異なるセットメニューを表示する
- 雨天時に暖かいスープや鍋材料をPRする
- 人気スポーツの試合の日は応援セットとしてお酒とおつまみを訴求する
自動配信のスケジュール設定が可能なネットワーク型のデジタルサイネージなら、配信スケジュールを事前に設定し、自動で切り替えられます。コンテンツ管理システムを活用すれば、複数拠点の一括管理や、急な変更への対応も容易です。
4:効果測定と改善
配信後は、通行人の視線を直接観察したり、視聴率が測定できるディスプレイを導入したりといった方法で効果測定を行います。
次に、配信による来店客数の変化や売上への影響を分析します。これらのデータを基に、コンテンツの内容、配信時間、設置場所などを継続的に改善するサイクルを短期間で回せるのも更新が容易なデジタルサイネージの強みです。
5:メンテナンスと更新
電子機器であるデジタルサイネージのデメリットの一つが機器の劣化や故障です。そのため、紙媒体の広告と異なりソフトウェアの更新やハードウェアの点検など定期的なメンテナンスが必要です。運用を外部委託する場合は、サポート体制や代替機の提供などのサービス内容を確認しておくとよいでしょう。
特に屋外設置の場合は天候などによる設置環境の影響を受けやすいため、定期的な清掃も行います。
コンテンツの定期的な更新も欠かせません。同じ内容を長期間表示し続けると効果が薄れるため、季節や流行に合わせて随時更新できるような負担の少ない運用体制を整えましょう。
デジタルサイネージ運用におけるよくある課題と解決策
デジタルサイネージの導入効果を上げるためにも、運用で起こりがちな3つの課題と解決策についておさえておきましょう。
費用対効果の低さ
原因 | 解決策 |
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ターゲット理解の不足 |
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コンテンツの質が低い |
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視聴率が低い |
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費用が高い |
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コンテンツ更新の負担
原因 | 解決策 |
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頻繁な更新作業の必要性 |
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内部リソースの不足 |
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コンテンツ作成の知識不足 |
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技術的トラブル
原因 | 解決策 |
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ハードウェアの故障 |
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ソフトウェアの不具合 |
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ネットワーク接続の問題 |
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デジタルサイネージの運用代行を外部委託すべき?
デジタルサイネージの導入には、機器の導入費に加え運用費用や電気代などのコストがかかります。そのため、運用を内製化するか外部委託するかも重要な検討事項です。
内製化・外部委託それぞれで運用した場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。
項目 | メリット | デメリット |
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内製化 |
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外部委託 |
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運用を内製化すれば運用コストはおさえられますが、自社にスキルとリソースがそろった人員がいるかも重要な検討ポイントです。運用の専門家のノウハウを活用しつつ、社内の限られたリソースを事業に集中投下したほうが結果的に効果が上がる可能性もあります。
また、外部委託した場合の意思疎通については、事前の詳細な要件定義や委託先との緊密なコミュニケーションにより解決できます。
まとめ
効果的な情報発信ツールとして多くの利点を持つデジタルサイネージですが、効果を最大化するためには単に導入するだけではなく適切な運用が成功の鍵となります。
デジタルサイネージの導入目的や自社の状況を考慮しつつ、導入効果を最大限に引き出す運用体制を選択しましょう。