国内のデータセンターサービス市場は、IDC Japan株式会社が2021年に実施した調査によると、1兆7,341億円に達していて、2025年にかけて右肩上がりで成長していくと予想されています。ここ最近では、データ量や設備の数の扱いが増えた企業が多く、自前のサーバールームの使用をやめ、データセンター利用へ移行する企業が増えています。
出典元:IDC Japan株式会社「国内データセンターサービス市場予測を発表」より
データセンターの利用を検討するときは、まずどのようなメリットやデメリットがあるのかをしっかりと確認しておくことが重要となります。みなさんによく理解していただくためにこれからデータセンター利用した場合のメリット・デメリットについて解説いたします。
データセンターとはどういうものか
まずはじめに、基本的なデータセンターとはどういうものかを解説していきます。
データセンターとは、サーバーやネットワークなどのIT機器を管理するために必要な専用施設です。一般的には事業者が拠点を構えていて、複数の企業に対しサーバーの格納スペースを貸し出すことで、一括で空調などの管理を実施しサービスの提供を行っています。
このデータセンターサービスには、大きく分けてハウジングとホスティングという2つの種類があります。
ハウジング
まずひとつめの[ハウジング]とは、サーバーを格納するために必要なスペースだけを借りてきて運用する形態で、「コロケーション」とも呼ばれています。メリットとして、今使っているサーバーをそのまま使用できることがあげられますが、運用や保守などの作業を基本的に自分たちで行う負担があります。
ホスティング
次に[ホスティング]ですが、レンタル形式でデータセンターが保有するサーバーやネットワーク機器を利用する方法です。運用や保守などの作業はサービス提供者が管理してくれるので、負担を軽減できるメリットがあるのですが、デメリットとしてハウジングやコロケーションよりも自由度が低くなってしまう点があげられます。
データセンター利用によるメリット
データセンターを利用した場合、次のようなメリットがあります。
● 安定した稼働が実現
●セキュリティ向上に期待
● 管理業務などの負担軽減
●コストの削減
それではひとつずつ説明していきます。
安定した稼働が実現
データセンターを利用することによって、自社で運用する場合よりもさらに安定した稼働が実現できます。
例えをあげると、次のような対策を施しているサービスがあります。
- IT機器の管理に最適な温度・湿度で管理を行う
- 複数の変電所からの受電ができる
- 非常用発電装置の備えとなる
- 無停電電源装置の利用
- 通信の冗長化が可能となる
- データを保管する拠点の分散
- バックアップを取得する
データセンターにおいて、機器の故障や停電、断線を防ぐための対策は徹底しているため、災害などの非常事態が発生した場合においても常に安定した稼働が期待できます。昨今では、災害が発生した際の復旧や修復を目指す「DR(Disaster Recovery)」や、災害などの緊急事態時に備えて事前に策定をする「BCP(Business Continuity Planning)」として、導入や検討を行っている企業や教育機関が増えています。
セキュリティ向上に期待
データセンターでは、人的・物理的・技術的などさまざまなセキュリティ対策が施されています。例えを挙げるとすると、次のようなものがあります。
- データセンター内における有人監視セキュリティ
- ICカード・生体認証などを用いた入館管理セキュリティ
- M&O認証やISO 20000 / 27000の取得などセキュリティの品質を証明
- サーバー・ネットワークやストレージなどの仮想化
データセンターサービス事業者によるセキュリティ対策は、責務として事業を継続するため厳格に行っており、自社で運用するよりもはるかに強固にできると考えられます。
管理業務などの負担軽減
特にホスティングサービス利用の際は、保守にかけるサーバーの管理負担を大幅に軽減できるメリットがあります。従来、自社で行っていた監視や運用、保守などの作業をアウトソーシングすることによって、より本業へ集中することができるようになります。
データセンターサービスでは、運用・監視の代行サービスなどの「マネージドサービス」を提供しているところが多くあります。業務を実施してくれる例として次の通りです。
- パフォーマンスを管理
- ストレージの管理
- ジョブを管理
- ネットワークの管理
- セキュリティ管理
- サービスデスクを提供
- システム基盤保守
また、利点として、障害などなんらかのトラブルが発生した場合でも、データセンターから専門家が迅速に対応してくれることが挙げられます。
コストの削減
データセンターを利用する場合、自社でサーバールームを設けるのと比べてみると、サーバーやネットワーク機器などの維持や管理にかけるコストを削減することができます。例えば自社でサーバールームの構築や運用した場合、このようなコストがかかります。
- 免震幸三の採用などによるサーバールームのリフォーム代
- サーバールームのレンタル料
- 空調設備、火災検知システム、ラック、電源供給設備、防犯カメラなどの設備費
- サーバーの維持・管理などの人件費
また、施設や設備の老朽化など、立て直しをしたり改修をしたりする必要がある場合は、さらに費用負担が増えます。その点、データセンターを利用した場合は、支払うのは初期費用や月額費用だけで運用を継続できるのが魅力です。
データセンターを利用する際、主にかかる費用は以下の通りです。
- 初期費用
- ラック/ユニットごとの月額基本料金
- 電力使用料金
- ベストエフォート型、ギャランティ型などの回線仕様料金
- マネージドサービス利用料
自社のサーバー設備が小規模ならば、自社で構築した方が安くなる場合もありますが、多くの場合でコスト削減が期待できます。
データセンターを利用するデメリット
データセンターを利用する場合のデメリットを挙げるとすると次の2つが考えられます。
●サードパーティーリスクの発生
●現地で作業を行わなければならない場合がある
サードパーティーリスクの発生
サードパーティーリスクとは、第三者企業(ベンダーなど)と連携や提携をしたときに起こるかもしれないリスクのことです。データセンターで起こるかもしれないサードパーティーリスクの例です。
- テロなどによる人災
- 自然による災害
- 内部関係者による不正や情報漏洩など
特に、内部関係者による不正に関しては、どのような取引先でも発生する可能性があるもので、自社だけで管理する場合と比べるとやはりリスクの増大が懸念されるものです。また、規模の大きいデータセンターであればあるほどテロリストなどのサイバー攻撃や物理的な攻撃対象になりやすいと考えられます。自社がデータセンターサービスを比らべる場合は、「コンプライアンスやガバナンスなどで信頼するに値する企業であるかどうか」「自然災害やテロに対する意識や対策がきちんとなされているかどうか」などをよく確認すべきでしょう。
現地で作業を行わなければならない場合がある
ハウジングサービスを利用すると、トラブル発生時やサーバーやケーブルの敷設などの作業が発生したと場合、現地に赴いて作業を行わなければいけない場合があります。そのようなときは、自社の拠点から遠い位置にデータセンターが立地していると、メンテナンスの手間や移動費などの余分なコストがかかってしまいます。NHKの報道によると、データセンターの多くは関東にあり全体数のおよそ60%を占め、関西の大都市圏内には約24%立地しているそうです。ですからできる限り近い立地条件を考えると、東京の場合だと関東の中から、大阪の場合では関西の中から選ぶことがおすすめです。
しかし、利便性だけを追求しすぎると、拠点分散ができずにBCPの観点からはマイナスとなってしまいます。ですから公共交通機関を利用して2時間以内にアクセスできる場所を基準として検討するのが良いと思います。
参考元:NHK「ネットが使えなくなる? データの拠点がやばいことに」
データセンターのメリット・デメリットを理解しよう
ここまで、データセンターのメリット・デメリットについて解説してきましたが、いかがでしたか。
自社でデータセンターを利用した場合、設備投資や維持にかけるコストを抑えることで、より品質の高い運用を期待することができます。しかしその一方で、事業者要因によるリスクなどの心配や、拠点への距離が遠い場合は管理が不便になることもあるので、その点を事前に十分に考慮する必要があるでしょう。中~大規模の設備を持つ企業ならば、基本的にデータセンターを活用した方が効率化・最適化が期待できるので、ぜひ積極的にデータセンターの利用を検討してみてください。