プロジェクトを達成するためには、課題の特定と解決は不可欠です。効果的な課題管理は、プロジェクトのリスクを軽減し目標達成に寄与しますが、多くの組織がプロジェクト管理のさまざまな側面で課題に直面しています。

本記事では、プロジェクト管理における「課題」の定義やよくある課題点、解決方法について詳しく解説します。

プロジェクト管理の「課題」とは

プロジェクト管理において、「課題」は成功を左右する重要な要素です。まずはプロジェクトにおける課題の定義について解説します。

プロジェクトにおける課題の定義と重要性

プロジェクトにおける「課題」とは、プロジェクトの目標達成に向けて解決すべきすでに発生している、または発生が予測される事象や要因を指します。主に以下の特徴があります。

  • 原因が明確
  • 適切な対策で解決可能
  • プロジェクトの成否に直結

未解決の課題はプロジェクトの成功を妨げる重大な要素であり、QCD(品質/コスト/納期)に影響を与え将来的にプロジェクトの遅延や失敗につながる可能性があります。そのため、プロジェクト管理において課題の特定と解決は非常に重要です。

プロジェクト管理における「課題」「問題」「タスク」の違い

次にプロジェクト管理において、「課題」同様に頻繁に使用される「問題」と「タスク」との違いについて見てみましょう。

プロジェクト管理において、問題を正確に分析し原因を適切な課題に落とし込む必要があります。課題設定には「なぜ?」という質問を繰り返す「なぜなぜ分析」をはじめとしたフレームワークが有効です。

プロジェクト管理におけるよくある課題点

プロジェクトの進行中にはさまざまな課題がつきものです。ここではプロジェクト管理でよく直面する課題について説明します。

目標設定の曖昧さ

プロジェクトのゴールが不明確な場合、チームの方向性が定まらず無駄な作業や重複作業が発生しリソースの浪費や顧客満足度の低下、競争力の喪失につながります。また、完了基準が不足していると作業者の思う基準では不十分だった場合に際限のない作業の追加や手戻りが発生する可能性があります。

スケジュール管理の困難さ

市場競争の激化により、実行に無理があるスケジュールが設定されるケースもあるでしょう。非現実的なスケジュールは品質低下やチームメンバーの疲弊・モチベーション低下を招きます。また、トラブルや顧客の要望変更による突発的なタスクの追加はリソースの再配分を必要とし、結果としてプロジェクト全体の大幅な遅延につながりやすくなります。

ほかにも現場の進捗や問題の把握が困難な場合、迅速な対応ができず工期の遅延や予算超過を引き起こすケースも考えられるでしょう。

工数管理の不正確さ

プロジェクト管理の国際的ガイドブックであるPMBOKで言及されている、プロジェクトの特性「段階的詳細化(走りながら詳細を決める)」により、初期段階での詳細な計画立案と工数の見積は困難です。

また「計画より手間がかかる作業だった」など、作業量の過小評価によるリソース不足や納期遅れ、チームの過度な負担増加の可能性も考えられます。ほかにも、タスク間の依存関係を見落としていると一つのタスクの遅れで全体に影響を与えプロジェクト全体の遅延を引き起こします。

リソース最適化の難しさ

通常、企業では複数のプロジェクトが同時進行しており、各プロジェクトに適切なスキルセットを持つ人材を十分に確保することは困難です。人材の適切な配置ができない場合や、スキルセットと役割にミスマッチがある場合、生産性の低下や品質問題の発生、チームメンバーの不満増大につながります。

リソース問題は人員だけではありません。予算管理の課題は、コスト超過やプロジェクトの縮小、最悪の場合はプロジェクトの中止を招く可能性があります。

コミュニケーションの不足

情報共有の遅れや漏れは、重要な決定や変更が適時に伝わらず手戻りや重複作業を引き起こすだけでなく、問題の早期発見・対応の機会を逃し小さな問題が大きな障害に発展するリスクが高まります。コミュニケーションの問題はメンバー間だけではありません。顧客とのすり合わせ不足は認識の齟齬によるミスや追加の修正コストの発生、手戻りによる納期遅延を招く可能性があります。

リスクマネジメントの不足

リスクは「まだ起こっていない、起こるとは限らない」ものであり、対応が後手に回りやすくなります。リスクの特定と評価が不十分な場合、予期せぬ問題に対応できずにプロジェクトが危機的状況に陥る可能性もあるでしょう。

また、対応策が未整備だとリスクが顕在化した際に迅速な対応ができず、被害が拡大するリスクがあります。

プロジェクト管理の課題に対する解決方法

プロジェクト管理の課題解決に重要なポイントが「可視化」です。以下で主な解決方法を解説します。

明確な目標と基準の設定

完了の基準は人によって異なります。目標や基準の設定に欠かせない考え方のひとつが「SMART基準」です。

  1. Specific (具体的)
  2. Measurable (測定可能)
  3. Achievable (達成可能)
  4. Relevant (関連性)
  5. Time-bound(期限付き)

SMART基準を用いることで、漠然とした目標や基準を誰もが判断しやすい具体的な形に変換し効果的に管理できます。

課題管理表などの各種ツールの活用

プロジェクト管理に役立つ以下の各種ツールの活用も課題解決に効果的です。

ツール 内容 効果
課題管理表 課題の内容、優先度、担当者、期限を記載
  • 課題の一元管理と優先順位付け
  • 進捗管理によるプロジェクト遅延の防止
  • チーム内の課題共有
WBS プロジェクトの作業を階層的に分解して図示
  • 見積り精度の向上
  • 予期せぬ遅延や問題に対応するバッファの設定
ガントチャート タスクの順序と期間を視覚的に表現
  • 見積り精度の向上
  • 予期せぬ遅延や問題に対応するバッファの設定
PERT図 プロジェクトの各タスクとその依存関係を図示
  • タスクの優先順位付け
  • リソースの平準化
クリティカルパス プロジェクト完了までの最長経路を示す
  • タスクの優先順位付け
  • リソースの平準化
プロジェクト
ダッシュボード
プロジェクト全体の状況を可視化
  • 情報の透明性確保
  • 関係者全員による状況把握

コミュニケーション施策の実施

プロジェクトの円滑な進行には、効果的なコミュニケーション施策が不可欠です。定期的なステータスミーティングの開催は、進捗状況の共有と課題の早期特定に役立ちます。

また、ステークホルダー分析に基づき重要度の高低によって情報提供の頻度を変えることも双方の認識の齟齬による手戻りを防ぐ一つの手段です。

まとめ

上記でご紹介したように、プロジェクト管理における課題は様々な要因が考えられます。まずはその原因が何なのかを把握し、それに合った解決策を講じることが大切です。