【ERP導入】得られる4つの効果と、 導入ステップ6つを解説

ERPは、クラウド製品の登場により、大企業だけでなく中小企業にとっても導入しやすい環境が整ってきました。一方で、「導入することでどのような効果を得られるのかが分からない」「もし導入するとなったら、どのような手順で進めればいいのだろう」といった疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ERPの具体的な導入効果や、必要性、運用開始までのステップなどについて解説いたします。

ERPの導入効果にはどのようなものがある?

ERPの導入効果にはどのようなものがある?

ここでは、ERPを導入することに、どのような効果があるのかについて、4つのポイントで解説します。

バラバラになっていたシステムのデータを統合管理できる

ERPは「統合基幹業務システム」と呼ばれることからも分かるように、企業の経営資源を統合的に管理できるのが特徴。会計・人事・営業・物流・販売など、部門ごとに分断されていたデータを連携させ、一つのシステムから一元管理できるのがメリットです。

今までは、システム間のデータ連携を実現しようとする際に、さまざまな課題が発生していました。たとえば、「専用のカスタマイズを実施しているため、他システムとの連携が困難になってしまっている」「SaaSでAPIが公開されているけれども、対応できる技術者がいない」「そもそもシステム連携を前提とした作りになっていない」などです。

対してERPでは、会計から販売、物流まで、一つのシステム内でデータ管理を行うための仕組みが整っています。データは、全社共通のマスターデータを用いるため、「漏れなく」「ダブりなく」管理・共有することが可能です。

今まで行っていた、二重入力やコード変換などの手間を減らし、全社的なデータ管理を実現できます。

リアルタイムでの情報共有が可能になる

ERPを活用することで、各部門で収集したデータをリアルタイムで集計することが可能です。結果、導入前よりも迅速な経営判断を下せるようになるでしょう。

従来は、各部門で収集したデータをそれぞれが集計し、レポートとしてまとめた後、経営陣に報告するフローが一般的でした。しかしそれでは、報告がいくまでに数週間~数か月程度の時間がかかることもあり、迅速に判断できない状況が発生していたのです。

ERPでは、会計・生産・販売などのデータをリアルタイムに収集・集計し、「経営ダッシュボード」にて一覧で表示します。「直近ではA製品の需要が高い」「3日前に在庫数が大きく変動した」などの情報をつかむことで、より素早く意思決定をすることが可能です。

経営ダッシュボードでは、売上情報や案件情報、生産・販売情報などを、自社の状況に合わせて柔軟に設定表示できます。データサイエンティストなどと協力することで、より効果的に分析・判断ができるでしょう。

内部統制の強化につながる

ERPでマスターデータを用いることで、データの整合性を維持し、不正や過失を防ぐことができます。

たとえば、営業マンが売上情報を入力する際、営業システムと会計システムへ2重入力する仕組みになっていると、間違ったり、不正に計上したりするなどのリスクが発生します。経理部門にとっても、かかわる人が多いために監視体制が行き届かなくなり、ブラックボックス化してしまうことにつながるでしょう。

ERPを活用することで、システム間のデータが連携されるので、2重入力の手間を減らすことができます。特定のシステムから入力したデータは、そのまま会計データへ反映されるため、精度が高まり、結果として監視体制の強化にもつながるのです。

近年は、J-SOX法の制定なども受け、内部統制に対する関心が高まってきています。ERPを導入することで、内部統制を強化するための仕組みを構築できるのです。

グローバル拠点の管理が容易になる

企業の海外進出に伴い新しく拠点を構える際でも、迅速にデータの管理体制を敷くことができます。その国特有の、法制度や言語の違いなどを乗り越え、スムーズに運用を開始できるのがメリットです。

たとえば、日本企業がグローバル拠点を設置する際は、その拠点の情報を収集するために、データを連携・共有するための仕組みが必要になります。ERPを導入しない場合であれば、言語・通貨・法制度、商習慣などの違いを考慮しつつシステムを整備しなければなりません。

一方で、Microsoft Dynamics 365 Business Centralをはじめとしたグローバル対応のERPは、海外のコンプライアンスや会計ルールにも対応しているのが特徴。日本国内で使用するマスターデータを、そのまま現地のデータへ反映させることが可能です。

近年は、グローバル市場での競争も激しくなってきているため、海外進出や撤退のスピードが上がってきています。ERPを導入することで、拠点の迅速な立ち上げが可能になるため、競争力の強化にもつながるでしょう。

ERPの導入は必要?

ERPの導入は必要?

それでは、自社にとって本当にERP導入は必要なのでしょうか。結論から言うと、中小・大企業を問わず、多くの場合で必要だといえます。

理由の一つとして、企業によるデータ活用の重要性が高まっていることが挙げられます。

近年は、国内市場での競争が激化し、それに合わせて顧客ニーズが多様化してきました。企業は、顧客から得られるデータを収集しながら、個々のニーズや傾向などを分析することが宿命の課題となっているのです。そこでERPを活用することで、データの収集・分析をリアルタイムかつ、高い精度で行えるようになります。

理由の二つ目として、システムの肥大化が挙げられます。

近年はクラウドの普及もあり、会計システム・生産システム・販売システムなど、業務効率化につながるシステムを安価に導入できるようになりました。しかし、ITシステムの複雑性が増し、人件費や管理負担の増大につながっているのです。ERPを活用することで、一つのシステムで複数の業務を管理できるため、コストや管理負担を大幅に軽減できます。

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ERPの導入ステップ・手順

ここでは、ERPの導入に至るまでのイメージを、6つのステップでご紹介いたします。

1.組織体制を整える

まず、ERPの導入に向けた組織体制を整備しましょう。事前に役割や責任を明確にしておくことで、社内で検討事項が発生した際でもスムーズに意思決定を行えます。

たとえば、ERP導入のプロジェクトマネージャーが存在していても、実際には経営者がほとんどの決定権をもっていたり、特定部門の意見が重要視されたりする状態だと、客観的・合理的な判断を下すことが困難になってしまいます。とくに、特定の部門がERP導入の舵取りを進めるとなると、部門間で利害が発生し、社内政治が起こりやすくなってしまうでしょう。

ERP導入のプロジェクトマネージャーは、異なる部門を統率するためのリーダーシップを持っているのが望ましいです。命令系統を維持しながらスムーズにコミュニケーションを行うことで、ERP導入を迅速に進められます。

2.導入目的を明確化する

次に、プロジェクトチーム内でERPの導入目的を明確にします。紙の文書、またはデータファイルを用い、明文化することが大切です。

目的を明確化するには、まず、自社で抱えている課題を洗い出すことから始めましょう。ERPを導入する際によくありがちな課題は、以下です。

  • 部門ごとのシステムが連携されておらず、統合管理ができない
  • システム間の2重入力などの非効率が発生している
  • リアルタイムな経営分析ができない
  • ITシステムの増加により、維持コストが増加している
  • 内部統制が取りづらい

課題を洗い出したら、それぞれに優先順位をつけ、自社で最も重視すべき項目を決めます。たとえば、「部門ごとのシステム間連携を容易にし、DX化を進めたい」という課題が最も優先すべき事項であるとしたら、それが導入目的になります。

さらに、導入目的を社内の関係者へ周知することで、組織全体での認識統一が図れるでしょう。

3.ベンダー・製品を選定する

導入目的を明確にした後は、さっそく、ベンダーや製品の選定を開始します。具体的には、以下の項目をチェックしましょう。

  • 自社の業務形態にマッチしているか
  • クラウド型か、オンプレミス型か
  • 導入期間はどれくらいか
  • 信頼のおけるパートナーか
  • サポート体制は充実しているか

とくに、自社の業務とマッチしているかどうかを確認する際は、業務分析を綿密に行っている必要があります。自社の業務フローや、統合したいデータなどを明確にし、検討するベンダーへ詳細な情報を提供しましょう。

クラウド型のERPとは、ベンダーが持つインフラやソフトウェア環境を用いて運用できるERPのこと。自社でイチからシステムを構築する必要がないので、低コストかつ短期で導入できるのがメリットです。

対してオンプレミス型ERPとは、自社内にサーバーやソフトウェアを構築する形態のこと。導入に時間や費用を要しますが、一方で、自社に合わせて柔軟にカスタマイズしやすいのが利点です。

その他、信頼性やサポート体制なども含め、総合的にベンダーの質を判断していくことで、導入プロジェクトの成功率を高められます。

4.導入計画を策定する

製品の選定段階と並行、または選定完了後に、具体的な導入計画を策定します。メインとして、以下のような内容を決定するとよいでしょう。

  • 導入スケジュール
  • 組織体制
  • 実施タスク
  • コミュニケーションやタスクの管理方法

導入スケジュールや実施タスクなどについては、ベンダーとよく相談しながら進めていくことが重要です。計画を進めるうえで、さまざまなイレギュラーやトラブルが発生する場合もあるため、余裕をもってスケジュール設定をすることが求められます。

5.必要に応じて、業務改革を行う

ERPの導入メリットを最大限に享受するために、自社の業務改革も並行して行います。経営者やプロジェクトリーダーを中心に、トップダウン式で進めていきましょう。

たとえば、拠点ごとに違う業務フローを採用している場合や、稟議・申請業務のプロセスが非効率な場合は、ERPの機能に合わせるため、抜本的な業務改善が必要です。

また、ERPとの同期を考慮した勘定科目を設定したり、マスターデータのコードを見直ししたり、在庫差異を最小限に抑えたりすることで、ERPによるデータ活用の精度・スピードが向上します。ただ単にERPを導入すれば改善するものではなく、自社側での努力も必要であることも認識することが大切です。

とくにクラウドERPの場合は、オンプレミス型と比べてカスタマイズの柔軟性に乏しいため、既存の業務フローとマッチしないこともあります。すべてが思い通りにいくとは限らない点も踏まえて、業務改革を進めましょう。

6.運用計画を作成する

最後に、導入後の運用計画を作成していきます。「誰がシステム管理を行うのか」「データの整合性はどのように維持していくのか」「ルールの周知や変更はどのように行っていくのか」といった具体的な内容を詰めていきましょう。

また、ERPの導入成果が出ているのかを定量的に観測することも求められます。そのため、運用チームを結成し、定着や効率化に向けたPDCAを素早く回せる体制を整えていくことも一つの手です。

ERPの導入期間はどれくらい?

ERPの導入期間は一般的に、中堅・中小企業で3~9か月、大企業で12~15か月程度と言われています。ただし、利用人数や導入形態、カスタマイズの有無などによって、大きく変動することもある点に注意が必要です。

たとえば、クラウドERPを選択し、利用ユーザー数が3名程度、適用する業務が一つだけの場合は、早くて3か月間で済ませられることもあります。オンプレミスERPの場合は、システム構築に時間がかかるため、中小企業であっても相当な時間を要することもあるでしょう。

ERPの導入完了までには、システムの実装だけでなく、要件定義やベンダー選定、テスト運用の実施、ユーザー教育など、さまざまなプロセスが発生します。ベンダー選定が想定以上に難航したり、構築段階でトラブルが発生したりするなどの可能性も踏まえ、導入期間は余裕をもって見積もることが望ましいです。

導入効果・ステップを理解し、ERP導入を成功させよう

この記事では、ERPを導入することで得られる効果や、必要性、導入完了までのステップを解説しました。データ活用が必須となっている現在、ERPを導入して、スムーズなデータ連携を実現する企業が次々と増えています。

実際にERPを導入するには、プロジェクトチームの発足から始まり、ベンダーの選定、導入計画の作成など、さまざまなプロセスを経過しなければなりません。なかでも重要なのは、ベンダー選定。適切な製品を選ばないと、導入や運用で失敗してしまう可能性が大いに高まります。

もし、ERPの製品選びで迷われているようでしたら、Microsoft Dynamics 365 Business Centralのような、信頼性・連携性の高いシステムを選択するのも一つの手です。ぜひこの記事を参考に、自社のERP導入を積極的に進めてみてください。

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