DX

デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が話題となっています。DXは、単に民間のバズワードに限らず、実は国も後押ししているのをご存じだったでしょうか。今回は、経済産業省が提唱するDXについてお届けするとともに、DXがなぜ必要なのか、そして今、私たちはDXのために何ができるのかをお届けしていこうと思います。

DXとは?

そもそも、DXとはデジタルトランスフォーメーションの略で、直訳すれば『デジタルによる変革』となります。ビジネスにまつわるありとあらゆる作業をデジタル化し、効率化して、市場競争に勝ち抜くために提唱されています。

市場競争といえば、民間の話かと思うかもしれませんが、実際には経済産業省をはじめとした官や役所でも導入が進みつつあります。なぜなら、これからは地方自治体も、住民を取り合うというある種の競争であり、国に至っても、どこの国に移住するかは選べるからです。

DXを通じて、より仕事を効率化しないと、人口減少社会で勝ち抜くことはできません。よって、民間と同様、官でもDXは必要不可欠となってくるのです。官の効率化といえば、まっさきに『脱はんこ』と『脱FAX』が浮かびます。行政はとにかく書類仕事が多く、上司の承認を得るためはんこ待ちで書類が先に進まず、仕事が滞留するなどは日常茶飯事でした。

システムの導入と構造改革で、ハンコの問題を回避しようと、多くの市区町村が決裁権のレベルを3段階程度に圧縮し、決裁ルートを短くすることで意思決定のスピードを上昇させるなどの取り組みを行ってきました。しかし、抜本的な解決には至っておらず、市区町村の意思決定のスピードは遅いままでした。これをお読みのあなたも、市役所などの意思決定のスピードが速くなった感じはしないのではないでしょうか。

そこで、テクノロジーによって根本から行政の仕事をスピードアップしようというのが、経済産業省肝いりのDXです。

DXを構成する5要素

DXの5つの要素

ではDXの具体的な詳細に入っていきます。DXを構成する要素として、IoT、5G、クラウド、AI(人工知能)、そしてソーシャルメディアがあります。DXは、基本的にこれら5要素で成り立つと定義されています。

IoT

IoTは、Internet of Things(モノのインターネット)と呼ばれ、その名の通り、モノにインターネットが付属することでより便利になるという仕組みです。IoTはモノに頭脳が搭載されますので、従来のモノとは比べられないぐらいの高度な計算や動作が可能となります。

5G

5Gは、携帯電話のインターネット回線の増設による新しい可能性です。スマートフォンは2010年代に登場してから、生活をガラッと変えました。さらなる変化の可能性をみせているのが5Gです。回線が増強されることで、スマホの可能性はますます広がります。

クラウド

クラウドもまた、革新的なサービスを次々生み出しました。従来、サーバーは自社内で構えるほかなく、ビルの停電や電源をうっかり抜くなど、不測の事態に弱かったのですが、データセンターにサーバーをすべて置くことで、サーバーの位置を気にすることなく、サービスを受けることができるのです。

AI(人工知能)

最後に、ソーシャルメディア(SNS)です。人と人とのオンラインでのつながりをより深く、簡易にするものです。さまざまなSNSがありますが、テキスト、画像、音声といった、発信でつながるSNSは、発信を通じてマネタイズの可能性が残るのでインフルエンサーが入ってきやすく、人気となる傾向があります。

ソーシャルメディア

最後に、ソーシャルメディア(SNS)です。人と人とのオンラインでのつながりをより深く、簡易にするものです。さまざまなSNSがありますが、テキスト、画像、音声といった、発信でつながるSNSは、発信を通じてマネタイズの可能性が残るのでインフルエンサーが入ってきやすく、人気となる傾向があります。

関連記事はこちら

DXの推進に向けて、取り組むための4つのステップ・企業の成功事例をご紹介
https://dxnavi.com/dx_4step/

経済産業省が提唱するDXのあらまし

さて、DXは経済産業省も推奨しています。

IoT、5G、クラウド、AI、クラウドの5つで、官庁である経済産業省がどのように効率化できるのでしょうか。

たとえば、経済産業省は新型コロナウイルス感染症が広がった際、『持続化給付金』という、100-200万円ほどの返済不要の給付金を発行しました。緊急で作られた制度のため、さまざまな質疑応答が生まれることが想定されましたが、LINEやTwitterなどのSNSが大活躍し、特にLINEは自動でAIが答えるという仕組みでした。

従来ならば、対象者に書類を郵送し、紙に書いて提出してもらうのが100%だったのですから、大きな進歩です。持続化給付金のシステムは、まさにDXだといえます。しかし、経済産業省は官庁ですから、クラウドの利用に関しては慎重だと報道されています。なぜなら、サーバーがすべてインターネット上に存在するのでリスクがあるからです。ただし、クラウドも海外ベンダーのAWSやAzureではなく、国産のクラウドなら、多少の利用はあるようです。

行政のDXって脱はんこや脱FAXだけ?

では、官庁や行政のDXとは、具体的はどんなものがあるのでしょうか?脱はんこや脱FAXだけなのでしょうか?

ひとつの答えが、意思決定のスピード化です。

従来の省庁内の決裁は、課員が起案し、係長に回送して、課長が決裁し、部長決裁も・・・という非常にルートが長いものでした。この決裁ルートの長さは、係長の出張や課長の一時離席などでより長くなります。つまり、決裁ルートが長いということは、意思決定が遅いと言うことでもあったのです。検討に検討を重ねて、ようやく承認が下りるという形でした。

しかし、DXによって決裁ルートが短くなれば、組織としての意思決定スピードも上昇します。この意思決定のスピード向上が、DXがもたらす大きな恩恵のひとつです。脱はんこ、脱FAXだけでは、改革としては不十分です。脱はんこや脱FAXは昭和の改革であって、令和の時代にはさらなる合理化が求められることでしょう。

経済産業省の7つの議題

経済産業省は、DXに関して7つの議題を出しています。

DX 経済産業省 7つの議題
DX 経済産業省 7つの議題
DX 経済産業省 7つの議題

つまり、経済産業省の側でも、(当然ながら)脱はんこと脱FAXだけでは時代の流れについていけないことは十分理解しているのです。加えて、新型コロナウイルス感染症というとてつもない社会的インパクトがあり、人と人が密になれないという制限が加わりましたので、DX化はもっとも優先度の高い改革と言って良いでしょう。

DXそのものは、経済産業省は2018-2019年頃から出していた単語であり、取り組みには意欲的になっていました。ただし、前例を厳密に守り、書類仕事をきちんとすることが国民への奉仕となる国家公務員の職務において、なかなかIT化が進んでこなかったのは事実です。それでも、DX化は少しずつ、少しずつ、課題として共有されつつあります。

経済産業省のDX化に反対する人はほぼいないと考えられます。人手不足や資金不足、そして感染症の蔓延によって、DX化は避けられないのです。それならば、積極的に導入し、より便利になっていき国の生産性そのものを高めようとする取り組みが、今必要とされています。