デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性については、現在多くの企業が注目しており、規模を問わず実施を進めています。
DXという言葉を耳にする機会が増えた一方で、導入に当たっては多くの手続きや初期費用が発生するケースもあり、確実にDXが成功する保証があるわけではないのも現状です。
今回は、そんなDXのメリットを最大限活かす上で欠かせない、成果につながるDXの実践プロセスについてご紹介します。
DXとは?
そもそもDXというのは、ビジネスだけでなく幅広い生活シーンを指して使われる取り組みです。最新のデジタル技術を使って、生活におけるあらゆる面での質の向上を目指す考え方を指しています。
欧米を中心に広がった考え方ですが、デジタルの力によってビジネス環境の急速な変化が進んでいることを受け、日本においてもDXの実現が急務とされるようになりました。
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なぜDXが重要視されているのか
DXに取り組む動機については企業によって様々ですが、主な要因としては以下の2点が挙げられます。
人手不足が深刻化しているため
一つ目は、深刻な人手不足です。現在日本を含む先進国では少子高齢化が加速しており、若手人材の登用が難しくなっている一方、熟練技術を持つ高齢人材の引退もあり、現役世代の負担増加が各企業で進んでいます。
経済産業省の発表によると、2011年以降日本では64歳以下の生産年齢人口が減少傾向傾向にあり、75歳以上の高齢者人口の割合が増加し続けているとしています。そのため、今後はますます人材確保が難しくなっていくと考えられ、業務の効率化を進めていく必要が迫っていると言えます。
参考:経済産業省「人手不足の現状」p.45
03Hakusyo_part1_chap4_web.pdf (meti.go.jp)
大幅なコスト削減が見込めるため
二つ目の理由は、コストの削減です。経済産業省が発表したレポートによると、2025年にはDXの遅れが原因で、日本全体で最大年間25兆円もの損失が生まれるとされています。これは、基幹システムの老朽化が進み、維持管理のコストが増大したり、最新の環境にキャッチアップするための過剰なカスタマイズが必要になるためです。
参考:経済産業省「D X レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」p.2
20180907_01.pdf (meti.go.jp)
DXの実現は、このような各企業のシステム運用コストを削減し、業務効率化に大幅な貢献をもたらすため推進されています。
DXが可能な業務の例
具体的に、DXはどのような業務に適用することができるのでしょうか。結論から言うと、DXはあらゆる業務において実現が可能です。ここでは、主なDX可能な業務についてご紹介します。
経理業務
一つ目は経理業務です。請求書や伝票の作成や領収書の保管、債権管理に予実管理と、実に多くの業務が発生する一方で、これらの多くは高度な意思決定を必要としない作業労働でもあります。
そのため、経理業務は業務そのものを自動化しやすく、ツール導入の余地が大きい分野であると言えます。DXの実現しやすい業務の特徴として、このようにルーティンワークが大半を占める分野が挙げられます。
顧客管理業務
二つ目は、顧客管理業務です。顧客管理もまた、経理同様顧客データの収集や活用など、情報管理が主な業務となりますが、一方で蓄積した顧客データの積極的な活用なども必要になります。
顧客管理のDXを実現すれば、蓄積しているデータを企業の資産として有効活用を進められます。統一されたデータベースに全ての顧客情報を集約し、営業活動や顧客との関係維持のための有効な施策の実施に繋げられます。
営業業務
三つ目は、営業業務です。営業は対面接客などの業務が増えるため、DXの余地が少ないと思われがちですが、注目を集めているのが営業担当者を支援するツールです。
顧客情報を担当者がすぐに引き出し、効果的なアプローチの実現につなげたり、日報作成を半自動化したりなど、様々な方法で彼らの活動を支援できるツールが登場しています。
また、最近ではリモートワークの普及により、リモート環境から営業を実施できるためのツール導入も進んでいます。必要に応じて、多様な手段からDXを進められるのが強みです。
DX実現のステップ
続いて、DX実現の具体的なステップについて、確認していきましょう。DXの実現プロセスは、大まかには以下の4ステップが望ましいとされています。
業務のデジタル化
一つ目のステップが、業務のデジタル化です。これまで紙で実施していた承認作業や、データの保管などを、全てオンラインで実施するなどして、業務全体のデジタル化を進めていきます。
業務上の手続きがデジタル化することで、後ほど必要になるデータ活用を円滑に進められると言うメリットがあります。
業務の効率化
二つ目のステップが、業務の効率化です。デジタル化した業務環境を活用し、効率化を進めましょう。
適切なデジタル化を実施できていれば、業務の効率化は大幅に進みます。データベースは一元化され、顧客情報や請求書探しに追われる心配もなくなり、入力作業も自動で進められるため、現場の負担を大幅に軽減されます。
情報共有の徹底
三つ目のステップは、情報共有の徹底です。データベースがクラウド上に移行し、メンバー間のコミュニケーションをオンラインで行える環境が整えば、あらゆる業務連絡をオンラインで迅速に実施できます。申請・承認作業の手順も圧倒的に少なくなるため、業務スピードを高速化できます。
在庫の有無や注文対応などについても素早くレスポンスができるようになり、更なる売り上げ確保にもつながるでしょう。
積極的なデータ活用
最後のステップが、蓄積したデータの積極的な活用です。顧客情報や売り上げ情報などは、ただ貯めて置くだけでなく、ツールの整備や人材を登用することで、更なる利益をもたらせる資産として活用できます。
顧客や見込み客の情報を彼らのアクションからスコア化し、購買意欲の高いユーザーから順番にアプローチすることで、営業担当者の成約率を高められます。あるいは、売り上げ情報から今後の動向を予測し、最適なプロモーションの選択や、過不足ない発注業務で利益を最大化できます。
ここまでデジタル技術を活用できるようになれば、会社のDXは大成功を納めたと言っても過言ではありません。
具体的なDXの進め方
このようなDXの成功を実現するためには、適切な実施プロセスを押さえておく必要があります。具体的なDXの進め方について、ご紹介します。
社内の課題を洗い出す
まずは、社内のどのような業務に課題があるのか、洗い出しの作業が必要です。
DXは単なるIT化とは異なり、課題意識に基づくソリューションの実施が求められます。課題に合った適切なツール選定や取り組みが行わなければ、導入コストを上回る成果は期待できません。
既存の業務で困っていることはないか、DXでより良い結果が得られそうなところはないか、社内で話し合いましょう。
目標を設定する
課題の洗い出しが終わった後は、目標の設定です。最終的には社内の全面的なDXが実現できれば良いのですが、いきなり全ての課題を解消することは難しく、時間と予算も必要になります。
そのため、まずは最も身近に取り組めそうな課題に注目したり、早急な解決が必要な問題に注目し、それらの解決のみに目標を絞りましょう。DXにおいて重要なのは、着実に実現に向けた取り組みを実施することです。
課題解決につながるツールを選定する
次に実施するのが、ツールの選定です。課題と目標が決まっていれば、どのようなDX施策を実施すれば良いのかがかなり明確になっているため、スムーズにソリューションを選ぶことができます。
自社の課題や文化と相性の良さそうな製品やアプローチを選びましょう。ソリューションを提供している各社に相談しながら製品選びを進めることもできるため、わからないことがあれば気軽に相談してみることをお勧めします。
施策の実施と効果測定を進める
導入ツールが決まった後は、DXに向けた取り組みをスタートさせます。初歩的なDXの推進であれば、ツール導入もクラウド形式で簡単に進められるものが多く、複雑な工程が発生することはそう多くありません。
コミュニケーションを円滑にするためのチャットツール導入程度であれば、その日からDXを進めることができます。セットアップも簡単にできる上、ベンダーのサポートも充実しているので、手早くDXを進められます。
導入後は、そのプロジェクトが目標に向けて前進できているか、期待通りの導入効果が得られているかなど、効果測定を行いましょう。一定期間の検証を経て、更なる改善に取り組みます。
DX実現に活躍する主なツール
続いては、DX推進に役立つポピュラーなツールについて、ご紹介します。
チャット・ビデオ会議ツール
コミュニケーションのDX推進に最も活躍しているのが、チャットツールやビデオ会議ツールの導入です。これらは企業はもちろん、教育現場やプライベートでも気軽に利用されるケースも増えており、多くの人にとって馴染み深いサービスとなりつつあります。
メールや電話よりも立ち上がりや更新が早く、素早く連絡ができるということで、実用性に優れるツールです。
CRM/SFA
CRMとSFAは、顧客管理を軸とした業務効率化を推進するサービスです。
CRMは顧客関係管理を司るツールで、顧客情報を一元化し、更なる関係強化と購買促進に役立ちます。一方のSFAは営業支援システムの通称で、営業担当者の支援ツールを取り揃えているサービスです。
どちらも顧客情報を取り扱うツールですが、CRMは顧客との関係強化、SFAは営業力強化と、運用目的が異なります。自社の課題に合わせて、最適なツールを導入しましょう。
RPA
RPAは、デスクワークの自動化を実現するためのロボットツールです。デスクワークは頭脳労働とされる一方、パターン化されたルーティンワークも少なくなく、自動化の余地が大きく残されています。
これらの煩雑な業務は、RPAによって自動化し、大幅な業務効率化に役立ちます。最近ではITの導入が遅れているとされる行政や金融機関においてもRPAの導入は積極的に行われており、DX実現の際にはぜひ活用したいサービスと言えます。
DXを成功に導くための3つのポイント
最後に、DXを成功に導く上で、押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
経営層のコミットメントを徹底する
一つ目は、組織の経営に携わる人物がDXへ積極的に関わる、という点です。DXは従来で言うIT化とは異なり、会社組織の文化から改革を進めていく必要があるためです。
DXが最終的に目指しているのはデータ活用ですが、企業に蓄積されるデータを最大限活用するためには、会社に携わる全ての人がデータドリブンに理解をもち、相応のスキルが求められます。そのため、主観的な意思決定や経営層の独断で物事を判断することは、DXの円滑な実現の妨げとなってしまうのです。
DXの実現を志す場合、会社ぐるみで積極的なデータ活用を目指せる体質を育てる必要があるでしょう。
スモールスタートを心がける
二つ目のポイントは、スモールスタートです。一つ目のポイントとやや矛盾するかもしれませんが、DXで失敗してしまわないためにも、施策は一つずつ実行していくことが望ましいと言えます。
これまでITの活用がなかった組織ほど、ITのノウハウが蓄積されておらず、最新技術を有効活用できない懸念もあります。そういった会社で全面的なDXをいきなり進めてしまうと、運用上のトラブルが頻発し、通常営業もままならなくなる懸念があるためです。
そのため、DX推進の際にはまず自社のIT活用の状況に目を配り、リスクの小さいスケールでDXを進めていきましょう。
DX人材を確保する
三つ目のポイントが、DX人材の確保です。DXをどのように進めていくのか、そもそもDXでどんなことができるのか、自社に必要なDXはなんなのかなど、DX関連の課題解決を率先して取り組んでくれる人物が必要です。
近年はDXの急速な拡大により、DX人材の確保が難しくなりつつあります。自社で賄うことが難しい場合、ツール導入に伴いDXのトータルサポートを手がけてくれる会社もあるため、積極的に活用すると良いでしょう。
おわりに
今回は、DXの実現をどのように進めていけば良いのかについて、プロセスをご紹介しました。DXの実現には企業の課題に合わせたアプローチが求められるため、実際には専門家と協業しながら進めていくことが賢明です。
優秀なDX人材の確保、あるいは頼りになるパートナーを見つけ、持続可能性に優れる組織づくりを推進していきましょう。