データの提供や情報処理を行うサーバーが保管されている物理的な施設、それがデータセンターです。そこには電源・冷却装置・ネットワーク機器など、サーバーの安定稼働を実現するための設備が揃っています。
データセンターの活用により、自然災害やサイバー攻撃等の不測の事態が生じた場合でも、最短で事業復旧が望める体制を確立でき、取引先や顧客への安心感を与えることができます。
しかし、初めて導入に踏み切る場合、どのような利用方法があるのか、またBCP対策を行う目的はなにかなど、わからないという方も多いでしょう。
この記事では、データセンターを活用したBCP強化の必要性、及びそのメリットなどについてまとめました。
データセンターとは?
まずはじめに、データセンターとは、サーバー・大容量電源・ネットワーク機器など、自社で調達したハードウェア機器全般を完備した物理的な施設のことです。
安定したインターネット回線との接続を確保できるよう、高速回線や冷却装置なども完備されています。
自社でインフラ整備やシステム運用を行うオンプレミスを選択した場合、自社内でのサーバー運用・管理・メンテナンスが必要となりますが、確保できる物理的スペースには限りがあるだけでなく、運用負担やランニングコストも増大します。
しかし、データセンターを活用した場合、物理的スペースの確保や運用負担を大幅に軽減できるだけでなく、システムの稼働もより安定させることができます。
データセンターを活用するメリット
データセンターの活用によって得られるメリットは以下の5点です。
● 自然災害への対策を強化できる
● セキュリティ対策の強化にも効果的
● コスト削減に繋がる
● 早期の事業復旧を実現
● バックアップサイトとしての活用も可能
それでは、ひとつひとつ内容をみていきましょう。
自然災害への対策を強化できる
データセンターは地震や火災などによってサーバーが破壊されないよう、様々な災害対策が施されています。
例えば、耐震性に関してはサーバールームへ免震床を採用し、ラックの転倒に伴うサーバーの破壊を防ぐ対策が一般的です。
また、建物の構造自体が波形や上階の揺れを軽減できるように設計されているデータセンターも存在するため、地震の多い地方にデータセンターを設置する必要がある場合は、一つの判断材料として検討できるでしょう。
さらに、耐火性に関しては不燃素材を採用することによって火の拡大を防いでいるほか、消化性に優れた二酸化炭素やフロンガスを活用して鎮火へ導くため、放水に伴うサーバー内のデータ破損を心配する必要もありません。
セキュリティ対策の強化にも効果的
犯罪者に重要な情報を奪われないよう、様々な面で強力なセキュリティ対策が講じられていることは大きなメリットです。
まず物理的な面としては、生体認証の導入とフラッパーゲートの設置を挙げることができます。
生体認証として、顔や指紋など、個人の身体的特徴を認証機能に活用するため、データを改ざんされるリスクが低く、紛失や盗難によって個人情報が漏れる心配もありません。
一方、フラッパーゲートは建物の出入り口に設置するゲートのことであり、入館者の情報を一人ずつ確実にチェックするため、共連れによる不法侵入を防ぎます。
また、セキュリティ情報を一元管理できるため、運用面の負担が増えることもありません。
ファイアウォール・IDS/IPS・WAFなど、多彩な機能を搭載しているデータセンターも存在します。
導入すると、SQLインジェクションやDDos攻撃など、脆弱性を突いたサイバー攻撃を防ぎ、機密情報をより強固に保護することができます。
コストの削減に繋がる
データセンターを活用すれば、社内に専用のサーバールームを設置する必要が無くなるため、自社でサーバーを管理するよりもランニングコストを削減することができます。
例えば、自社にサーバーを設置している場合は、データ量やシステムの数が増えるたびにサーバーを増やす必要が生じますが、データセンターを活用する場合は、設立時に大容量サーバーを選択するだけで、増設の回数を最小限に抑えることが可能です。
さらに、サーバー内の温度調節を行う冷却装置の稼働回数も抑えられるため、結果的に電気代の削減にも繋がります。
早期の事業復旧を実現
データセンターを活用することによって、アクシデント発生時にも素早く対応し、被害を最小限に抑えることができるのも重要なメリットです。
24時間365日体制で、稼働状況の確認や障害に対処するためのサービスを提供しているベンダーも多くあるため、様々なノウハウや豊富な実務経験を持つ専門スタッフに作業を一任し、早期の事業復旧を実現します。
また、障害に対処するため、休日出勤や深夜残業を要請する必要も無くなり、従業員のワークライフバランス改善に繋げることも可能です。
バックアップサイトとしての活用も可能
現在、既にデータセンターを導入している場合でも、データ消失のリスクをさらに分散化させるためのバックアップサイトとして活用することも可能です。例えば、自社拠点とデータセンターが同時にダメージを負う、という可能性も考えられるからです。
自社拠点とメインデータセンターからは離れた遠隔地にデータセンターを追加で設立し、BCP対策の強化を図ることができます。
BCP(事業継続計画)とは?
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、自然災害やサイバー攻撃等を受けた場合でもその被害を最小限に抑え、事業の継続を実現するための計画のことで、それにはシステムの運用だけでなく、自然災害に遭った場合の避難方法や従業員の安全を確認する連絡体制等が含まれます。
日本は、地震による被害が非常に多い地域です。
特に東日本大震災以降はデータセンターを積極的に活用することによって、機密情報の保護やシステムの継続性確保を図りつつ、同時にコスト削減に取り組む企業が増えています。
データセンターを活用してBCPを強化する必要性とは?
データセンターの活用によりBCPを強化する主な目的は、以下の2点です。
● 事業復旧を最短で実現
● 企業価値の向上
突如発生する自然災害やシステムダウンによるダメージを受けても、最短で事業復旧の体制を確立でき、企業価値の向上や市場における優位性獲得につながります。
事業復旧を最短で実現
自然災害・サイバー攻撃・システムダウンなど、緊急事態に対しても柔軟に対応できる体制が確立できるならば、取引先に「継続的な取引が望める安定した企業」としてのイメージを強く印象付けることができ、更なる取引拡大やリピート率改善への拡大も可能です。
また、アクシデントに強い企業として社会的信用の向上にもつながります。このように、データセンターの活用を通して、より効果的なBCPを策定することができるので、事業継続性は高まり、顧客離れを防ぐことができるでしょう。
企業価値の向上
より実行力のあるBCP策定によって取引先・顧客・株主など、ステークホルダーへ与える安心感は大きなものとなり、企業価値の向上や信頼できる企業としてのブランディングにつなげられます。
「自然災害やサイバー攻撃への対策が常に整っている企業」と、高い評価をもらえるからです。
さらに、こうした企業努力は経営の将来的なビジョンを示すことにもつながり、従業員のエンゲージメント向上や離職防止も期待できます。
データセンターの活用による災害対策方法
データセンターの主な活用方法は以下の2種類です。
● ハウジング
● ホスティング
ハウジングは、既に自社で運用中のサーバーを継続して利用する場合に使う方法で、サーバー保有権が自社にあるため、引き続き自社で運用を行う形となります。
それに対して、ホスティングはベンダー側が提供している設備をレンタルして使う方法です。
それぞれ詳しく解説していきます。
ハウジング
ハウジングは物理的にデータセンター内のスペースやラックを借り、そこに自社サーバーを預けるという方法です。
データセンターを活用するスタンダードな方法であり、自社内で運用していたサーバーを移管したり、データセンター自体をレンタルすることによって、ハウジングを行います。
遠隔操作でメンテナンスや設定を行う点が、ハウジングの特徴的なところで、サーバーの所有権は自社にあるため、基本的には自社で運用する形となります。
ハウジングは緊急事態が発生した場合でも事業復旧を早期に実現できるので、BCP対策強化を図ることができます。
しかしその半面、インフラ環境に不備や不足等が見つかった場合には、自社で揃えないといけません。初期費用の発生やリードタイムの長期化を招く可能性があります。
ホスティング
ホスティングはデータセンターのサービスを提供しているベンダーから、サーバーやインターネット回線など、設備一式をレンタルする方法です。
こちらの場合、サーバーの所有権はベンダー側にあるため、初期費用が掛かりません。
ホスティングは、ハードウェアのメンテナンスや管理も一任できるため、従業員の運用負担軽減になります。
一方、ベンダー側でシステムトラブルが発生した場合は、復旧するまでデータセンターの利用ができなくなります。
また、ベンダー側が提供しているOSが自社のモバイル端末に対応していない可能性もあるため、事前の十分な確認が必要です。
ネットワーク環境の再整備とデータセンターの選び方を見直し、災害対策の強化へ
自然災害やサイバー攻撃、システムダウン等への対策強化に向けては、ネットワーク環境の再整備とデータセンターの選び方を見直す必要があります。
下記4点がポイントです。
● ネットワーク環境の冗長化
● 災害の少ない地域の選定
● セキュリティレベル
● 空きスペースの有無
一つひとつ内容をみていきましょう。
ネットワーク環境の冗長化
ネットワーク機器の故障やトラフィック量の急激な増加に備え、予備設備を配置しながら運用することをネットワーク環境の冗長化と言います。
ハードウェアでの故障や通信障害が発生したとしても、システムを継続的に利用できる点が、冗長化を行う最大のメリットです。
設備故障が同時に複数発生しない限り、安定して稼働が望める状況を整備できので、システム障害に伴う通常業務への悪影響は最小限に抑えられます。
特に基幹システムは受発注・生産管理・在庫管理など、業務の根幹を担う重要な機能が集約されており、もしも機能不全に陥った場合は多くの業務に支障をきたします。
ネットワークの冗長化を整備し、アクシデントに備えておくことはとても重要です。
災害の少ない地域の選定
データセンターを自然災害の多い地域に設置した場合、自社拠点と同時被災する可能性があり、BCP強化にはつながらないため注意が必要です。データセンターのサーバーは遠隔操作ができる一方、定期的に対面で稼働状況を確認する必要もあるため、自社拠点から通える内陸県にデータセンターを設置すると、データ消失のリスクを分散化できます。
また、データセンターをバックアップ目的で利用する場合は、メインのデータセンターから離れた遠隔地での導入を検討してください。
セキュリティレベル
データセンターのサーバーには機密情報が多く保存されているため、サイバー攻撃のターゲットとして狙われやすくなります。
導入や利用をする前に、セキュリティ対策のレベルがその程度なのかを十分に確認してください。
ファイアウォール・IDS/IPS・WAFなど、多くのセキュリティ機能を搭載しているデータセンターを選ぶならば、情報漏洩のリスクを最小限に抑えられます。また、不法侵入を阻止するためのポイントとして、以下の対策が講じられているかを確認してください。
物理的セキュリティのチェックポイント
● フラッパーゲートの有無
● 有人監視の有無
● 施設出入り口での認証システムの有無
● サーバルームの無窓化
● 監視カメラの設置
空きスペースの有無
データセンターに空いているスペースやラックがあるかどうかも重要なチェックポイントの一つです。
業務で取り扱うシステムやデータというのは増加傾向にあるため、システムを新しく導入した場合、サーバーを増設する必要があります。
しかし、データセンターに空きスペースが無いと、データを保管することができないため、別のデータセンターを新たに用意する必要があります。
新たなデータセンターを用意する場合はサーバー増築費用と比べ、コストが高くなります。
業務で取り扱うデータやシステムが増えた場合でも、一つのデータセンターに機密情報を集約することができるように、空きスペースの有無を確認してください。
まとめ
今回の記事では、以下4点について解説してきました。
● データセンターとBCPの概要
● データセンターを活用するメリット
● BCP対策の必要性
● 災害対策への強化方法
データセンターをの活用により、社内に専用のサーバールームを設置する必要が無くなり、ランニングコストを大幅に削減することができます。また、大容量サーバーを選択することで、データ容量増大に伴うサーバー増設の機会が最小限に抑えられます。
また、自然災害・不法侵入・サイバー攻撃・システムダウン等への強力なセキュリティ対策も講じられているので、過度に情報漏洩を心配する必要はありません。
仮に自然災害やサイバー攻撃の被害を受けても早期には事業復旧が望める環境を整備でき、取引先に安心感を与えられます。
データセンターの導入を初めて検討している場合、わからない点も多いことでしょう。
今回の記事で紹介したデータセンターの選び方やネットワーク環境の再整備の方法を参考に、データセンターの選定やBCP対策の強化を進めてください。
その他の記事はこちら
・【事例で解説】データセンターを地方に分散させることのメリット!
https://dxnavi.com/regionally-distributed-data-centers/