社員一人ひとりの生産性を高めるためにも業務フローのシステム化は非常に重要だと言えるでしょう。なぜなら、業務の流れがわかると行動の迷いや無駄な作業を削減できるからです。
しかし、業務フローのシステム化と言われても、イメージできないという方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では業務フローをシステム化する目的とメリット、作成ポイントまで詳しく解説していきます。
業務フローをこれから作成しようと考えている方は、ご活用ください。
業務フローのシステム化とは?
特定の仕事のプロセスを文字・記号・矢印を使い、一連の流れとしてまとめたものです。一つの業務を完了させるまでに取るべき行動を示し、効率的な業務の推進につなげます。
ただし、現場の実情とかけ離れた内容の記載やフローの複雑化が起きると、かえって作業効率が低下する場合もあります。現場の実情を理解した作業担当者が業務関係者と共通認識を図り、作成や更新を進めていくことが重要です。
業務フローをシステム化する目的
ここからは、業務フローをシステム化する目的を解説していきます。主な目的は以下の3点です。
上記のように、業務全体の可視化によって社員同士のコミュニケーションを促し、業務効率改善を進めることが可能です。
それぞれを詳しく解説していきましょう。
業務の可視化
業務の可視化によって、実務未経験の方でも業務の流れを直感的に理解できます。客観的な視点に基づき、業務フローが作成されているからです。
実際に業務を行う担当者や関連部署の社員からヒアリングを行い作成しているため、業務に必要な情報しか書かれていません。
無駄な情報を省いたシンプルな業務フローの導入で、業務内容の理解向上が期待できます。また、図形や矢印など視覚情報を多く盛り込むと、業務内容をよりイメージしやすくなります。
社員同士のスムーズな情報共有を実現
社員同士のコミュニケーションが活性化します。業務プロセスへの理解度が深まるため、イメージの共有を図れるからです。
例えば、担当者の退職によって別の社員へ業務の引継ぎを行う場合、業務フローに基づいて一つひとつ順番通りに仕事の内容を教えれば、早期に業務内容を理解できます。
引継ぎ後も同じ部署にいる社員から業務の進め方に関してサポートを受けられるため、担当変更に伴うトラブルのリスクを最小限に抑えることも可能です。
業務効率改善に向けての参考資料
参考資料として、改善が必要な部分を共有しやすくなります。業務全体を可視化できるため、無駄の多い部分を発見しやすくなるからです。
例えば、営業マンの経費精算書を紙で回覧していた場合、上司が不在だと戻ってくるまで作業が進みません。そこでワークフローを導入すれば外出先でも承認できるほか、進捗具合がPC上で確認できる体制が整います。
業務フローをシステム化するメリット
続いて、業務フローをシステム化するメリットを解説していきます。
主なメリットは、以下の3点です。
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
作業の無駄を削減
業務を進める上で不要な作業を削ぎ落し、作業効率を高められます。業務フローによって、「必要な作業・不要な作業」を選別しやすくなっているからです。必要な作業だけに集中できる環境が整うと、ミスの削減と作業効率改善を両立できるため、残業時間も減り、ワークライフバランスを保ちやすくなります。
新入社員の即戦力化
業務フローを活用しながら一つひとつ業務の大まかな流れを解説できるため、新入社員でも業務の進め方を理解しやすく、即戦力につなげられます。
わからない部分があったとしても「どの工程で迷いが生じたか」を先輩社員へ明確に伝えることができ、疑問点の早期解決が可能です。
新入社員が早期に仕事を覚えられると、教育担当の業務負担も軽減できるでしょう。
社員同士互いの業務内容の理解向上
他部署の業務プロセスを把握すると、顧客対応にも活用できます。
例えば、メーカー機能を自社で持っていたとしましょう。営業マンが顧客から納期確認の連絡を受けた場合にも、生産の進捗具合を具体的に説明できます。生産管理からの報告で、「どの工程で行き詰まっているか」を理解できるからです。製品が完成するまでの流れを理解していると顧客に論理的な説明を行えるため、安心感を与えられます。
また、工場側は現場作業員への過度な負担増加を回避でき、業務へのモチベーション低下を防ぐことも可能です。
業務フローを書く前に実行すべき内容
業務フローを書く前に実行すべき内容を解説していきます。
主に、以下の3点を行う必要があります。
上記で最も重要なのは目的の明確化です。目的の内容によって、業務フローに記載する内容やリストアップすべき関係者が大きく変わるからです。
それぞれを詳しく解説していきましょう。
業務フローを作成する目的の明確化
社内で目的を明確化し、共有してから業務フローのシステム化を行っていきましょう。作成する目的によって業務フローの書き方が変わるからです。
業務フローを作成する目的の具体例を以下にまとめました。
- 業務プロセスの可視化
- 無駄な作業の削減
- 業務に携わる関係者の相互理解向上
1番を目的とする場合は、新入社員や業務未経験の方にもわかりやすいシンプルな業務フローが求められます。
細かい部分は実践を重ねながら理解を深める形で問題ありません。一方、2番や3番を目的とした場合は細かい部分の記載を意識しましょう。改善点の洗い出しや理解向上を図るためには、業務内容全般の把握が重要だからです。
関連部署や関係者のリストアップ
業務に関連する部署と関係者を洗い出し、業務フローに書き込むことも重要です。業務フローの理解向上に関わってくるため、少しでも関係すると思われた部署はリストに入れてください。
業務内容の明確化
業務フローに記載するタスクを決めた後、業務の開始〜終了に関わる内容を書き込んでいきます。一つひとつの流れがイメージできるよう、関係者と丁寧なコミュニケーションを取りながら記載内容を決定してください。
また、文章や記号で伝わりにくい業務内容は記載せず、口頭で説明する方が頭に残りやすいです。
わかりやすい業務フローを作成するためのポイント
はじめて業務を経験する方にもわかりやすい業務フローを作成するためには、以下の4点が重要です。
- 開始と終了が明確
- 図形を工程ごとに使い分け
- 矢印の交差を極力回避
- 業務関係者が正確に工程の流れを理解
それぞれの内容を詳しく解説していきます。
開始と終了が明確
業務の流れを理解する上で、開始と終了を明確にしましょう。
なぜなら、開始と終了がわかりづらいと流れを掴めず、業務への理解が難しくなるからです。
「どのタイミングで業務が始まり、どの作業を行えば終了となるのか」を意識すると明確になっていきます。
例えば、注文書を発行する場合は顧客から発注依頼があった場合が業務の開始で、仕入れ先へ注文書を提出した時点が業務の終了時点です。
フローの中に開始・終了を複数置かないようにすると、複雑化を避けられます。
図形を工程ごとに使い分け
担当者や業務ごとに図形を使い分けると、「どの部署で・誰が・どの業務」を担当しているかが明確にわかります。視覚情報を多く織り交ぜると、イメージしやすくなるからです。
図形の使い分けによって同じ担当者が複数の業務に携わっている場合も、識別しやすくなります。また、業務内容ごとに線形を何種類か使い分けると、どの業務のフローを示しているかを理解することが可能です。
矢印の交差を極力回避
使う矢印を特定の方向に絞った方が、一連の流れとして理解しやすいです。
順番に業務内容を目で追えるため、混乱が少ないからです。矢印が交差しているとどの工程に飛ぶのか確認作業が多くなり、かえって非効率になります。
業務フローとして品質が低下するため、矢印の交差は避けてください。業務内容が多い場合はタスクにおける優先順位の振り分けを行い、口頭でカバーできる内容は記載から外してください。
業務関係者が正確に工程の流れを理解
業務に携わるどの関係者が見ても人目で内容がわかる業務フローの作成が重要です。
理解しづらい内容があると、業務の可視化や社員同士の理解向上に繋がらないからです。例えば、部署を超えた協力体制が必要な場合に互いの仕事への理解に乏しいと、現場の士気は上がりません。特定の担当者に頼る形となり、ミスの増大や品質の低下を招く可能性があります。
トラブルが起きないようわかりにくい図形や記号は外すなど、共通認識を図りながら業務フローの作成を進めることが重要です。
業務フローを理解する上で覚えておくべき記号を紹介
ここでは、業務フローを理解する上で覚えておくべき記号を紹介していきます。
頻出割合が高い記号を6種類紹介します。
処理記号
見積書作成や入金確認など、特定の行動・作業・処理を表す記号です。業務フローの中で最も使用頻度が高くなっています。
開始/終了
見積書作成や入金確認など、特定の行動・作業・処理を表す記号です。業務フローの中で最も使用頻度が高くなっています。
書類
メール送信・プレゼン資料の作成・見積書の受領など、書類の入出力を表す記号です。
判断
はい/いいえの回答を促す選択記号です。次に起こす行動・処理が分岐する場合があります。
結合子
一連の流れを1ページでまとめるため、同じチャート内の別処理に飛ばす記号です。参照先を提示して混乱を防ぎます。難易度が高い業務や複雑な手順を踏む工程に使用します。
ページ外結合子
結合子と同様に、フローの長期化・複雑化する場合に使用される記号です。1ページに収まらない場合、複数記事に渡って流れを解説するために使用します。
業務フロー完成後の運用も重要
業務フローは導入して終わりではなく、運用しながら課題改善に努めていくことを意識しましょう。
以下は運用におけるポイントです。
業務フローは業務全体の流れを理解するために使われます。そのため、業務内容への理解を深めるためには、マニュアルとの連携が不可欠です。
マニュアルとの連携
業務内容の理解向上にはマニュアルとの連携が欠かせません。業務フローは、あくまで業務の大枠の流れを可視化したツールだからです。
業務に関する具体的な内容はマニュアルに記載し、確認しながら業務を進めていきます。
また、業務フローを改善した場合はマニュアルの内容も同時に更新しておくと、記載内容とのギャップが少なくなるでしょう。
業務フロー導入後の課題を社内で共有
定期的に業務の改善点を共有する場を設けることをおすすめします。業務フロー導入前には気付かなかった課題も出るからです。
アップデートの機会を設けないと業務フローの記載内容と実情に大きな剥離が発生し、業務フローの導入意義が失われます。実情を最も理解している作業担当者と数か月に1回共有の場を設け、ミスマッチの解消に努めていきましょう。
まとめ
この記事では、業務フローのシステム化する目的やわかりやすいフローを作成するためのポイントなどを解説しました。業務フローをシステム化すると以下のメリットが得られます。
● 作業の無駄を削減
● 新入社員の即戦力化
● 社員同士互いの業務内容の理解向上
業務の可視化によって仕事の進め方をイメージでき、新入社員や部署異動してきた社員が仕事を早期に覚えられます。
また、部署間での連携が必要な仕事に直面した場合でも互いの仕事に対してイメージの共有ができていると、納得感のある回答を社内外に発信できます。
今回紹介したポイントを参考にしていただき、業務フローのシステム化を進めていきましょう。