【導入事例で学ぶ】RPAの適用範囲・適用業務(4分野13業務)

【導入事例で学ぶ】RPAの適用範囲・適用業務(4分野13業務)

最近、銀行や運送業等の複数の会社からの「RPAを利用して何千~何万時間の労働量の削減を行う」といった計画の発表が目に付くようになりました。

著名な調査会社の「RPAに関する調査」によると、日本では革新的な企業層(イノベータ層)がやっと本格的な展開フェーズに入り始めた状況であり、一般的な企業層もこれから導入検討に進んでいく模様とのことですが、皆さんの会社ではいかがでしょうか?

私どもと取引のあるお客様からも、RPAツールの選定に関する悩みだけではなく、RPAの導入・展開における対象業務の選定に関する悩みを良く聞くようになってきました。

今回は、RPAの導入・展開時における対象業務の選定のヒントとして、経理部門、人事・総務部門等の具体的な事例(4種13例)をご紹介させていただきます。

RPAの導入はどの業務から?対象業務の選定の優先順位

具体的な他社事例の紹介の前に、RPA導入における対象とすべき業務について少しだけおさらいをしましょう。

以前の記事でも紹介させていただきましたが、RPAの導入効果を高めるためには、下記のような優先順位を視野に入れて検討されることをお勧めいたします

RPA導入で優先すべき対象業務

  1. 絶対的に作業時間が多い業務
    (1回の作業時間、作業頻度、作業者の人数の積が単純に多い)
  2. 同様の作業が多い業務
    (同様の作業を商種や取引先等の単位で行っている)
  3. 作業時間が就業時間外となる業務
  4. 作業時間が限定的で他作業を中断して行う業務
  5. 作業者が要望する業務
    (絶対作業時間そのものはそれほど高くないが作業難度や作業負荷が高い)

RPA導入事例(4分野13業務)のご紹介

RPAの基本的な動作は、システムへのデータ入力(メール送信を含む)や、システムからのデータ出力(メール受信を含む)が中心となり、それらの動作を組み合わせた形で業務の自動化を実現することとなります。

今回ご紹介する事例は、使用システムの違いによって実施内容も大きく変わってきます。そのため作業内容や削減できる業務量が必ずしも貴社の期待値と一致しないところもありますが、一般的な事例(目安)としてご覧ください。

1.経理部門

a)売掛・入金業務

対象作業の概要

債権情報や入金情報に従い、回収予定表の作成、入金消込等を自動的に処理。人手による入金承認を経て、会計システムへの入金・消込仕訳入力等の処理の自動化。

01_売掛・入金業務

01_売掛・入金業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり500件程度で約50~100人時

b)買掛・支払業務

対象作業の概要

債務情報に従い、支払予定表の作成、支払消込等を自動的に処理。人手による支払承認を経て、会計システムへの支払・消込仕訳入力やFBデータの作成等の処理を自動化。

02_買掛・支払業務

02_買掛・支払業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり500件程度で約50~100人時

c)資産管理業務

対象作業の概要

固定資産、リース資産情報に従い、会計システムへの取得/除去、支払、減価償却仕訳入力や税務署へ提出する償却資産税申告書データの作成等の処理を自動化。

03_資産管理業務

03_資産管理業務

削減が期待される業務量の目安:

100件程度で約10~20人時

d)交通費確認業務

対象作業の概要

各人から提出された交通費請求に対して、役職に準じた交通手段の確認と、移動区間価格の妥当性をWebサイト等で確認する作業の自動化。

04_交通費確認業務

04_交通費確認業務

削減が期待される業務量の目安:

従業員200~300名規模で月あたり約20~30人時

2.人事・総務部門

a)過重労働管理業務

対象作業の概要

月中に労働時間を集計し、月末において過重労働となりそうな従業員を検索。対象となる従業員の上長および本人に対して、メールにて状況を通知することで過重労働を抑止。さらに、過重労働となってしまった従業員の上長および本人に対するメール通知と、対策等の回収作業(期限未回答の場合の催促を含む)を自動化。

05_過重労働管理業務

05_過重労働管理業務

削減が期待される業務量の目安:

従業員200~300名規模で月あたり約10~20人時

b)人事考課業務

対象作業の概要

各従業員に対し、前年結果を含んだ人事考課表の作成やメールによる配布、および上長からの考課結果の回収作業(期限未回答の場合の催促を含む)や考課結果の一覧作成等の処理を自動化

06_人事考課業務

06_人事考課業務

削減が期待される業務量の目安:

従業員200~300名規模で月あたり約10~20人時

c)経営向けレポート(月次報告書)作成業務

対象作業の概要

経営層に対して詳細な業績や損益・予測情報を提供するために、SFA/CRM、ERP(販売、購買、在庫、会計)やプロジェクト管理等の各システムから必要な情報を収集し、経営向けレポート(月次報告書)作成等の処理を自動化。

07_経営向けレポート(月次報告書)作成業務

07_経営向けレポート(月次報告書)作成業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり1事業約5~10人時

3.営業・販売部門

a)販売状況調査業務

対象作業の概要

小売チェーン店が提供する販売情報提供サイトから、日付・店舗単位の自社/競合商品の販売状況(POSデータ)を決められた周期にて収集。商品別販売動向を管理するBIシステム等へのデータ登録を自動化。

08_販売状況調査業務

08_販売状況調査業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり1チェーン店約5~20人時

b)定期販売商品の見積作成業務

対象作業の概要

製品保守等の定期的に販売されるサービスの見積/発注書の作成、およびメール添付による送付の自動化。

09_定期販売商品の見積作成業務

09_定期販売商品の見積作成業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり100件程度で約5~10人時

c)メール受注業務

対象作業の概要

販売店や得意先から、メールにて添付された自社注文書の内容を基幹システムへ登録する作業の自動化。

10_メール受注業務

10_メール受注業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり100件程度で約5~10人時

d)WebEDI受注業務

対象作業の概要

販売店や得意先が運用するWebEDIシステムに登録された注文内容を、基幹システムへ登録する作業の自動化。

11_WebEDI受注業務

11_WebEDI受注業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり100件程度で約5~10人時

4.購買・倉庫部門

a)メール発注業務

対象作業の概要

基幹システムに登録されている購買情報に従って、仕入先に対してメール添付にて発注書を送付する作業の自動化。

12_メール発注業務

12_メール発注業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり100件程度で約5~10人時

b)WebEDI出荷業務

対象作業の概要

基幹システムの出荷情報を販売店や、得意先が運用するWebEDIシステムへ登録する作業の自動化。

13_WebEDI出荷業務

13_WebEDI出荷業務

削減が期待される業務量の目安:

月あたり100件程度で約5~10人時

【まとめ】導入事例で学ぶRPAの適用範囲・適用業務(4分野13業務)

今回は、RPAの導入・展開するにあたっての対象業務の検討においてのヒントとして、他社の事例をご紹介させていただきましたが、多少なりとも皆さんのご参考になりましたでしょうか?

残念ながらRPAは万能ツールではありませんが、「ルールと手順がしっかり決められた定型処理作業」の範囲で業務の自動化を行う上では、非常に有効なツールとなるのではないかと思います。

さらに、直近での成果を期待される事が多いので、当面は現場のボトムアップ的な視点でRPAを実現していくことも必要と思われますが、ある程度の成果が見えてきたところで、トップダウン的な視点で業務の棚卸を行い、業務の優先順位と共に本質的な業務の改善を行いながら、システム改修や人的BPOもにらんで適材適所にRPAを適応させていく事が非常に重要なことだと思います。