
企業にとってサイバーセキュリティは重要な経営課題のひとつであり、巧妙化するサイバー攻撃のパターンに対しさまざまな対策がとられています。
しかし、サイバーセキュリティの適切な対策には高度な専門知識が必要であり、特に人手不足が顕著な中小企業にとっては専門人材が確保できず有効なセキュリティ対策を構築できないケースもあるでしょう。
本記事では、このような企業の課題を解決するために注目されているEDR製品「SentinelOne」について詳しく解説します。
EDRとは?
EDRはEndpoint Detection and Responseの略称で、PCやスマートフォン、タブレット、サーバーといったエンドポイントのセキュリティを監視し、脅威の検出や分析、対処する技術です。
通常、セキュリティ対策ツールの多くはマルウェア(ウイルス)への感染や不正アクセスなどを未然に防ぐことを目的としていますが、EDRはこれらの脅威をブロックするだけでなく、侵入を即座に検知し被害を最小限に留めることもできます。
たとえば、エンドポイントのセキュリティ対策としてはアンチウイルスソフト(ウイルス対策ソフト)が一般的ですが、これはソフトウェアに登録されたパターンファイルを照合することでマルウェアを判別しています。しかし、既知のマルウェアには対処できても、新たに登場した脅威までは防ぎきれず、対処が遅れてしまうと被害が拡大するおそれもあります。
また、サイバー攻撃が巧妙化する昨今では不正アクセスのリスクも高まっており、ファイアウォールなどの対策を行っていても完全に侵入を防ぐことは難しいものです。
そこで、EDRはエンドポイントがマルウェアに感染したりネットワークへの不正アクセスがあった場合、端末をネットワークから遮断したうえでマルウェアを削除、システムを復旧するなど必要な対処を行います。
「SentinelOne」の特徴

EDRはさまざまなメーカーによって開発されており、製品の種類も多岐にわたります。今回は、米国のサイバーセキュリティ企業SentinelOne, Inc.が提供している「SentinelOne(センチネルワン)」の特長について3つのポイントに分けて解説します。
EDR・NGAV・EPPが統合
「SentinelOne」はEDR以外にもNGAV(Next Generation Anti-Virus)やEPP(Endpoint Protection Platform)といった複数の機能が一つのパッケージに統合されています。
NGAVは次世代型アンチウイルスソフトともよばれ、機械学習によってエンドポイント上のあらゆる操作、振る舞いを常に監視します。不審な操作や振る舞いが見られた場合には即座に検出・阻止するため、従来のアンチウイルスソフトに比べて優れた検知能力とブロック機能を提供します。
EPPはエンドポイント保護プラットフォームともよばれ、エンドポイントをマルウェアから保護するためのセキュリティ製品を指します。EPPには従来のアンチウイルスに加えNGAVも含まれ、非マルウェアによる攻撃にも対応できます。
「SentinelOne」にはこれらの機能がひとつに統合されているため、既知のマルウェアだけでなく未知の脅威からも事前防御できるほか、万が一マルウェアに感染した際には適切な事後対策により被害を最小限に食い止めることもできます。
2.自律型AIを活用した高度な検知能力
「SentinelOne」は自律型AIが搭載されており、機械学習によってミリ秒単位の優れた検知能力を発揮します。
ネットワークやシステムの監視を人の手に頼っていると、異常の検知と原因の特定、さらには正常な状態への復旧までに時間を要し被害が拡大するリスクがあります。
自律型AIを活用した「SentinelOne」は、AIによって異常な振る舞いを瞬時に検知できるため被害の拡大を最小限に抑えられます。また、従来のアンチウイルスソフトのようにソフトウェア単独で動作するため、オフラインの状態でもマルウェアの検知やブロック機能が有効です。
3.柔軟な運用体制を実現
企業向けのセキュリティ製品は複数ライセンスの契約が必要などの条件が設定されていることも少なくありません。しかし、このような契約条件は小規模事業者にとってハードルが高く、無駄なコストがかかることが理由で導入を見送らざるを得ないというケースもあるでしょう。
「SentinelOne」は1ライセンスから契約が可能であるため、企業の規模を問わず多様なニーズに対応でき無駄なコストがかかる心配もありません。さらに、Windowsはもちろんのこと、MacやLinux、iOS、Android、ChromeOSに対応しているため、使用しているエンドポイントのOSにかかわらず柔軟な運用体制を実現できます。
「SentinelOne」の主な機能
「SentinelOne」には従来のセキュリティ対策ツールにはないさまざまな機能が搭載されています。特徴的な4つの機能について詳しく解説しましょう。
1.素早い検知
自律型AIを搭載した「SentinelOne」は、パターンファイルに登録された既知のマルウェアはもちろんのこと、未知の脅威に対しても素早く検知できます。
エンドポイントの振る舞いや挙動を常に監視しており、セキュリティの脅威となり得る不審な動きが見られた場合には即座に検知するため、従来のアンチウイルスソフトでは対処しきれなかったゼロデイ攻撃やファイルレス攻撃などにも適切に対処し被害を最小限に抑えられます。
2.ワンクリックでシステムを修復・ロールバック
万が一マルウェアに感染するなどしてエンドポイントのシステムに何らかの被害が生じた場合、もとの状態に戻すための復旧作業が必要です。
しかし、復旧作業においては被害の影響範囲や感染したファイルの特定、さらにはネットワークからの隔離など多くの手間がかかり、専門知識も求められます。「SentinelOne」はワンクリックでシステムの修復およびロールバックを自動化する機能も搭載されており、高度な知識をもった専門家やエンジニアがいなくても容易にシステム復旧が可能です。
3.最新の脅威情報の自動収集
日々進化しつづけるサイバー攻撃のパターン・手法からエンドポイントを保護するためには、サイバーセキュリティに関する最新の情報・動向を収集することが重要です。
「SentinelOne」には最新の攻撃パターンや脅威に関する情報を自動収集する脅威インテリジェンスという機能も搭載されており、これまで知られていなかった最新のサイバー攻撃やマルウェアも素早く検知できます。
4.フォレンジック機能
フォレンジックとは、マルウェアへの感染や不正アクセスといったセキュリティインシデントが発生した際に、エンドポイントやネットワーク内に残された情報・データを収集し分析することを指します。
「SentinelOne」には動作ログを記録するフォレンジック機能が搭載されており、これを分析することでインシデント発生からどのようにして被害が拡大していったのか、詳細な追跡調査を行うことができます。
また、今後同じような脅威のリスクが高まったとき、どのようにして攻撃から守るべきか有効な予防策を構築するためのヒントにもなるでしょう。
5.デバイスコントロール機能
デバイスコントロール機能とは、USBやBluetoothへの接続を制御する機能です。
マルウェアは物理メディアによって感染するケースもあるほか、昨今ではBluetoothも情報漏えいの原因になることもあります。
そこで、Bluetoothへの接続を許可するかどうかの設定はもちろんのこと、USB制御ではデータの読み書きを許可するか、あるいは読み取りのみ許可、接続そのものを拒否するといった個別のルールを設定できます。
接続が許可されていない端末にBluetoothやUSBストレージを接続した場合、アクセスが遮断された旨のポップアップブロックが表示されます。
企業が「SentinelOne」を利用するメリット

「SentinelOne」を導入することで、企業にとってさまざまなメリットがあります。
サイバー攻撃に対する高い防御力と迅速な対応
企業の基幹システムはサイバー攻撃の標的になりやすく、被害を受けると事業そのものがストップしてしまうリスクもあります。
そこで、サイバー攻撃に対し高い防御力を発揮する「SentinelOne」を導入することで、企業の重要なデータやシステムを安全に保護し事業に与える影響を最小限に留められます。
「SentinelOne」は自律型AIを活用した高度な検知・分析機能を備えているため、ゼロデイ攻撃やランサムウェアなどの未知の脅威を即座に検知・ブロックすることができます。
また、脅威が検出された際には詳細なフォレンジック分析により攻撃の経路や影響範囲を可視化し、迅速な意思決定と適切な対策の実施をサポートします。これにより、従来に比べてセキュリティインシデントへの対応時間が大幅に短縮され、業務の継続性が確保されます。
運用コストの削減
「SentinelOne」は脅威の検知やシステムの修復を自動化することもでき、セキュリティ運用の負担を大幅に軽減するメリットもあります。
従来のセキュリティ対策では、インシデント発生時に影響範囲の特定や原因の調査、システム復旧やロールバックなどの対応に多くの時間とリソースが必要でした。また、これらの作業は高度な専門知識が求められるため、セキュリティの専門家を配置する必要もありました。
「SentinelOne」はインシデント発生後のプロセスをワンクリックで自動化でき、運用にかかるリソースを大幅に削減することができます。
企業にとっては、これまでセキュリティ対策に要していた専門人材をより戦略的な業務にアサインできるようになり、業務効率化や生産性向上に繋げられる可能性もあります。
企業の規模を問わず導入・運用できる
「SentinelOne」は1IDからの導入が可能であるため、大企業はもちろんのこと小規模事業者まで幅広く対応できます。たとえば、事業が成長し経営規模が拡大した場合でも新たな製品へリプレイスする必要がなく、企業の成長に合わせた柔軟なスケールアップが可能です。
脅威の検知・分析・対応までをワンストップで提供する「SentinelOne」
高度化するサイバー攻撃から自社のシステムを守るためには、脅威を迅速に検知・分析し適切な対処をとることが不可欠です。「SentinelOne」はこれらをワンストップで提供するEDR製品であり、専門人材がいなくても安定したセキュリティ体制を構築できます。
大企業はもちろんのこと小規模事業者にとっても柔軟に運用できるため、業種や規模を問わず多くの企業におすすめです。