労働人口の減少や働き方改革により、ITを活用した業務の効率化が促進されています。中でも昨今はRPAなどの自動化技術に注目が集まっています。
ハイパーオートメーションは、AIやRPAなどを活用してビジネスにおける反復作業を自動化することです。特徴や、期待できる効果と注意点について詳しく見ていきましょう。
ハイパーオートメーションとは
AIや自動化ツールを組み合わせて業務を実行する概念のことをハイパーオートメーションと言います。世界でも有数のIT分野の調査会社である「Gartner(ガートナー)」社が2020年のテクノロジートレンドとして発表したことでも知られています。
業務の自動化といえば、定型業務を自動化する技術であるRPAを連想する方も多いでしょう。RPAとはこれまで人が行っていた作業の手順をロボットに覚え込ませ、自動的に実行させることにより業務を効率化するツールです。ロボットが完成し運用されれば、人の手を介さずに業務が行われます。プログラミングの専門的な知識がなくても自動化が実現できることから、企業規模を問わず急速に普及しました。
それに対して、ハイパーオートメーションで実行されるのは、機械のみで完結する定型業務ではありません。例えば、SNSのデータを活用して顧客離反対策を行うケースを考えてみましょう。顧客がSNSで発信した自社サービスに対するデータの収集や分析、レポートの作成には、RPAや機械学習などが用いられます。最終的には、作成されたレポートを見て、マーケティングチームがどのような施策を行うのかを判断・決定するわけです。
このように、ハイパーオートメーションはさまざまなツールを用いて、より多くの業務を自動化します。また、プロセスの一部分をツールに委ね、最終的な判断は人間が行う「人とツールの協業」も、機械による自動化であるRPAとの違いです。
ハイパーオートメーションの導入で
期待出来る効果
導入することで、機械的な作業の改善はもちろん以下のような問題自体の解決ができるようになります。
業務効率化
膨大なデータを短時間で処理できる自動化ツールを導入することにより、作業時間が大幅に短縮できます。人と違ってミスが発生することもないため、チェックの必要もありません。
RPAは専門知識のない業務担当者でも使いやすいというメリットはあるものの、自動化の対象が定型業務に限定されるという弱点がありました。しかし、さまざまなツールを組み合わせて使うハイパーオートメーションであれば、幅広い業務の自動化が可能です。
生産性の向上
繰り返し行うような機械的な業務を行う必要がなくなり、人間はよりクリエイティブな業務を行えるようになります。
組織のデジタルツイン
デジタル化が進み業務の多くがシステム上で行われるようになると、日々の活動がデータとして蓄積されて行きます。つまり、組織の形態や業務プロセスがデジタル空間に可視化された形でコピーされるわけです。このコピーは、デジタルな双子という意味でデジタルツインと呼ばれます。
デジタルツインを見れば現在の問題点がわかるだけでなく、デジタル空間に理想的なデジタルツインを作成し、現場に落とし込んで改善に役立てることもできます。
専門性の民主化
幅広い業務が自動化されることにより、ITや経済の専門的な知識がなくても、専門性の高い業務に携われるようになります。
ハイパーオートメーションの注意点
ハイパーオートメーションは、メリットばかりというわけではありません。導入の前後で注意すべきポイントについて押さえておきましょう。
全社導入の場合、データの一元化などが必要
まず、導入する前の段階では、さまざまな準備作業が必要です。特に企業全体で導入する場合、部門内だけでなく全社的な業務プロセスの見直しやデータの一元化などが必要となってきます。各部門から人を集めなければならず、業務担当者の負荷が大きくなる可能性や、コストがかさむ可能性もあります。
ツールの導入・運用・連携にはコストがかかる
人が行っていた業務を自動的に行うソフトウェアやロボットは、デジタルレイバーと呼ばれます。導入時にはまずデジタルレイバーに業務を覚え込ませなければなりません。業務手順に変更があった場合には、変更を反映させる必要もあります。
また、販売管理や財務会計などの基幹系システムやそれを統合したERP、メールやグループウェアなどの情報系システムなど、企業では複数のシステムが活用されています。自社に合った形でこれらを組み合わるには、時間とコストが必要です。
セキュリティ対策に注力する必要がある
複数のシステムを連携して活用することにより複雑化するため、悪用しようとする人物に狙われる可能性が高まります。そのため、セキュリティ対策の強化も必要になります。
最後に
ハイパーオートメーションは、テクノロジーの新たなトレンドとして既に広まりを見せています。メリットはもちろん注意点も理解し、ツールをうまく活用することで、より生産性の高い企業運用ができるでしょう。