オフィス内の事務作業を自動化するホワイトカラー向けのツールという印象が強いRPAですが、実は製造分野における自動化にも有効であることをご存じでしょうか。例えば、多くの製造業では受注処理や在庫管理、支払処理といった作業がワークフローに含まれます。これらの作業はすべてRPAによって自動化が可能です。
今回は、製造業においてRPAをどのように活用できるのか、導入メリットや具体的な事例についてご紹介します。
製造業においてRPAは有効?
近年、労働時間や労働環境への改善が叫ばれています。その一方で、上手く対応できていない製造業者も多いのではないでしょうか。働きやすい職場づくりをおろそかにすると、働き手が集まりにくいリスクを抱える恐れもあります。製造業の現場では、現場での作業以外に多くのバックオフィス業務が発生しています。RPAを使用すれば、請求書の処理や在庫管理、発送状況の確認といったバックオフィス業務を365日24時間自動的に管理できます。その結果、書類の確認作業や状況チェックにかかっていた時間や工数が大幅に削減されるでしょう。具体的には以下のような分野での有効活用が可能です。
受発注
企業によって電話やメール、FAXなど、使用ツールはさまざまですが、膨大な量の受発注業務が発生します。RPAの導入によって、あらゆる場所から届いた多数の受注連絡に対し、指定場所へと受注情報を自動処理させることが可能です。フローが決まっているのであれば、内容にあわせて自動的に次のフローへと移行させることもできるようになります。
在庫管理
業務をスムーズに運営するには、商品や資材などの数量を明確に把握しておく必要があります。在庫管理を自動化すれば、売上や仕入れ状況、誤配の発生状況を素早く確認することが可能です。
会計・人事・労務管理
棚卸資産の管理や決算業務、経費精算など、あらゆる会計処理に関する業務も自動化が可能です。また人事においては、派遣社員の契約更新や雇用形態の変更、労務管理においては労働時間や安全管理など、さまざまな場面でRPAの有効利用ができます。
製造業でRPAを活用するメリット
業務の多くでRPAを使用することができますが、それにより具体的にどういったメリットが考えられるのでしょうか。
製造アイデアの創出に集中できる
受注管理や在庫管理、請求書作成などの作業に時間を費やしていると、どうしても新規事業の製造アイデアを創出しづらくなります。しかし、自動化によって作業効率をアップできれば、製造アイデアの創出にかける時間を増やすことが可能です。
コスト削減
人手不足による問題の深刻化は、製造業も例外ではありません。経済産業省の「2019年版ものづくり白書」によれば、日本企業における95%が人材確保に関する課題を抱えていることがわかっています。人材確保ができない状態が続くと企業運営にも支障をきたす可能性がありますが、大部分の業務を自動化できれば不足している人材を補うことができるだけでなく、人件費の大幅な削減にもつながるでしょう。
製造業でのRPA導入事例
実際に製造業におけるRPAの導入事例を元にどのような効果があったのかをご紹介します。
事例1
製造会社の例
国内外の拠点合わせて年間約7,900時間分の工数削減を見据えて導入した事例です。
こちらの企業では国内での導入に先駆けて、海外拠点にRPAを導入したのがポイントです。アジアでの営業効率化や納期短縮に利用し、効果を実感したうえで国内の拠点にも導入を図りました。その時点で運用ルールの全社的な運用に携わり、最終的に国内外問わず全社展開に成功しました。
事例2
食品製造メーカーの例
調味料などの食品を製造するメーカーでは、受注管理に活用するためRPAを導入しました。
商品の売上が軌道に乗っていく中で、元来手作業で行っていた受注業務への人件費や効率の低下が問題になっており、将来的な人材不足を見据えて自動化を試みました。すべての受注業務に導入したわけではないものの、導入に際して24時間265日年中無休での受注体制を構築することで受注の規模の拡大にもつなげられ、今後もさらなる発展を見込んでいます。
事例3
鉄鋼製造業の例
この企業ではライフワークバランス実現のため、業務効率化を目指してRPAを導入しました。
実際に導入したのは経理部門です。国内だけではなく海外の拠点から集まった予算処理のための書類は拠点によってフォーマットが異なっており、それらの処理に経理部門では膨大な時間が必要であったためです。RPAを活用することでフォーマットからのデータ抽出が自動化でき、業務時間は導入前の約4分の1にまで減少することに成功しました。
最後に
製造業の現場においても、受発注や在庫管理といったホワイトカラー的作業は業務全体を圧迫します。こうした細かく時間のかかる作業を一括してRPAで自動化することは、バックオフィスの効率化や製造アイデアの創出に集中できる環境づくりに役立ちます。結果として生産性や品質の向上にもつながることでしょう。