働き方改革を推進するための手段として注目を集めているRPAですが、効果を十分に発揮するには運用の適切さが重要になります。機能を最大限に活かして会社を発展させてくために必要となる、RPAのガバナンスによる内部統制についてご紹介します。
RPAガバナンスの設定が必要な理由
RPAの導入も簡単に行えるわけではありません。導入前に、どういった業務にどのように適用していくのかといった項目を決めておく必要があります。
事前に決定しておくべき項目
・自動化の適用範囲
自動化導入が進むにつれて、人とロボットの役割分担が不明瞭になるケースが見られます。事前に適用範囲を決定しないまま進めてしまうと、ロボットが量産されるなど管理がしづらい状態になってしまいます。また、業務フローの中に判断の基準が明確でないものがあると、自動化は困難です。フローが明確に定まっている業務を適切に選択する必要があり、どの業務でどのようなRPAを使用するのかを事前に決定しておくことが重要です。
・問題発生時の対応フローやバックアップ体制の整備
何らかの問題が発生し、そのせいで業務が止まってしまうことは避けなければなりません。問題が発生した場合の対応フローやバックアップ体制を事前に整備しておくことで、ダメージを最小限にとどめることができます。
・セキュリティ
自動化をアプリケーションで行う以上、不正使用されるリスクが絶対にないということはありません。ロボットを介して不正に情報が取得されたり、書き換えをされたりするリスクに常に備えておく必要があります。
これらの課題への対策として必要なのがRPAガバナンスの設定です。ガバナンスは、「統治」や「管理」という意味の英語に由来する言葉です。ビジネスの世界では、企業運営をゴールに向かって正しく導くための仕組みやルール作りなど、管理体制のことを表しています。
RPAガバナンスを設定しツールの使い方や運用ルールを作成、適切に運用されていることを監視する体制を作ることで、ツールを導入したことによる効果を適切に得られるような仕組みづくりが行えます。
RPAガバナンス整備のポイント
ガバナンスをうまく整備するためには、なぜRPAを導入したいのか、という導入の目的を明確にしておかなければなりません。まずは中長期的な導入計画を立案し、導入する業務、業務にあった製品の選定、既存ルールとの照らし合わせが必要です。1から体制を作る必要はありません。企業の管理体制を踏まえ、不足する部分を補う形で整備していくという方針を確認しましょう。
運用ルール
ツールを適切に運用するためのルール作りです。ツールの導入規模が大きくなればなるほど、運用が難しくなります。このような事態にならないよう、ロボットの作成・更新や管理方法に関するルールを制定する必要があります。構築したルールはRPAを活用するすべての事業部で統一することが重要です。
運営プロセス
作成した運用ルールが適切に運用されているかを必要に応じてチェックする、運用を続けていくうえでのリスクの洗い出すといったRPA運用全体の管理プロセスのことです。運用ルールを順守した上でどのように導入していくのかを決定します。
管理組織
運用ルールの詳細を決め、運営プロセスの整備をするためには、それを担当する部署やチームが必要です。実際の導入を管理し統括する組織であり、RPAの不明点を相談する部署でもあります。
これらが上手く決定できていなければ、ロボットによる誤処理が発生したり、全社的な統制ができなかったりという問題が発生することが考えられます。効率化のために導入したRPAが逆に非効率になってしまうような問題を生じさせてしまう可能性があるのです。RPAガバナンスをうまく整備し、リスクの発生を未然に防ぎましょう。
RPAガバナンスのための運用ルール策定方法
効果的なガバナンス整備のためには、実際の業務に合わせて必要な情報をピックアップしていくのがおすすめです。まずはRPAを開発する段階でのルール、実際に使用してツールを管理する段階でのルールといった形で、運用の流れを可視化していきましょう。
開発段階のルール
開発段階では、RPAを開発して良い業務、ツールをどう操作するのか、考えられるエラーが起きた際の修正方法などを考えておく必要があります。これらは都度考えるのではなく、事前にある程度のルールを決めておくことで制作したRPAがさらに独自の進化を遂げてしまうのを防ぐことができます。ルールとともにマニュアルなども整備すると分かりやすいでしょう。
また、ロボットを一覧にして保管するためのルールも必要です。誰がいつ一覧に登録をするのか、どういった情報を管理するのかといったルールを設定しておきましょう。
運用段階のルール
ロボットは制作して終了ではありません。実際に運用していくにあたって、うまく稼働しているか確認するのフローも必要です。例えば、一覧を元にして実行履歴や結果を把握するなどの動きが必要です。ルールとしては稼働確認の際は何を確認するのか、どういった周期で確認するのかといった点を設定しておく必要があります。
最後に
ロボットによる効果を最大限に活用して、導入当初に設定していた目標を達成するためにはガバナンスの整備は極めて重要です。一見すると難しいように思えても、RPA導入に必要な情報を順序だててまとめていくことで、RPAガバナンスは簡単に設定することができます。上手く運用ルールを設定して、RPAを安全に使用していきましょう。