RPAの導入は、これまでの業務の在り方を変える大きな一手になり得ます。単純作業はロボットに任せ、人は人にしかできない業務を行うというのは、業務効率化という意味でも、人材の確保という意味でも大きな意味を持っています。
しかし、ロボットに期待通りの働きをさせるためには、必ず設計書(要件定義書)を作らなければいけません。設計書がうまく作られていないと、ロボットが頻繁に止まってしまったり、意図しない動きをしてしまったりするリスクが出てきます。そこで、この記事では、設計書の重要性と作成のコツを解説します。
RPA技術の活用のために
RPAはロボットによる業務の自動化のことを言います。これまで人が目視や手作業で行っていた作業をロボットに処理させることができます。たとえば、「顧客リストの中から1カ月後に契約が切れる対象者を探し出し、自動でリマインドメールを送る」「見積もり依頼フォームを元に自動で見積もりを作成する」といったことが可能になります。
RPAを導入することで得られる一番のメリットは、業務にかかる時間を減らし、効率化を進められる点です。また、人の手が入らなくなることでヒューマンエラーを防ぐ効果や、エラーが出た際の素早い検知システムの構築、悪意ある改ざんの防止といった効果も期待できます。
こうした効果を期待して企業がRPAを導入するのであれば、導入の際には要件定義書と呼ばれる設計書の作成が必須です。
設計書とは
設計書は、ロボットにどのような動きをさせるのかを示すものです。RPAの導入では、まず「どの業務を自動化させるのか」を決定し、その後、実現させるための設計書を作成、それをもとに開発を行うという手順を踏みます。
RPAに期待通りの働きをさせるため、設計書には自動化の目的や全体像なども記載させ、それを元に開発担当者が開発を行います。特に開発担当者と業務担当者が異なる場合にはなくてはならないものです。
RPAの設計書、要件定義書とは?
RPAの要件定義書は、ロボットをどのように動かすのかを細かく記載したものです。たとえば、「エクセルを開く」というひとつの動作だけを例にとったとしても、「いつ開くのか」「エクセルを開く前に開いているウインドウを閉じる必要があるか」「すでにエクセルが開かれている場合、もうひとつ開くのか」など、さまざまな検討材料が出てきます。このような多くのケースを想定し、ロボットが正しい動きをできるように細かく設定をしていきます。
人間であれば、「平日9時になったらエクセルを開いて」と指示を出せば済むことであっても、これをロボットに自動でやらせようとすると「平日の定義とは」というところから指示を出す必要が出てきます。このような細かい指示を抜け漏れがない状態で行うことで、RPAを期待通りに動かすことができます。
RPAに担わせたい業務が決定したとしても、そこからいきなり開発に移ってしまうと、細かい定義が漏れてしまったり、期待した動きにならなかったりする可能性が高いでしょう。そこで、まずは要件定義書を作成して、どういうケースにどのような対処をするのか、どう動かすのか、ということを決めていく必要があります。
初めてその業務に携わる人が設計書を見ただけで業務をできる程度まで作り込むことで、完成したイメージを共有できるだけでなくその後の工程をスムーズに進めることが可能です。
RPAの要件定義書の作成のコツ
要件定義書を丁寧に作り込むとRPAの作成はもちろん、メンテナンス時の手順確認も容易になります。退職などにより開発者が変わる可能性もあるため、誰にとっても分かりやすく見えるよう作り込んでおきましょう。分かりやすい要件定義書を作るには、まずデータフロー図を作成して進めていくのが良いでしょう。
データフロー図を作成しての進め方
まずは、実際の業務を可視化するためのデータフロー図を作成しましょう。データフロー図は業務フローではなく、データがどのように移動していくのかを示すものであるという点に注意が必要です。
データフロー図を作成する際には、物やデータ、対象者からどのようなプロセスが発生し、その結果、何がどこに保管されるのか、また、そこから更に生まれるプロセスがなんなのかを順に図にしていきます。
実際の業務に即した完璧なフロー図を作成しようとすると、内容が複雑になりすぎる可能性があります。データフロー図はある程度の流れを知るためのものですから、初めのうちはそれほど細かく作り込む必要はありません。データフロー図をもとに細かく動きを見ていくことで、要件定義書に必要な内容を盛り込むことができます。
ロボットの動きはきめ細かくフォロー
データフロー図を元に要件定義書を作成する際は、ロボットがどのような動きをするのかについて、きめ細かくフォローしていく必要があります。
人が作業をしていた場合でも、突然エクセルが固まって動かなくなってしまうトラブルは、よくあることです。このような場合にロボットにどのような対処をさせるのか、また、規定の業務を終えた後のロボットの動きをどうするのかなど、通常通りの動きをしなかった場合の対処法や、実際の業務部分とは異なる「スタート」「終了」のプロセスなど、細かく設定を行う必要があります。
とはいえ、このような問題は実際に動かしてみて初めて分かる部分も多いものです。まずはテストしてみて、エラーや意図せぬ動きを順につぶしていくというのもひとつの方法です。
まとめ:RPAの設計書(要件定義書)の意義と作り方を理解しよう
RPAを導入して業務を自動化するためには、要件定義書の作成が必須です。設計書はしっかり作り込んでおく必要がありますが、開発知識がない人でも、業務内容を把握していれば作成が可能です。何気なく行っている普段の業務を見直して、きめ細やかでわかりやすい設計書を目指しましょう。