前回のコラムでは、レガシーシステムを使い続けるデメリットや新システムへの更改を行うメリットを解説しました。本コラムでは、レガシーシステムから新システムへ更改する際のポイントを解説します。
レガシーシステムから新システムへの更改方法
レガシーシステムから新しいシステムへと更改することを「レガシーマイグレーション」と呼びます。一般的な更改の方法は、以下の通りです。
- マイグレーション及びスクラッチ開発
- ERPの統合パッケージを導入
- 販売や会計に特化した個別パッケージを導入
- ノーコードツールを利用した自社開発
- BPO(外部委託)
では、各方法の詳細を見ていきましょう。なお、どの方法を選択するかは、企業のニーズや予算、導入スケジュールに応じて慎重に検討する必要があります。
1. マイグレーション及びスクラッチ開発
マイグレーションとは、既存のレガシーシステムから新しいシステムへデータや機能を移行することを意味します。現行システムを活かしつつ、新しい技術を導入できるため、比較的リスクが少なく、新しい機能を短期間で導入可能です。ただし、旧システムの制約により、新システムとの完全な統合が難しい場合もあります。
一方で、スクラッチ開発は、既存システムを全て廃止し、新たにシステムをゼロから開発する方法です。企業のニーズに完全に合わせたシステムを構築できますが、コストや時間がかかり、導入時のリスクも高まるため、詳細な要件定義と慎重な計画が必要です。
2.ERPの統合パッケージを導入
ERPの統合パッケージとは、企業全体の業務を統合的に管理できるソフトウェアシステムです。統合パッケージを導入することで、異なる部門間のデータ共有がスムーズになり、リアルタイムでの意思決定が可能になります。
具体的な手順としては、まず業務プロセスの分析を行い、ERPパッケージが対応する範囲を明確にします。その後、適切なパッケージを選定し、必要なカスタマイズを行った上で段階的に導入します。
この手法は、複数のレガシーシステムが独立して存在し、データの一貫性や管理の複雑さに問題がある場合に特に有効です。
3. 販売や会計に特化した個別パッケージを導入
業務の特定領域に特化した個別パッケージの導入も、レガシーシステムの更改手法の一つです。例えば、販売管理や会計管理に特化したパッケージを選択することで、企業のニーズに合わせたシステムを効率的に構築できます。
ただし、各パッケージ間のデータ連携や統合性を確保することが課題となるため、適切なシステム設計が求められます。
この方法は、特に販売管理や会計管理など、企業の特定業務に対して高度な機能を必要とする場合に適しています。
4.ノーコードツールを利用した自社開発
ノーコードツールは、画面上での操作でシステム構築が可能なため、IT部門に依存せず、業務部門主導でのシステム開発が実現できます。具体的には、はじめに業務要件を整理し、ノーコードツールを用いてプロトタイプを作成します。その後、必要な機能を追加しながら運用環境に移行します。
これにより、開発コストの削減や迅速な市場対応が可能となりますが、ツールの選定やデータ連携の設計には専門知識が求められます。特に、特定の業務に迅速に対応するためのシステムを必要とする場合や、外部リソースに頼らずに自社で開発を進めたい場合におすすめの方法です。
5.BPO(外部委託)
BPO(Business Process Outsourcing)は、システムの運用や保守、さらには業務そのものを外部の専門企業に委託する方法です。BPOを活用することで企業は自社のコア業務に集中できるほか、専門的な知識や技術を持つ外部パートナーにより、システムの安定運用が確保されます。
ただし、委託先の選定には慎重さが求められ、業務の一部が外部に依存するリスクを管理する必要があります。BPOを導入する際には、委託する業務の範囲を明確にし、信頼できる外部パートナーを選定した上で、契約条件や業務の品質管理についても慎重に検討することが重要です。
BPOによる更改は、特にシステムの運用・保守、カスタマーサポート、バックオフィス業務など、時間やコストがかかる業務に対して有効です。
上記パターンのメリットデメリットをまとめると、以下の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
マイグレーション及びスクラッチ開発 | ・現行システムと変わらない操作感の為、現場担当者は利用しやすい | ・急速なビジネスの変化に対応できない ・現行のシステムと変わらない |
ERP(統合パッケージ) | ・急速なビジネスの変化に対応できる ・全体最適 ・マスタやデータが一元管理できる |
・現行の業務と操作感が大きく変わる |
個別パッケージ | ・個別業務に適している為導入しやすい ・現場に最適な機能が豊富 |
・他システムとのマスタやデータ連携が必要 |
自社開発 | ・好みの仕様やカスタマイズを容易にすることができる | ・開発のための人材の確保が必要 |
外部委託 | ・業務は委託先が履行 | ・委託先に対する費用がかかる |
推奨ポイント
以上のようにレガシーシステムの更改には、それぞれ様々なメリットやデメリットがありますが、当コラムではERP(統合パッケージ)を推奨します。
現代のビジネス環境は急速に進化しています。この変化に対応するためには、企業は業務の効率化とデータの一元管理を実現する新しいツールの導入が不可欠です。一元管理することにより、業務の効率化と生産性の向上が期待できます。
さらに、今後の事業展開や働き方の変化に柔軟に対応することも重要です。特にIT人材の減少が顕著となっている現在、将来的な人材不足への対策として、どれだけ効果的にDX化を推進するかが鍵となります。
これらの課題に対応するために、ERP製品の導入は非常に有効な手段です。
まとめ
まずは、自社のレガシーシステムをどのように更改するか、その方向性をじっくりと検討することが重要です。これにより、スクラッチ開発を選ぶべきかまたはERP製品の導入が適しているかを判断する基盤が整います。
当コラムでは、クラウドERPを推奨します。多くの中小企業にとって、DX推進やシステムのセキュリティ向上が今後ますます重要な課題となってきます。ERP製品は、この課題を効果的に解決するための強力なツールです。
ERP製品を導入しマスタデータを正確に入力することで、販売、会計、在庫管理などの業務を一元管理することができます。これにより、レガシーシステムでは実現できなかった業務の最適化が可能となり、業務プロセスの効率化とデータの一貫性が確保され、全体の生産性が向上します。
特に、中小企業でも導入しやすいMicrosoft Dynamics 365 Business Centralは、クラウドベースなので、ERPの中でも短期間、低コストで導入ができ、企業の成長と変化に対応する理想的なソリューションです。
導入企業が増えているM365との親和性も高く、Dynamics 365 Business Centralを導入することで、次世代のビジネス環境に適応し、競争力を高めることができるでしょう。
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