レガシーシステム更改のメリット

現代のビジネス環境は、急速に変化し続けています。DX化の進展に伴い、企業は新しい技術を活用して競争力を維持し、効率を向上させる必要があります。しかし、一部の企業は現状の業務内容から変えたくないなどの理由により未だにオフコンなどのいわゆるレガシーシステムに依存している傾向にあります。

こうしたレガシーシステムへの依存は、「2025年の崖」問題として浮上しています。特に、長年使用されているERP(Enterprise Resource Planning/基幹系情報システム)、いわゆる「レガシーERP」も同様の課題を抱えており、このままでは法令対応や業務効率の低下といった深刻な問題が発生する可能性があります。

本記事では、オフコン(オフィスコンピューター)などのレガシーシステムから、クラウドERPのような新しいシステムへの切り替え・更改を行うメリットや、レガシーシステムを使い続けるデメリット、ERPへ更改する際のポイントを解説します。

レガシーシステムとは

レガシーシステムとは、古い技術やプラットフォームで構築された情報システムのことを指します。これらのシステムは、企業や組織の業務プロセスに長年にわたって深く組み込まれており、新しい技術に移行することが難しい場合が多いです。近年ではサポートを終了するシステムも増えており、IBM社のAS/400等がそれらに含まれます。

レガシーシステムを利用し続けるデメリット

レガシーシステム更改のメリット

レガシーシステムを利用し続けるデメリットは、大きく次の4つです。

  • メーカーサポートが終了している又は終了が間近である
  • 互換性の問題でビジネスの変化に対応できない
  • 業務全体の最適化の困難さとコストの増大
  • 人材の高齢化と属人化によるリスク

1. メーカーサポートが終了している又は終了が間近である

レガシーシステムの多くは、導入から数十年が経過しており、メーカーからのサポートが終了しているか、終了が間近に迫っています。サポートが終了すると、システムトラブルが発生した際の対応やアップデートが受けられず、問題の解決が困難になります。

特に、セキュリティ関連のアップデートが行われないことは、企業にとって重大なリスクとなります。その結果、外部からの攻撃に対して脆弱になり、情報漏洩や業務停止といった深刻な被害を招く可能性が高まります。

2.互換性の問題でビジネスの変化に対応できない

レガシーシステムは最新技術やシステムとの互換性が乏しく、グローバルな事業や新たな事業に対応することが難しいこともデメリットの一つです。

特に、クラウドやモバイルデバイスとの連携が欠かせない現代のビジネス環境において、業務効率が低下し、企業の競争力や成長が阻害される恐れがあります。その結果、ビジネスの機会を逃し、市場でのポジションが低下するリスクが高まるため、企業が成長し競争力を維持するためにも、迅速な対応が求められます。

3.業務全体の最適化の困難さとコストの増大

レガシーシステムの過剰なカスタマイズは、システム全体を複雑化させ、周辺システムとのデータ連携機能の不足を招きます。これにより、業務全体の最適化が難しくなり、業務プロセスが非効率的になる可能性があります。システムが部分的にしか最適化されていないため、システム全体のパフォーマンスが低下し、生産性にも悪影響を及ぼすことが懸念されます。

さらに、エンジニア不足やシステムの拡張性の制限により、メンテナンスや運用・保守にかかる費用が増大します。企業は継続的に高いコストを負担しながらも、ビジネスの柔軟性や競争力を失うリスクが高まるため、早期のシステム更改が必要です。

4.人材の高齢化と属人化によるリスク

レガシーシステムのメンテナンスを担当するエンジニアの多くは、そのシステムの導入当初から関わっている高齢者が多い傾向があります。こうした人材の高齢化は、将来的な人材不足を引き起こし、業務の属人化が進むリスクを伴います。

属人化が進むと、システムのサイロ化や部分的な最適化が進み、結果としてシステムの維持管理がますます困難になります。これらのリスクを軽減するためには、若手人材の育成やシステムの標準化・共有化を進め、早急にレガシーシステムの更改を検討することが不可欠です。

レガシーシステム更改のメリット

レガシーシステム更改のメリット

レガシーシステムの更改は、企業に次のようなメリットをもたらします。

  • システム運用・保守コストの削減
  • 新しい技術の活用による競争優位性の確保
  • 変化の激しいビジネス環境への柔軟な対応
  • 資産の有効活用と業務効率化
  • 情報セキュリティの強化

1.システム運用・保守コストの削減

古いシステムは、エンジニア不足や技術サポートの終了に伴い、保守やトラブルシューティングのコストが増大する傾向にありますが、新しいシステムへ移行することで、運用コストの最適化を実現し、無駄な支出を抑えることができます。

また、最新のシステムは自動化やクラウド技術を活用することで、手動作業の削減や効率的なリソース管理が可能となります。これにより、日常の運用負担が軽減されるだけでなく、人的リソースをより戦略的な業務に振り向けることができ、企業全体の生産性向上にも寄与します。

2.新しい技術の活用による競争優位性の確保

新技術の導入は市場での競争優位性を確保し、企業価値の向上にもつながります。例えば、クラウドやAIなどの活用により、データ分析や業務自動化が進み、迅速な意思決定が可能になります。

また、クラウドベースのソリューションを導入することで、柔軟なリソース管理やスケーラビリティを向上させることができ、企業の成長に合わせたシステム拡張が容易に行えます。これにより、新たなビジネスチャンスを生み出し、企業の競争力強化に寄与します。

3.変化の激しいビジネス環境への柔軟な対応

企業がレガシーシステムを更改することで、グローバルな事業展開や新たなビジネス機会に柔軟に対応できるようになります。最新のシステムは他国の規制や市場の変化に迅速に対応できるため、グローバル市場での競争力を強化します。

また、新しい技術やシステムとの互換性が向上し、革新的なビジネスモデルの導入も容易となり、企業の持続的な成長性を確保することが可能です。

4.資産の有効活用と業務効率化

システムを更改することで既存の資産を効果的に活用しやすくなり、業務効率の向上が図れます。新しいシステムはインフラやデータの統合を促進し、無駄を省くことでプロセス全体をスムーズに進行させます。

また、業務プロセスの自動化により、作業の効率が大幅に改善され、社員は重要な業務により多くの時間を割けるようになります。

5. 情報セキュリティの強化

レガシーシステムから新しいシステムへ更改することで、最新のセキュリティ技術を導入し、情報の保護を強化することが可能です。例えば、データ暗号化や多要素認証の採用により、不正アクセスのリスクを低減できます。

さらに、法令遵守も容易になるため、顧客や取引先からの信頼を維持し、安全なビジネス運営にもつながります。これにより、企業はサイバー攻撃からの防御力を高めるだけでなく、内部統制の強化も図ることができ、情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができます。

本コラムでは、レガシーシステムを使い続けるデメリットや新システムへの更改を行うメリットを解説しました。次のコラムでは、新システムへ更改する際のポイントを解説します。

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  • 【後編】レガシーシステムからERPへの切り替え~ビジネスの未来を見据えた選択~
    新システムへ更改する際のポイントを解説
    https://dxnavi.com/regacy-system-update-2/
ERPシステム選び9つの確認ポイント西部-2107A-西部電気工業株式会社