【ネットワーク管理や運用コストの削減】3つの改善策をご紹介

クラウドや仮想化のような技術がここ数年では発展し、ネットワークの運用や管理のためのコストは増加の傾向がみられます。悩みとして、コスト削減を目指すにあたり、何から手をつけていいか分からないという方も多いのではないでしょうか。こちらの記事では、ネットワークの運用や管理における課題や現状とともに、コスト削減方法についても具体的に解説していきます。

ネットワークの管理や運用における課題にはどのようなものがあるか

2020年の1月頃から大きく問題になった新型コロナウイルス感染症の影響により、リモートワーク(テレワーク)を導入する企業が急増しました。その通信環境の整備は、多くがクラウドサービスやVPN(Virtual Private Network)の導入によりなされました。しかし、端末数や通信量などの増大により、頻発しているのがネットワークの遅延です。この課題の対策方法として、回線の帯域を広げるという方法や、通信機器を最新のものにするなどがあります。ですが、どれもコストが大きくかかるため、決断をスムーズにできない企業も少なくはありません。
仮想化やクラウドなどといった技術が広まったことによりオフィスのネットワークも複雑性が増大しています。担当者へ掛かる業務負担は、活用する機器類などサービスが増すほど多くなり、障害対応や監視などの業務品質に不都合が生じる場合があります。そうなるとミスが多発し、ミスをカバーするための工数やコストが増加し、工数の増加によるミスが生じるというような負の循環も予想されます。

ネットワークの管理や運用における企業の現状とは

ネットワークの管理や運用における企業の現状

2022年に、株式会社J.D. パワー ジャパンが行った調査によると、「ネットワークのコスト削減」がネットワーク環境の今後の課題であるべきと回答した企業は、大企業では36%、中小・中堅の企業では30%と報告されています。

ネットワーク環境における今後の課題

出典:株式会社J.D. パワー ジャパン「J.D. パワー 2022年法人向けネットワークサービス顧客満足度調査」

また、大企業は41%、中小企業では31%が「ネットワークの広帯域化・高速化」が課題であるという回答でした。こうしてみると、ネットワークの運用や管理に対して悩みを抱えている企業がかなり多いことがわかります。

ネットワークの管理や運用にかかるコストの内訳を見る

ネットワークの管理や運用にかかるコストの内訳

大きく分けて、ネットワークの管理や運用に必要となるコストには「回線費用・機器」「管理費」「人件費」の3つが挙げられます。各コストについての詳細を以下に挙げます。

【回線費用・機器】
・LANを構成する機器/ネットワークを構築する費用/利用料金

(有線LANやPC、無線・ルーター、サーバー、スイッチングハブなどが挙げられる)
・インターネット回線を利用するための料金
・WANを利用するための料金

【人件費】
・情報システム部門の従業員へ支払う給料

・企業や個人へ外部委託した場合に支払う外注費

【管理費】
・ネットワークの監視ツールや、業務システムを利用するための料金

特に高くなりがちなのは、ネットワークを社内にて再構築する際に必要な費用や、ネットワークの維持のためにかかる人件費です。

ネットワークの管理や運用のコスト削減を実現するためには

どのような方法を採用すれば、ネットワーク管理や運用にかかるコストを削減できるのでしょうか?以下に3つ方法を紹介します。

1.外部の運用管理サービスやツールを導入する

ネットワーク管理・運用業務を外部に委託(アウトソース)することにより、業務品質は向上し、コストの削減が可能になります。例として以下のような業務の委託ができます。

  • IT資産を可視化させる
  • ネットワークの監視や診断
  • ヘルプデスクを担う
  • 障害の復旧 など

おすすめなのは、特定領域を補う担当者がいない場合や、慢性的な人材不足に陥っている場合です。また、業務効率化につながる製品として、ネットワーク監視ツールや構成管理ツールなどの導入により生産性が向上し、結果、コストの削減につながります。

2.SDNを導入する

ソフトウェアを使ってネットワークを管理する技術のことをSDN(Software Defined Networking)といいます。具体的にはSDNコントローラを用いて、社内LANやデータセンター内の機器設定を一括で制御します。ネットワーク構成を変えようとする場合、従来であれば、社内のルーターやスイッチングハブ、ファイアウォールなど、機器やソフトウェアの操作や設定をひとつひとつ行う必要がありました。これらの設定を、SDNを使うことによりまとめて行うことができるのです。

3.SD-WANを導入する

WANを一つのソフトウェアで管理する仕組みや技術のことをSD-WAN(Software Defined – Wide Area Network)といいます。LANやデータセンター内のみの仮想化に限られるSDNに対し、SD-WANは、WANにまで仮想化の範囲を拡張することが可能です。これにより、一拠点内の機器だけでなく、一括で複数拠点間のネットワーク機器までも設定や変更ができるようになります。つまり、担当者を各拠点に配置したり、技術者を機器設定のために派遣したりする必要がなくなるため、人件費の削減につながります。

またSD-WANは、物理ネットワークだけでなく、通信負荷を論理ネットワークを用いて分散する仕組みを採用しています。高価なバックアップ用の専用線や閉域網から安価なインターネット回線へ変えることも検討ができるため​、回線コストの削減が見込めます。

SD-WANで削減できるコストとは

SD-WANで削減できるコスト

コスト削減を、SD-WANを導入することにより、どのように実現できるのでしょうか?具体例を挙げながら、以下に分かりやすく解説します。

回線の運用コストについて

自社がバックアップ回線として専用線や閉域網を眠らせている場合、SD-WANを採用してインターネット回線へ切り替えることで、大幅に運用コストの削減ができます。これは、「インターネットブレイクアウト」と呼ばれる、特定の通信のみを別回線で行う仕組みを用いているからです。バックアップ用の回線は、従来ならば、一般的にメインの回線で障害が起こらない限りは使用しませんでした。それに対してメイン回線である物理ネットワークと、負荷分散のために用いる論理ネットワークの2種類を、SD-WANでは使用します。

例えば、メインの物理ネットワークで秘匿性の高い通信を行い、インターネット回線へWeb会議など負荷のかかる通信のみを流し、通信の経路を分散させます。「インターネットブレイク」用として利用する回線を高価な専用線や閉域網からインターネット回線に切り替えることで、負荷分散と大幅なコスト削減を実現させることができます。

人件費

通常であれば、自社のネットワーク構成を一括で変更するときには大きな工数がかかります。SDN等の管理ツールを導入していないなら機器と拠点の数だけ人員と時間が必要ですし、SDNを導入しているなら拠点の数だけ人員と時間が必要です。一方でSD-WANであれば、全拠点・機器の設定を、1つのソフトウェアから一括で行えるため、短い時間で完了できます。

《ネットワーク構成の変更にかかる時間》
・何もしていない場合の考え方:機器数×設定時間×拠点数
・SDNの場合:設定時間×拠点数
・SD-WANの場合:設定時間のみ

企業が機器数や拠点数を多く所有していればしているほど、時間の削減効果が大きくなります。情報システム担当者を各拠点に配置する必要がなくなったり、トラブル発生時にも現地へ行く必要がなくなったりするため、大きく人件費を削減することができます。

ネットワークコストを削減して、効率的な運用を目指しましょう

ネットワーク管理や運用コストの課題と現状さらに削減方法について、この記事では解説しました。ネットワークを含めたITの世界は進歩が続いています。運用はこれからも複雑化していくことと思われます。それに伴って、管理・運用の新しいソリューションが登場してきています。新しい技術「SD-WAN」の活用を、ネットワークコストでお悩みの方はご検討していただければと思います。この記事を是非とも参考にし、自社のネットワーク管理の見直しをするきっかけにしてください。