近年、多くの企業で「オフィスサイネージ」の導入が進んでいます。

ディスプレイにさまざまな情報を発信するこの仕組みは、従来の掲示板や社内イントラに代わる新しい社内コミュニケーションツールとして注目されています。

しかし、「オフィスサイネージの具体的な活用シーンが浮かばず、どんな効果が期待できるのか分からない」、あるいは「機器の選び方や導入のプロセスが分からない」という企業も多いでしょう。

そこで本記事では、オフィスサイネージの基本的な仕組みから導入メリット、設置場所に合わせた活用例、導入の流れまでを詳しく解説します。

これから導入を検討している企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

デジタルサイネージの3つの導入メリット

オフィスサイネージとは

そもそもオフィスサイネージとはどのようなものなのでしょうか。従来、多くの企業で用いられてきた社内掲示板との違いも含めて詳しく解説しましょう。

オフィスサイネージ=オフィスに設置するデジタルサイネージ

オフィスサイネージとはその名の通り、オフィス内に設置するデジタルサイネージ(電子掲示板)のことを指します。

モニターやディスプレイに社内ニュースやお知らせ、経営メッセージなどを映し出すことで、従業員への情報伝達をスムーズに行うことができます。

紙の掲示板やメールに代わる新たな情報共有ツールとして、近年多くの企業でオフィスサイネージの導入が進んでいます。

従来の掲示板との違い

従来、社内の情報伝達は掲示板に文書を貼り出したり、メールや社内イントラなどを活用するのが一般的でした。

しかし、掲示板に貼り出すためには文書を印刷し貼り替える手間がかかるほか、文字が小さく見えにくいといった問題がありました。

メールや社内イントラは最新の情報をリアルタイムで発信できる点では優れていますが、メールを開封したりリンクをクリックする手間があるため重要な通知を見逃してしまうおそれもあります。

オフィスサイネージはプッシュ型で情報を発信するため、重要な情報を繰り返し表示しておくことで社員の目に留まり、効率的な情報提供ができるようになります。

また、静止画だけでなく動画やアニメーションも表示できるため、視覚的に訴求力のある情報発信が可能です。

オフィスサイネージの導入目的・メリット

オフィスサイネージの導入は単なる情報伝達にとどまらず、面的な効果が期待できます。主な4つのメリットについて紹介しましょう。

1.業務効率・生産性の向上

オフィスサイネージに会議予定やKPIの進捗などをリアルタイムに表示することで、社内の情報伝達スピードが格段に向上します。

さらに、工場や倉庫などの現場では社内メールを確認する機会が限られますが、オフィスサイネージなら作業場のモニターに最新情報を常時表示でき、生産ラインの稼働状況や品質管理指標、安全注意喚起などをリアルタイムで共有可能です。

このように、オフィスサイネージはオフィスのためのツールにとどまらず、現場を含む全社的な情報伝達インフラとして機能し、業務効率の最大化に貢献できます。

2.社内コミュニケーションの活性化

オフィスサイネージは、部署や拠点を超えて情報を見える化できるツールです。たとえば、社内ニュースやプロジェクトの進捗に加えて、各部署や社員の紹介、社内イベントの告知などにも活用できます。

こうした情報をリアルタイムに共有することで、社内の動きがわかり他部署との距離も近く感じるようになり、社員同士のコミュニケーション促進や組織全体の一体感醸成にもつながるでしょう。

3. 企業ブランディングの強化

オフィスサイネージは企業ブランディングの強化に対しても大きな効果が見込めるツールです。

たとえば、会社紹介映像や製品PR動画を流すことで、来客に対し自社の世界観やブランドの方向性を直感的に伝えられます。

また、社内では自社の経営理念やビジョンを常時発信することで、社員のモチベーションと帰属意識を高められるでしょう。

社員のエンゲージメント強化は企業ブランディングを内側から支える重要な要素です。社員が自社の理念やビジョンに共感し、日々の業務を通じてその価値を体現できるようになると、その姿勢が顧客や取引先にも自然と伝わり、「この会社と仕事をしたい」と思われる信頼感を生み出します。

4.安全管理・防災対策

オフィスサイネージは緊急時の情報伝達ツールとしても有効です。

災害発生時には避難経路や安全情報を即座に表示でき、社員の安全を守る役割を果たします。

また、工場や倉庫などの現場環境では安全情報をリアルタイムに共有できることが大きな利点です。たとえば、作業エリアでの安全注意喚起や熱中症警戒アラートの共有、設備メンテナンスの予定などを発信することで、現場全体の安全管理を強化し事故やトラブルの防止につなげられます。

このように、オフィスサイネージを非常時の情報インフラや安全管理のためのツールとして位置づける企業も少なくありません。

5.環境への配慮・コスト削減

紙の掲示物をオフィスサイネージに置き換えることで、印刷コストや廃棄物を削減し環境負荷の低減にも貢献します。

また、掲示物の貼り替え作業の手間を削減できるため、総務や広報担当者の業務負担も軽減できるでしょう。

社内の情報伝達の仕組みを効率化しながら、環境にも優しいオフィスを実現できます。

オフィスサイネージの設置場所とコンテンツの一例

オフィスサイネージは設置場所によって目的や発信内容が変わります。特に活用効果の高い代表的な設置エリアと、そこで配信すべきコンテンツ例を紹介します。

エントランス・受付

エントランスや受付は、もっとも来客の目に触れる場所であり企業の第一印象を決める重要なエリアです。

ここでは、会社紹介映像や製品・サービスのPR動画、最新ニュース、採用情報などのコンテンツを流すことで、来訪者に企業のブランドメッセージや信頼感を印象づけられるでしょう。

また、受付番号案内や来客スケジュールを表示すればスムーズな案内にも役立ちます。

通路

社員が日常的に行き来する廊下や通路は、情報を自然に目にしやすい導線であるため、オフィスサイネージの効果的な設置ポイントです。

社内イベントの告知や経営層からのメッセージ、人事・総務からの重要事項などを発信することで、多くの社員に情報を届けられます。

また、社内のさまざまな部署・社員の紹介や顧客からの感謝メッセージなども紹介すれば、帰属意識や社員の一体感の醸成にもつながるでしょう。

会議室前

会議室前にオフィスサイネージを設置し、会議室の使用状況や予約状況をリアルタイムに表示すれば、二重予約の防止やスムーズな会議運営につながります。

また、複数の会議室があるオフィスでは、初めて訪れた来客が分からず迷ってしまうこともあるでしょう。

オフィスサイネージに来客向けの案内を表示しておけば、広いオフィス内でも迷う心配がなく社内動線の最適化にも効果的です。

社員食堂・休憩スペース

社員がリラックスして過ごす食堂や休憩スペースでは、社内コミュニケーションを促進する情報発信の場にもなります。

たとえば、ランチメニューや福利厚生情報はもちろん、社員への誕生日メッセージや社内表彰などを流すことで前向きな気持ちで仕事に取り組みやすくなるでしょう。

また、社内の部署紹介を表示すれば他部署への理解も深まり、それまで交流のなかった社員同士のコミュニケーションも生まれます。

工場・倉庫などの現場エリア

工場や倉庫などの現場では、安全注意喚起や作業手順の再確認事項、熱中症・災害警戒アラート、当日の生産計画や稼働状況などの情報をリアルタイムで表示できます。

メールや紙の掲示物では伝えるのが難しい緊急性の高い情報も即時共有できるため、現場の安全対策としても効果的なツールといえるでしょう。

オフィスサイネージ導入の流れ

オフィスサイネージの導入にあたっては、単にディスプレイを設置するだけでなく目的の明確化から運用までのプロセス設計が重要です。

導入をスムーズに進めるために、5つのステップに分けて紹介します。

1.導入目的の明確化

オフィスサイネージの導入に向けて欠かせないのが、「なぜ導入するのか」を明確にしておくことです。

たとえば、来客向けのブランディング強化を目的としている場合と、社内コミュニケーションの促進を目的としている場合とでは設置場所やコンテンツが変わるためです。

目的を明確にしておけば、後のコンテンツ企画や機器の選定がしやすくなります。

 

2.設置場所の決定と配信コンテンツの企画

導入目的が決まったら、「どの場所に設置するか」と「どんな情報を発信するか」を検討します。

たとえば、ブランディングの強化が目的であれば、エントランスへ設置したうえで会社紹介動画や製品情報の案内、採用情報などのコンテンツが選択肢となるでしょう。

利用シーンに応じた情報設計が導入成功のカギとなります。

3.ハードウェア・システムの選定

次に、オフィスサイネージを構成する機器や配信システムを選びます。

設置スペースによっても最適なディスプレイの大きさは異なり、設置方法も壁掛けやスタンド型などさまざまなパターンがあります。

また、昨今では遠隔管理や自動更新ができるクラウド型のシステムが主流となっており、コンテンツ配信の管理や更新がしやすいかも重要な選定ポイントといえるでしょう。

特にオフィスや工場、倉庫など、複数拠点で運用する場合にはクラウド型のコンテンツ管理システムが理想的です。

4.コンテンツ制作・配信テスト

ハードウェアとシステムを選定したら、実際にオフィスサイネージに表示するコンテンツを制作します。

社内ニュースや動画、画像、テキストなど、情報の種類によって最適なフォーマットを選びましょう。

また、本番運用の前には必ず表示テストを行い、明るさや文字の大きさ、音量などが適切であるかを確認し調整しておきます。

5.運用開始・効果検証

本運用が始まったら、コンテンツを更新する担当者や頻度を決め、社内ルールとして定着させましょう。

また、社員アンケートや顧客からの問い合わせなどをもとに効果を定期的に検証し、より伝わるコンテンツや発信タイミングを改善していくことも重要です。

オフィスサイネージの選定ポイント

オフィスサイネージの導入にあたって特に頭を悩ませるのが、ハードウェアとシステムの選定です。最適な機器・システムを選ぶうえでチェックしておきたい3つのポイントを紹介します。

1.画面サイズ

オフィスサイネージは設置スペースに応じて画面サイズを選ばなければなりません。

たとえば受付や会議室の前、通路などは視聴距離が近いため、40〜60インチ程度の比較的小型のサイネージでも十分対応できるでしょう。

一方、社員食堂や休憩スペース、工場などの広大なエリアでは、100インチ以上の大型ディスプレイでなければ視認性が低下するおそれもあります。

2.コンテンツ管理システムの使いやすさ

オフィスサイネージの運用を考えると、誰でも簡単にコンテンツを編集・更新できるシステムが理想的です。

クラウド型であれば、複数拠点や工場・店舗にも同じ情報を一括配信でき、遠隔操作でリアルタイムに更新できるため有力な選択肢といえるでしょう。

また、担当者が複数人いる場合には、アクセス権限や更新履歴の管理機能があるシステムを選ぶと安心です。

3.保守・サポート体制

オフィスサイネージはある日突然不具合が発生するケースがあり、その原因がハードウェアなのかシステムなのか切り分けが難しいことも珍しくありません。

定期メンテナンスはもちろんですが、トラブル時の遠隔サポートやコンテンツ管理のバックアップなど、サポート体制が充実しているベンダーを選びましょう。

また、社内情報を扱う場合にはセキュリティ対策も重要です。

通信の暗号化やユーザー権限の設定、アクセスログの管理など、情報漏えいリスクを防ぐ仕組みが整っているかを必ず確認しましょう。

オフィスサイネージの導入効果を最大化させるために

オフィスサイネージは、従来の掲示板では実現できなかった情報のリアルタイムな共有を可能にするツールです。

社内ニュースや経営層からのメッセージ、安全情報の共有、さらにはブランディング強化や環境負荷の低減まで、オフィスサイネージの導入によって得られる効果は多岐にわたります。

また、オフィスだけでなく工場や倉庫などの現場においても、リアルタイムな情報伝達や安全対策の手段として活用が進んでいます。

導入目的を明確にしたうえで、適切な設置場所にコンテンツを配信することで、組織全体の生産性と一体感を高める強力な情報インフラとなり得ます。

導入の検討にあたっては設置場所や運用体制をしっかり設計したうえで、設置場所に合ったハードウェアや使いやすいシステム、サポート体制を見極めることが成功のカギです。

継続的な情報更新と効果検証を行いながら、オフィスサイネージの導入効果を最大化させていきましょう。

【デジタルサイネージガイド #01】デジタルサイネージ3つの導入メリット