ネットワークエンジニア不足の現状と課題、企業にとっての解決策とは?

社内のパソコンやOA機器をつなぎ、データ共有やインターネット接続を行う際には、ネットワークを構築する必要があります。安全でスムーズなネットワーク構築を実現するためにも、ネットワークやセキュリティリスクに関する基本的な知識を身につけた上で、手順に沿って実施することが重要です。

この記事では、ネットワーク構築の基礎やVPNとの違い、企業向けの具体的な構築手順、行う際のポイントを、初心者の方でも分かりやすく解説します。

ネットワーク構築とは?基礎知識も確認

ネットワーク構築とは、複数のコンピュータやプリンター、サーバーなどの機器を有線・無線でつなぎ、情報の共有や通信を可能にするための基盤を整える作業です。

自宅の場合は、主にWi-Fiルーターを用いた無線LAN構築が一般的ですが、企業向けのネットワークでは、複数の部署や拠点をまたいで情報を安全にやりとりする必要があるため、用途に応じて適切に設計・構築することが求められます。

ここでは、ネットワーク構築を進める前に押さえておきたい基本的な知識について解説します。

「パブリックネットワーク」と「プライベートネットワーク」について

ネットワークエンジニア不足が課題視される昨今ですが、そもそも企業におけるネットワークエンジニアの役割はどのようなものなのでしょうか。

ここでは、ネットワークエンジニアの概要やシステムエンジニアとの違い、ネットワークエンジニアが担う保守・運用業務について詳しく解説します。

プライベートネットワークの種類

プライベートネットワークは、用途や規模に応じて主に「LAN」と「WAN」の2つの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解しておくことで、構築すべきネットワークの方向性が見えてくるでしょう。

LAN(Local Area Network)

LANは、オフィス内やフロア内など比較的狭い範囲で使われるネットワークです。接続方式には、ハブやLANケーブル、ルーターなどを用いて機器同士をつなぐ有線LANと、各端末がアクセスポイント(親機)へ無線で接続する無線LANがあり、これらを組み合わせて使用することも可能です。

高速かつ安定した通信が可能で、ファイル共有やプリンター接続などに適しています。

WAN(Wide Area Network)

WANは、地理的に離れた拠点同士をつなぐためのネットワークです。構築方法には、物理的な専用線を使用する方法と、VPN(仮想専用線)を用いる方法があります。

物理的な専用線は高い安定性とセキュリティを備えていますが、その分コストがかかる点が課題です。一方で、VPNはソフトウェアを使って仮想的な専用線を構成できるため、比較的低コストで導入できます。

なお、VPNには後述するいくつかの種類があり、特に「インターネットVPN」や「エントリーVPN」はコストを抑えられる反面、安全に運用するには暗号化などのセキュリティ対策が必要です。

ネットワーク構築のメリット

ネットワークを構築することで、社内の情報共有がスムーズになり、業務の効率化やセキュリティの向上など、さまざまなメリットがあります。

具体的には、データや情報をリアルタイムで共有できることで作業時間が短縮され、スムーズなコミュニケーションが可能になります。また、VPNやアクセス制限などの導入により、セキュリティ対策を強化することも可能です。

企業のネットワーク構築は、リモートワークや災害時の業務継続にも役立ち、柔軟な働き方の実現にもつながります。

ネットワーク構築と「VPN構築」との違い

ネットワークエンジニアが不足する理由の一つとして、ITインフラの高度化による需要の増加が挙げられます。クラウドサービスや5G、IoT、ゼロトラストセキュリティなどの技術は、政府の対策を受けて急速に進化しており、企業のネットワーク環境はこれまで以上に複雑になっています。

さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、ネットワークの設計・管理を担う人材の需要が急増しています。

また、サイバー攻撃がますます多様化しているため、企業はセキュリティ強化を迫られており、対応できるネットワークエンジニアの重要性は一層高まっています。

VPN構築の種類

VPNには主に4つの種類があり、企業の規模や目的に応じて適切な方式を選択する必要があります。

インターネットVPN

エントリーVPNは、光回線やADSLといったブロードバンド回線を利用し、インターネットを介さずに閉じた通信網へ接続するタイプのVPNサービスです。

インターネットVPNよりもセキュリティ性能が高く、IP-VPNほどのコストはかからない中間的な方式であるため、中規模企業にとってコストと安全性のバランスがとれた選択肢といえるでしょう。

IP-VPN

IP-VPNは通信事業者が提供する閉域網を使用する方法で、高いセキュリティと通信の安定性を確保できます。コストは高めですが、大規模企業やセキュリティ重視の業務に適しています。

広域イーサネット

広域イーサネットとは、複数の拠点にあるLAN同士を、イーサネット(機器をネットワークに有線接続するための通信規格)技術で結びつける広域ネットワークのことです。

通信事業者が提供する閉域網を使い、L2(レイヤ2)スイッチを介してVPN接続を行います。L2スイッチは、LAN内で複数の機器をケーブルで接続し、ネットワークの基本単位を構成する装置です。

イーサネット技術を用いることで、高速かつ安定した通信が可能となります。IP-VPN同様、構築費用は高い傾向がありますが、拠点が多い企業や大容量データのやり取りがある環境に適しています。

ネットワーク構築に必要なもの

ネットワーク構築を行う際には、安定した通信環境と安全性を確保するための機器や設備が必要です。

ネットワーク構築に必要な主な機器として、以下が挙げられます。

  • LANケーブル:機器同士をつなぎ、データをやり取りするためのケーブル
  • ハブ(スイッチングハブ):複数の機器を接続し、データ通信を中継する装置
  • ルーター:LANとインターネットをつなぎ、データの送信先を振り分ける機器
  • アクセスポイント:Wi-Fi接続を可能にする無線ネットワーク用の機器
  • サーバー:データの保存や共有を行うための機器
  • セキュリティ機器:ネットワークを不正アクセスなどから保護する機器

これらを適切に組み合わせて導入することで、効率的で安全なネットワーク環境を構築することが可能です。

ネットワーク構築の流れ(社内ネットワークの場合)

社内ネットワークの構築では、従業員同士の情報共有やデータの安全な管理が求められるため、慎重に進める必要があります。

ここでは、社内ネットワーク構築方法の基本的な流れを解説します。

1. 現状調査と要件の洗い出し

ネットワーク構築における最初のステップは、現状のインフラ環境を正確に把握し、求められる機能や条件を整理することです。通信速度やセキュリティレベル、将来的な拡張性といった要件を明確にする必要があります。

具体的には、使用中のハードウェアやソフトウェア、ネットワーク機器、接続状況、契約中のサービスを調査します。また、社員数や拠点の数、業務で使うアプリケーションの種類や規模も考慮し、ネットワークに必要な性能や構成を見極めることが重要です。

2. ネットワーク利用方針の策定

次に行うのが、調査結果に基づくネットワーク利用方針の策定です。ネットワークの用途やインターネット接続範囲、セキュリティポリシーなど、運用に関わる基本的な方針を決定します。

例えば、セキュリティを強化するためにVPNを導入するか、無線LANの導入を検討するか、あるいは外部アクセスを制限するためにゲストネットワークを設けるかなど、運用の方向性を定めます。方針を策定することで、ネットワーク設計と構築の具体的な計画が立てやすくなるでしょう。

3. ネットワーク構成の設計

ネットワーク利用方針が定まったら、ネットワーク設計を行います。使用する機器(ルーター、スイッチ、ファイアウォールなど)、ケーブル配線、無線配置、拠点間接続(VPNの導入可否)などを検討・選定しましょう。

さらに、通信の安定性を確保するためには、障害時のバックアップ回線や災害時の対策も考慮することが大切です。

設計段階で最終的な予算とスケジュールを算出し、実行に向けた詳細な計画を整えます。

4. 構築作業の実施

ネットワーク設計が完了したら、構築作業に進みます。サーバーの設置や、ルーター、スイッチ、アクセスポイントなどの機器を配線し、必要な設定を行います。

また、IPアドレスの設定やネットワーク内の各端末の接続、セキュリティ対策としてのファイアウォールの設定、VPNなどの暗号化通信設定も不可欠です。

5. 運用管理とトラブル対応の整備

ネットワークは一度作っただけで完了というわけではなく、運用中にさまざまなトラブルやセキュリティ上のリスクに直面する可能性があります。そのため、あらかじめ運用管理の方針を定め、日常的に監視できる体制を整えておくことが欠かせません。

また、万が一トラブルが発生した場合に備えて、対応手順やバックアップの体制を明確にしておくことが重要です。障害発生時には迅速な対応が求められるため、トラブル対応用のマニュアルや診断ツールなども準備しておくと安心でしょう。

加えて、ネットワークの性能を維持・向上させ、セキュリティレベルを保つためにも、定期的な点検や機器・ソフトウェアのアップデートを実施し、常に最適な状態を保つことが求められます。

ネットワーク構築を行う際のポイント

ネットワーク構築は、業務の効率化やセキュリティの確保に直結する重要な作業であるため、適切な設計と運用を行うことが重要です。ここでは、ネットワーク構築を行う際のポイントをご紹介します。

自社の規模や用途に合ったネットワーク設計を行う

ネットワーク設計では、自社の規模や利用目的に応じた構成を考えることが重要です。小規模な企業であれば、シンプルなネットワーク構成でも対応できるケースもありますが、大規模な組織や複数拠点を持つ場合は、より高度で柔軟な設計が求められます。

例えば、拠点間を結ぶ広域ネットワークの構築や、セキュリティ対策としてVPNを導入するなど、目的に応じた機器や仕組みの導入が必要になるでしょう。また、将来の事業拡大を見据えて、柔軟に拡張できるネットワークを設計することも欠かせません。

セキュリティリスクを見据えた監視体制を整える

ネットワークは外部からの攻撃や不正アクセスによって機密情報が漏洩するリスクに常にさらされているため、監視体制を整えて安全性を確保することが重要です。

具体的には、ファイアウォールやIDS(不正侵入検知システム)・IPS(不正侵入防御システム)などのセキュリティ機器の導入を検討し、ネットワークをリアルタイムで監視する体制を構築しましょう。

そのほか、VPNや通信内容の暗号化によって情報の安全性を高め、定期的にセキュリティ診断を実施することも効果的です。

セキュリティリスクを見据えた監視体制を整える

ネットワークは外部からの攻撃や不正アクセスによって機密情報が漏洩するリスクに常にさらされているため、監視体制を整えて安全性を確保することが重要です。

具体的には、ファイアウォールやIDS(不正侵入検知システム)・IPS(不正侵入防御システム)などのセキュリティ機器の導入を検討し、ネットワークをリアルタイムで監視する体制を構築しましょう。

そのほか、VPNや通信内容の暗号化によって情報の安全性を高め、定期的にセキュリティ診断を実施することも効果的です。

必要に応じて、専門的な監視・運用・保守代行サービスを活用する

社内にネットワーク構築や運用に十分なリソースがない場合は、外部の専門業者による監視・運用サービスの導入を検討すると良いでしょう。安定したネットワーク運用を重視する企業にとっては、外部委託することでリスクと業務負担を軽減できます。

例えば、24時間体制でのネットワーク監視サービスの場合、トラブルが発生した際の迅速な対応が可能となるため、安心して運用を任せられる点が大きなメリットです。

特に、大規模なネットワークや多拠点企業では、外部サービスを利用することが効果的です。

まとめ

ネットワーク構築は、導入する環境や目的に応じて必要な機器や設定が異なります。可用性やパフォーマンスだけでなく、セキュリティ面での配慮も重要です。

自社内にネットワーク構築に関する人材が不足している場合や、安定した運用が求められる際には、外部サービスを活用することで運用負担とリスクを軽減することができます。

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