
LEDビジョンは多彩な映像演出が可能で広告効果も高い一方で、いざ導入を検討すると「どの製品を選べばいいのか」「価格やスペックの違いが分からない」と迷うケースが少なくありません。難解な専門用語も多く、導入経験がない企業にとっては判断基準が不明瞭になりがちです。
そこで本記事では、LEDビジョンを初めて導入する際に押さえておきたい選び方のポイントを整理し、失敗しないための考え方をわかりやすく解説します。
LEDビジョンの選び方で重要な3つの軸
LEDビジョンの選定にあたっては、下記の3つの軸を押さえておく必要があります。
1.視認距離
LEDビジョンは製品によって素子の間隔(ピッチ数)が異なり、どれくらいの距離から見るのかによって適切なピッチ数が決まります。ピッチ数は小さいほど素子の間隔が狭く、より高精細な画質を実現できます。
そのため、視聴距離が短いほど小さいピッチ数が必要であるのに対し、屋外などで視聴距離が遠い場合にはピッチ数は大きくても問題ありません。まずはおおよその視聴距離を決め、そこに合わせて必要なピッチ数を求めるのがセオリーです。
2.設置環境
屋内外や日照条件、反射、風雨・粉塵・温度などの環境要件をもとに、LEDビジョンに求められる輝度と防水・防塵等級などを決めます。
強い紫外線に晒される屋外設置用のLEDビジョンは、輝度が低いと視認性が低下してしまいます。そのため、屋外用は屋内用の製品に比べて高い輝度が求められるほか、防水・防塵に対応していることも必須条件といえるでしょう。
また、壁面・自立・吊りなどの場所に応じてLEDビジョンを設置できるかも重要な選び方の基準です。
3.運用設計
LEDビジョンの導入後に誰がどうやってコンテンツを作り、どのように配信・更新していくかも事前に設計しておかなければなりません。
たとえば、コンテンツ制作にあたってはLEDビジョンの解像度を考慮しなければならないほか、遠隔でコンテンツを配信・更新していくためにはスケジュール配信機能や遠隔監視の可否、クラウドCMSの運用体制なども考慮しなければなりません。
これらを決めないままLEDビジョンを導入してしまうと、「画が粗い」、「映すコンテンツがない」あるいは「更新が止まる」といった運用トラブルが起きがちです。
視認距離で決まる「ピッチ数」早見表

LEDビジョンはピッチ数が小さいほど高精細ですが、その分価格も高額になりやすい傾向があります。
高精細にこだわるあまり、視聴距離を考慮せずに高精細なLEDビジョンを選んでしまうとコストが無駄になるおそれも。まずは「近距離なら細かいピッチ(高精細)、遠距離なら大きなピッチ」という原則を押さえておきましょう。
視聴距離に応じて、目安となるピッチ数を以下の表にまとめました。
| 視認距離の目安 | 推奨ピッチ数 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 1~2m | 1.2mm~1.5mm | 展示ブース、受付 |
| 2~4m | 1.5mm~4.8mm | 店頭サイネージ、屋内イベントの案内板 |
| 3~6m | 3.0mm~6.9mm | 商業施設、屋外ステージ |
| 5~10m | 3.9mm~10.0mm | 屋外広告(ビル外壁) |
| 10m以上 | 10.0mm~ | 屋外広告(ロードサイド看板)、スタジアム |
ピッチ数の算出にあたっては、視聴距離1mあたり1.0〜1.2mmが大まかな目安となります。
たとえば屋外広告やスタジアム用の大型LEDビジョンを選ぶ際には、もっとも多くの人が見る距離を基準にしておくと選びやすいでしょう。
設置環境に応じた輝度・IP等級・設置方式
LEDビジョンはどこに設置するかによって必要な性能が大きく変わります。スペックだけを見て決めてしまうと「昼間は暗くて見えない」、「雨に濡れて壊れる」、「メンテナンスができない」といったトラブルを招くおそれがあるため注意しましょう。
導入前にチェックしておきたいポイントは以下の通りです。
輝度(明るさ)の目安
LEDビジョンは設置場所に応じて輝度を考慮しておく必要があります。特に屋外では強い日差しに晒されるため、視認性を確保するためにも高い輝度のLEDビジョンが必須です。
一方で、映画館などの明るさを抑えた空間では低めの輝度でも良好な視認性を確保できます。
設置環境に応じた輝度の目安は以下の通りです。
- 屋内用:600〜1,500cd/㎡
- 屋外用:5,000cd/㎡以上
輝度が高すぎると消費電力が大きくなり、目への負担も増えるため、自動調光機能があると安心です。
IP等級(防水・防塵性能)の目安
屋内設置用のLEDビジョンは風雨に晒される心配がないため、基本的に高い防水性能は不要です。ただし、飲食店や湿度が高い場所へ設置する場合には、IP43以上の防水性能を満たした製品が理想的といえるでしょう。
屋外設置では雨や粉塵への対策が必須であるため、一般的にはIP65以上が推奨されます。
- 屋内設置:飲食店や湿度の高い場所ではIP43程度
- 屋外設置:IP65以上が推奨
設置方式
LEDビジョンにはさまざまな設置方式があり、設置場所や設置環境に応じて検討しなければなりません。
小型のLEDビジョンであれば自立スタンド型にも対応でき簡単に設置できますが、屋外設置用の大型ビジョンでは安全を確保するための構造設計が必須で施工にも多くの手間がかかります。
| 設置方式 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 壁面取り付け | 安定感があり、大型のLEDビジョンも設置可能 設置にあたっては構造設計や大規模な施工が必要 | 建物外壁・商業施設の内壁など |
| 自立スタンド型 | LEDビジョン本体の移動や解体が容易 | イベント会場・仮設用 |
| 吊り下げ型 | 大型のLEDビジョンも設置可能 設置にあたっては構造設計や大規模な施工が必要 | ステージ演出など |
運用設計のポイント
LEDビジョンを導入しただけで終わらせないために重要なのが日々の運用設計です。どんなに高性能な機材でも、運用やコンテンツの更新フローが適切でなければ効果を発揮できません。特に押さえておきたいのか以下の2点です。
コンテンツの更新手段
LEDビジョンに映すコンテンツをどう更新するかによって、運用コストは大きく変化します。
大まかに分けると、USBメモリやSDカードといった物理メディアを利用する手動更新、クラウドからオンラインでコンテンツを配信する自動更新があり、それぞれ以下のような違いがあります。
| 手段 | おすすめの用途 | 注意点 |
|---|---|---|
| 手動更新(USBメモリ・SDカードなど) | イベントなど単発での利用 | 頻繁に更新する運用には不向き |
| 自動更新(クラウド配信) | 日替わり・週替りなどで頻繁にコンテンツを更新したい 複数拠点を一括で管理したい | コンテンツ配信システムの管理が必要 |
なお、クラウド配信型の場合、スケジュール配信の設定はもちろん緊急時には即座に情報を差し替えられるメリットもあります。
リモート監視の可否
LEDビジョン本体に何らかの不具合が生じた際、リモート監視に対応していればスピーディーな障害対応が可能です。
一口にLEDビジョンの不具合といっても、LED素子の一部が球切れを起こしているケースもあれば、電源ユニットやメディアプレイヤーなどのハードウェアに異常が生じている可能性も考えられます。
また、ハードウェア側の問題ではなく、コンテンツのデータが破損しているケースも少なくありません。
リモート監視で基本的なトラブルシューティングができれば、担当者を現地まで派遣し診断する工数が削減され、ダウンタイムも最小限に抑えられるでしょう。
LEDビジョン導入の基本的な流れと失敗しないためのチェックリスト

LEDビジョンの導入にあたっては、単に本体を購入して設置するだけではなく、いくつかのプロセスを順番に踏むことでトラブルを防ぎやすくなります。大まかな流れを押さえつつ、最後にチェックリストで抜け漏れを確認しておきましょう。
導入までの流れ
LEDビジョンの導入から運用までの流れは以下の通りです。
1. 現地調査
はじめに、設置場所に応じて最適なLEDビジョンを選定するために現地調査を行います。
調査の内容は多岐にわたりますが、主に以下の項目が対象となります。
- 設置場所の測定(視認距離の算出)
- 環境条件を確認(明るさ、直射日光、湿度、粉塵、風雨など)
- 電源容量・配線経路の確認
- 建築強度、耐荷重、安全面のチェック
2. 設計
現地調査の結果をもとに、適切なピッチ数や解像度、サイズを決定します。
また、それに応じて壁面取り付けや吊り下げなどの最適な設置方式を検討し、構造図や電気配線計画も作成しておきます。
特に大型のLEDビジョンを設置する際には、景観法をはじめとした法律を遵守しなければならないため、必要に応じて行政への申請・調整も行います。
3. 見積もり・契約
LEDビジョンの詳細な仕様と設計が完了したら、本体や制御機器、架台、電源工事・ネットワーク工事なども含めた見積もり額を算出します。
この際、導入費用に加え、保守契約や消耗部品などを含めたランニングコストも含めて試算しておくと安心です。
なお、LEDビジョンは本体の購入以外にもレンタルやリースといった方法もあるため、これらの選択肢を比較し利用期間や利用頻度に合ったプランを検討してみましょう。
4. 施工・テスト稼働
設計通りに架台を組み立て、本体を設置します。
特に大型のLEDビジョンの施工にあたっては、クレーンでの搬入や高所作業など専門技術が必要なケースも多いため、実績が豊富で信頼性の高い施工業者を選定することが重要です。
一連の施工が完了したら、実際にコンテンツを表示させ、画質や輝度、色の再現性に問題がないかを確認しておきましょう。
5. 運用教育
LEDビジョンを運用していくための人材教育・育成も欠かせません。
定期点検の頻度や保守窓口の連絡体制を整備しておくことはもちろん、自社でコンテンツを配信していく場合には、専用ソフトやCMSを使ったコンテンツ更新方法を担当者にレクチャーしておきましょう。
また、不具合が生じた際に迅速に対応できるよう、再起動などの基本的なトラブルシューティングもマニュアル化しておくと安心です。
LEDビジョンの導入前に確認しておきたい最終チェックリスト
ここまで解説してきた内容をもとに、導入前の最終チェックリストを作成しました。
以下の9ポイントが網羅できているかを確認し、漏れのないよう準備を進めましょう。
- 視認距離に合わせた画素ピッチを選んでいるか?
- 設置環境に適した輝度を確保しているか?
- 設置環境に合わせたIP等級(防水・防塵)を満たしているか?
- 必要な電源容量と配線経路を確保しているか?
- 安全設計が考慮されているか?
- コンテンツ更新のスケジュール機能が運用に合っているか?
- ランニングコストを試算しているか?
- 故障時に対応できる保守契約・サポート体制があるか?
- 運用担当者の育成ができているか?
LEDビジョンの選び方を用途別にワンポイント解説

LEDビジョンの用途は多岐にわたりますが、今回は特に代表的な例を挙げながら選び方のワンポイントアドバイスをご紹介しましょう。
商業施設
商業施設の館内やショールームなどに設置する掲示板、小型のデジタルサイネージは、ユーザーが至近距離で見るため1.5〜2.0mm程度の細かいピッチが理想的です。
さらに周囲の照明環境に応じて自動調光機能を活用すれば、常に最適な見え方を維持できるでしょう。
屋外広告
ロードサイドに設置する大型のデジタルサイネージや、屋外イベントで使用する大型のLEDビジョンは、直射日光下でも視認できるよう5,000cd/㎡以上の高輝度が必須です。
加えて屋外の過酷な環境下でも耐えられるよう、IP65クラスの防水・防塵性能を備えておけば長期的な安定稼働が期待できるでしょう。
イベントステージ・展示会
ライブや展示会など演出中心の場では、広い視野角を確保できるLEDビジョンが理想的です。視野角の広いパネルは観客席のどこから見ても均一な映像を届けられ、演出効果を高められます。
また、イベント中に事故や災害など不測の事態に陥った場合に備え、クラウド経由で即座にコンテンツを配信・更新できる仕様の製品が理想的です。
LEDビジョンの選び方でよくある質問
最後に、LEDビジョンの選び方で多く寄せられる質問とその回答をご紹介します。
Q1. LEDビジョンの電気代はどれくらいかかる?
A1. 180インチ程度の屋外用LEDビジョンの場合、ひと月あたり4万円以上の電気代がかかることもあります。本体サイズや輝度、使用環境、機器の仕様によって電力消費量は大きく変わります。
Q2. レンタルと購入、どちらがお得ですか?
A2. 一般的に短期のイベントや不定期利用ならレンタル、常設や長期利用が前提であれば購入やリースが有利といわれています。利用頻度や目的、設置環境に応じて判断しましょう。
Q3. 故障したときはどう対応する?
A3. 専門業者へ現地まで来てもらい、症状を確認したうえで必要に応じて修理の手続きを行います。保守契約の有無や内容によって修理費や日数に大きな差が生じます。
Q4. 設置に行政の許可は必要?
A4. 屋外や道路に面した場所では景観条例に基づいた申請や道路使用許可が必要な場合があります。
LEDビジョンの選び方で重要なのは「距離・環境・運用」の3軸

LEDビジョンを導入する際に迷いやすいのは、メーカーごとに異なる膨大なスペック表や価格の違いです。しかし本質はシンプルで、視認距離・設置環境・運用設計の3つを順番に確認すれば、最適な選択肢が自然と見えてきます。
- 視認距離に合わせて画素ピッチを選ぶ
- 設置場所の明るさや屋内外の条件に応じて輝度・IP等級を決める
- 運用体制を見据えてコンテンツ更新方法やCMSを整える
上記を基本としたうえで、初期費用だけでなく電気代・保守を含めた総コストで比較すると導入の失敗は避けられるでしょう。
LEDビジョンは長期的な集客を支えるための大きな投資です。まずは導入目的と利用シーンを明確にしたうえで、複数の業者に相談しながら比較検討してみましょう。
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