優秀な人材の獲得や生産性の向上に向けて、働き方改革は今や喫緊の課題となっています。完全なフルリモートワークの導入はかえって弊害がもたらされる懸念もありますが、オフィスワークとテレワークの併用となるハイブリッドワークは導入ハードルも低く、多くの企業が採用を進めています。

具体的に、ハイブリッドワークの導入でどのような効果が期待できるのでしょうか。今回はハイブリッドワークの導入効果を、実際の事例から確認していきましょう。

そもそもハイブリッドワークは、従来型のオフィスワークと新しい働き方であるテレワーク(リモートワーク)の両方を併用することで、柔軟性の高い働き方を実現する方法です。

テレワークの導入効果には多くの企業がメリットを感じている一方、オフィスでなければ取り組みにくい業務もあるため、フルリモートが最適解であるとは限りません。そこで考案されたのがハイブリッドワークという働き方で、テレワークを認めつつも、必要に応じてオフィスワークも適宜実施するという一挙両得の仕組みづくりが始まっています。

ハイブリッドワークはフルリモートワークよりも導入が容易であることから、すでに国内での実施企業も増加しています。バルコ株式会社が実施した2020年12月の「ハイブリッドワークとオンラインミーティングに関する調査」によると、当時の時点でハイブリッドワークを導入している企業は実に85%以上に達していました。

参考:オフィスのミカタ「コロナ禍で働き方が変化 85%以上の企業が「ハイブリッドワーク」を実施 」
https://officenomikata.jp/news/11895/

一見するとオフィスでしか取り組めない業務も、環境を整えることでテレワークでの対応が可能です。あるいはテレワークでもオフィスでもどっちでも対応できる業務はテレワーク化を進めることで、大幅な働き方改革の推進が各企業で行われました。

ハイブリッドワーク導入のメリット

ハイブリッドワークの導入は、単に働き方へ多様性をもたらせるだけでなく、多くの導入メリットが期待できます。主なメリットとしては、以下の3つが挙げられます。

業務の効率化につながる

ハイブリッドワークは、業務の効率化へ大きく貢献します。リモート環境下では自宅などの個室スペースで業務に対応するため、余計なコミュニケーションを回避しながら集中力を発揮することができます。

また、ハイブリッドワークの実施過程においては業務のデジタル化が進むため、余計なアナログ業務が削除され、生産性を高められます。余計な作業を最小限に、必要な業務へ最大限取り組める企業へと成長するきっかけが作れます。

コスト削減効果が期待できる

2つ目のメリットは、コスト削減効果です。ハイブリッドワークを実施する場合、完全オフィスワークと比べて業務時間中のオフィス内人口は抑えられるため、収容量の少ないオフィスに引っ越しても業務遂行が可能です。高騰するオフィス賃貸料金を大幅に抑えられるため、高いコストパフォーマンスを発揮する企業へと刷新ができます。

また、複合機やプリンターのニーズも以前ほどではなくなるため、紙代やリース料金を抑えるのにも役立ってくれます。

優秀な人材の定着率を高められる

ハイブリッドワークは業務上のメリットだけでなく、従業員のモチベーション向上にも役立ちます。ワークライフバランスの追求が個人レベルで進む中、自分の生活や好みに合わせた働き方を選べるようになることで、高いパフォーマンスを期待できます。

また、会社に利益をもたらせる優秀な人材ほど裁量を求めるようになるため、自分の必要に合わせて働き方を切り替えられるハイブリッドワークは魅力的な仕組みとなります。窮屈な思いを抱えることなく働けるので、社員の定着率を高め、人材不足による損失を回避できます。

ハイブリッドワークの実施に伴う課題

ハイブリッドワークの実践には多くのメリットが期待される一方、懸念すべき課題もあります。どのような問題を解消しなければいけないのか、確認しておきましょう。

従業員の管理が複雑化しやすい

まず、ハイブリッドワークの実施においてはオフィスワークとテレワークの両立のため、社員を適切に管理できる仕組みづくりから始めなければなりません。これまでオフィスワーク一本だった企業では、勤怠管理や人事評価の仕組みを刷新する必要があるため、現場の仕組みでは対応することはできません。

オンラインで出勤状況を管理したり、対面でなくとも適切な評価を下せる新しい評価基準の策定など、多くの取り組みが求められます。

メンバー同士のコミュニケーションが難しくなる

仕組みづくりだけでなく、ハイブリッドワークは現場で働く社員にも悪影響を及ぼす可能性があります。例えば非対面でのコミュニケーションが主流となることで、情報共有やお互いのサポートに支障をきたす可能性が挙げられます。

リアルタイムで進捗管理ができていないと、独自の判断で業務を進めたり、修正が行われないままプロジェクトが進められてしまったりと、多くの悪影響を及ぼす可能性があります。オンラインでも積極的にコミュニケーションをとり、いつでも相談したりサポートができたりする現場づくりが求められます。

設備投資が必要

上記のような問題を解消するためには、相応の設備投資も必要です。インターネット環境を整備したり、オンラインツールを導入したり、貸出用のラップトップを購入したりと、出費が大きくなるのは免れません。

テレワークが普及している企業に大企業が集中しているのは、このような設備投資が十分に行える余力があることも背景にあると考えられます。十分な余力のない中小企業で抜本的なハイブリッドワークを導入するためには、時間をかけて取り組まなければなりません。

ハイブリッドワークの導入事例

それでは、具体的に各企業はどのようにハイブリッドワークを推進しているのでしょうか。代表的な3つの事例を確認し、自社のハイブリッドワーク導入に役立てていきましょう。

ネットワンシステムズ

情報インフラ構築やITコンサルティングを扱うネットワンシステムズは、デジタルとリアルを融合したハイブリッドワークを実現する取り組みを進めています。ICTの積極活用をコンセプトとしている同社では、2020年10月より就業規則を改訂し、全社員を原則「テレワーク主体」の勤務形態に変更することで、オフィス出社を申告制という運用方法に切り替えています。

時間や場所にとらわれない働き方を促進すべく、「勤務地変更制度」を2021年4月に制定することで、遠隔拠点からでも勤務が可能な組織へとシフトしつつあります。多様な働き方を認めることで、新しい人事制度改革とオフィス構想の実現に動いています。

参考:日本経済新聞「ネットワンシステムズ、デジタルとリアルを融合したハイブリッドワークを実現する取り組みを開始」https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP618704_Q1A930C2000000/

福井県

ハイブリッドワークの導入は、行政でもスタートしています。福井県では仕事と生活のバランスを両立できる「分散型社会」のインフラ形成に向けて、2019年4月に就任した杉本県知事の指揮のもと、テレワーク導入をはじめとするDX推進が行われています。

このプロジェクトは"Life style shift"名付けられて若手職員を中心に推進されており、クラウドサービスを採用した会議のペーパーレス化やリモート参加など、ICTを積極活用した業務改革を実現してきました。

庁外へ持ち出せない秘匿性の高い情報を取り扱えるセキュリティ対策もテレワーク時には徹底するなど、高いレベルでハイブリッドワークの実現と運用を進めていることが高く評価されています。

参考: Microsoft 365「Microsoft Customer Story-知事が率先してテレワーク。福井県の先進的な働き方改革を支える」
https://customers.microsoft.com/ja-jp/story/1345262408868338847-fukui-prefecture-government-microsoft-jp-japan

あおぞら銀行

対面業務が大半を占めると思われる銀行業界でも、ハイブリッドワークの実践は進んでいます。あおぞら銀行ではクラウド形式のPBXを導入することで、在宅勤務からでも電話応対を可能にするなど、新しい営業やバックオフィス業務の形を実現しています。

どんなデバイスからでも会社の電話として応対ができるため、オフィスのPBXにこだわる必要はありません。出張先などでも同様の業務遂行が可能なので、一拠点にとらわれない働き方を促進してきました。

参考:INTERNET Watch「シスコシステムズがコラボレーション事業戦略を発表、新機能や組織間の連携を加速する事例など紹介」https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1367086.html

ハイブリッドワーク導入のポイント

ハイブリッドワークの導入を成功に導くためには、実際の成功事例をもとにしたポイントを押さえることが重要です。上記の事例を参考にしながら、成功のヒントをピックアップしてみましょう。

徹底したテレワーク環境の整備を進める

ハイブリッドワークの導入において重要なのが、テレワーク環境の整備です。これまでオフィスワークが主体だった組織の場合、オフィス環境はそこまで大きな改革に迫られることはありません。どれだけ無駄を削減できるかが決め手になる一方、テレワークの推進には設備投資が必要になるため、ある程度の予算を設ける必要が出てきます。

中途半端なテレワーク環境の整備は、かえって業務効率を悪化させてしまう可能性もあるなど、テレワークのポテンシャルが発揮できないケースもあり得ます。ハイブリッドワークを実践する場合、テレワーク環境の整備には力を入れて、結果につながる設備を実現しましょう。

フリーアドレス導入などオフィス環境を再編する

テレワーク環境が整った後は、オフィス環境の再編です。オフィス出社を申告制にしたり、クラウドサービスの導入でより効率的な管理ができる業務体制へと移行するなど、テレワークありきの仕組みづくりを進めましょう。

クラウドサービスを採用すれば、テレワークでもオフィスワークでも同様のパフォーマンスを発揮できるシステムを実装可能です。出社の有無に関わらず同じ働き方ができる環境づくりに力を入れましょう。

高度なセキュリティ対策を実施する

テレワークの導入の際には、高度なセキュリティ対策も欠かせません。オフィスの外で仕事ができる仕組みを採用すると、ラップトップの紛失や情報漏洩などのリスクも高まるため、従来とは異なる規定やセキュリティ対策が必要です。安全な通信環境やサービスの利用を普及し、社外へ仕事を持ち出す際のルール改定や研修の実施など、徹底した対策を行いましょう。

おわりに

ハイブリッドワークは働き方改革を効果的に進められるだけでなく、生産性向上やコスト削減効果も高いため、多くの企業が採用を始めています。一方でセキュリティリスクの高まりや、設備投資が必要になることから、今ひとつ推進に踏み切れないという企業も少なくありません。

必ずしもハイブリッドワークは全社的に進めなければならないものではないため、部署単位で小さくスタートさせるところから導入してみるのが良いでしょう。

ハイブリッドワーク 導入検討における3つのポイント