データセンターのグリーン化はなぜ重要なのか?

多くの企業でSDGsの観点から実践が求められている、省エネや脱炭素といった一連の取り組みは、環境への負荷を低減し、効率的にエネルギーを利用することはサステナブルな社会作りだけでなく、企業の持続性といった面でも必要とされています。この取り組みは広範囲に広まっており、データセンターも例外ではありません。こちらの記事では、グリーンデータセンターが注目される背景やデータセンターのグリーン化の動向などについて、解説していきます。

生活やビジネスに欠かせないデータセンターの役割

生活やビジネスに欠かせないデータセンターの役割

データセンターは、本来ITが普及してきた中で、発電所・各種インフラ、そして食物を育てる一次産業などと同等なほど重要性の高いものです。様々なインターネットサービスはデータセンターを通して提供されているため、データセンターの機能が停止した場合日々の生活、業務までもが成り立たなくなることも考えられます。

無数のデータセンターが世界各地に建てられていて、そして日本も例外ではありません。発電所近くなどの郊外に配置される事が多く、実物を目にする機会が多くないことから、あまりイメージがつかないという人も少なくないでしょう。

データセンターが抱える課題

データセンターが抱える課題

データセンターを活用している企業が直面する問題として、多くのエネルギーを要するといった点にあります。データセンター内にはサーバーシステムが数多く設置され、24時間動いていますが、これらを稼働させ続けるためには膨大な電力の供給が必要となります。

そして、サーバーシステムのみではオーバーヒートしてしまう危険性があるため、システムを冷却するため空調の費用、攻撃などからデータセンターを守るためのセキュリティにかかる費用などもあげられます。また、これらにも電力を送る必要があるため、正常にデータセンターを稼働させるためには想像できないような大量のエネルギーが求められます。

また最近ではAI運用の普及やクラウドサービスの普及などが背景にあるため、データセンターの需要は年々増加している傾向にあります。データセンターを利用するのを抑えて省エネ化を図る、といった選択肢はあまり現実的とは言えず、今後はデータセンターを重用することが必須となることから、グリーンデータセンターへの関心が集まってきています。

グリーンデータセンターとは?

グリーンデータセンターとは?

このように、24時間もの過度なエネルギー消費を続けるデータセンターの問題を解決するため、近年グリーンデータセンターが注目されています。データセンターのグリーン化、あるいはグリーンデータセンターとは、従来と比べわずかなエネルギー量でデータセンターを動かすことができるシステムを整備することを指します。省エネを実現するためにグリーンデータセンターが行っているのが、冷却する機構の工夫です。いままで、膨大なサーバーシステムが熱暴走を引き起こさないようデータセンター内は、大型の空調設備を整えることで冷却するといった方法が主流とされていましたが、空調設備のあり方を再度見直すことで、省エネ化行っています。

データセンターをグリーン化するための方法

冷却機構の工夫アプローチは、データセンターごとに様々な仕組みが施されています。ここでは、省エネ冷却アプローチについて、解説していきます。

空気の流れや換気方法の工夫

比較的実行しやすい方法として、換気方法に工夫を加えたり、空冷方法を工夫したりする方法があげられます。これまでの空調設備では、サーバーが設置してある空間全体を冷却することが主流とされてきましたが、グリーン化に配慮したデータセンターでは、サーバーに直接冷風が当たるように配置を変えることで、冷却にかかるコストを抑えています。

もしくは、温まった空気をそのまま外へ逃がす換気システムを整備することで、今までよりも少しの冷却コストで温度を管理することが可能となるような仕組みも採用されてきています。新しい技術がなくとも、グリーン化は可能ということを覚えておきましょう。

データセンターの設置地域の工夫

以前より取り組まれてきたのが、データセンターを設置する地域の工夫です。そもそも平均気温の高くない地域に配置することで、サーバーの温度上昇を限界まで抑えること可能な点で、データセンターを寒冷地帯へ設置するが取り組みが進んでいます。

例を挙げると、アイスランド等といった北極に近い国々は、世界中の企業が設置をしている、優良地域と言えます。近年、北海道は優秀なデータセンターの設置地域として注目されていて、建設が進められています。

液浸冷却の実施

データセンターのグリーン化がハイテクにより推進する事例もでてきています。これまではサーバーを冷却するため空気を冷やす空冷式が採用されてきましたが、最近では、サーバーを電気を通さない特殊な液体に浸す、液浸冷却という方法に注目が集まってきています。

冷却した液体がサーバーの熱を直接奪ってくれるため、従来よりも空調にコストを掛ける必要が無くなるのがポイントです。そして、液浸冷却は空冷式と比較して、冷たい空気を循環させるための多くのスペースが不要となり、設置面積を抑えて設置が可能な点も、高く評価されています。

データセンターをコンパクトに設置できれば、山間部などを無理やり切り開く必要もなくなるでしょう。

海底への設置

最近では地上に設置せず、海底にデータセンターを設置し、冷却する手法も模索されています。陸上と比べはるかに低温度な海底にデータセンターを設置できれば、必然的に冷却にかかるコストは小さくなるでしょう。

日本は洋上国家ということもあって、データセンターを海底に設置できる技術が普及することは大きな意味を持ちます。限られた陸上のエリアを圧迫する必要がなく、遠く離れた寒冷地域のデータセンターを使用する必要もなくなるので、低遅延でのサービス利用にも期待できるからです。

ですがもちろん、現段階では信頼性の面や設置コストなどから考慮すべき点はありますが、将来的な面では期待ができる技術と言えます。

グリーンデータセンターの主な事例

グリーンデータセンターの主な事例グリーンデータセンターに関する主な事例としては、以下のようなものが注目されました。

マイクロソフト

2018年よりマイクロソフトは、海底データセンターの有用性に関する実験を行ってきました。データセンターを水深36メートルの地点に設置し、パフォーマンス・信頼性を評価した上で、2020年に引き上げを行いました。陸上と比べ故障例が少ないなどの有用な成果もあげられており、今後の実稼働に向け研究が現在も進められています。

参考:https://news.microsoft.com/ja-jp/features/200915-project-natick-underwater-datacenter/

NTTデータ

NTTデータは、2022年に液浸冷却システムの実験を行い、これまでよりも97%の冷却エネルギーを削減することに成功したと発表しました。沸騰させた液体で気化熱を冷却に活用する「二相式」というものを取り入れたことで、高い冷却効果を省エネルギーで実現できただけでなく、サーバーを密に設置しても発熱をかなり抑えられることや、一定温度の密閉空間で運用できるため、故障率の低下などが注目を集めています。

参考:https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1414925.html

まとめ

こちらの記事では、主なグリーン化のアプローチや、データセンターのグリーン化の必要性について解説していきました。需要が拡大する一方で、エネルギー消費が問題とされているデータセンターのグリーン化は、世界での喫緊の課題とも言えます。

データセンターをグリーン化するための技術開発がすでに世界各地で行われているだけでなく、少しの工夫でエネルギー消費を抑える工夫も採用されてきています。グリーンなデータセンターはどうしても設置コストが高くついてしまうのが現状ですが、SDGs達成につながることや、中長期的に見れば冷却コストを削減できる可能性もあることから、今後の動向にも注視したいところです。

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