弊社では「エンタープライズ型RPAへの展開」と称し、弊社なりにエンタープライズ型RPA はどういったもので、どういったメリットがあり、どのような機能が必要とされるかなどをご紹介させていただく企画として前回、前々回は、「エンタープライズ型RPAとは」と題し、対象業務や利用部門などの視点から「自動化業務範囲の拡大」の側面や自動化対象業務をどのように発見/分析し、開発/利用し、モニタリング/評価を行っていくかなどの「自動化メカニズムの範囲(より広い範囲の自動化ツール活用)」の側面をご紹介されていただきました。
今回は「エンタープライズ型RPAの価値」を中心にご紹介させていただきます。
エンタープライズ型RPAの価値を考えるに当たっては、元々ある「RPA価値の再認識」と「エンタープライズ型RPAによるRPA価値の拡大」に分けてご紹介させていただきたいと思います。
1) RPA価値の再認識
まずは、「RPA価値の再認識」に関して、弊社で理解している内容をご紹介させていただきます。
a)働き方改革の対応と働き甲斐の改革
元々RPAがブームとなった背景のひとつには、政府が中心となって進めている生産年齢人口の減少や働く人のニーズの多様化などの問題を解決するための「働き方改革の推進」があげられます。
法制化された働き方改革では、就業機会を拡大し、意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ると共に労働生産性を上げることが重要な課題となっています。
多くの企業では「長時間労働の解消」、「労働生産性の向上」を目的にRPAの導入が始められたのではないかと思います。
そのRPAの導入の中で多くの単純作業をRPAにやらせることにより、単に「長時間労働の解消」や「労働生産性の向上」だけにとどまらず、一連の業務のRPA化による「業務サイクルのスピード向上」、作業ミスの削減や業務実施方法の一律化による「業務品質の向上」、さらには従業員が行っていた退屈な単純作業からの解放による「労働意欲の向上」と言った「働き甲斐の改革」まで歩を進めていらっしゃる企業も多いのではないかと思います。
さらに、従来の人員ではできなかった仕事(特に費用削減系業務ではなく新たな営業支援系業務などへ利用することにより売上をあげているなど)や昨今社会問題となっております「コロナ対策」としてRPAを利用することにより、新たなRPAの価値を体感されている企業も増えていると聞いております。
b)内製化の期待
もうひとつのRPAの価値として期待されているのは、従来のシステム開発では、社内の専門部隊の人材不足や外部業者への委託などの理由により、時間的にも費用的にもビジネスの要求に追従できていなかった仕組みを、現場部門を含めて社内で簡易または高速に実現できることではないかと思います。
RPAツールには、簡単に開発ができるとは言え、本格的な業務での利用に際しては要件定義/開発/テストなどある程度のIT知識がなくては開発ができない部分があるため、思った以上に苦戦されている企業も多く、中々すぐには成果が上がらないのが現状です。しかし、シナリオの部品化/標準化や徹底した社内教育、ノウハウの共有、開発/運用ルールなどを整備されることにより、徐々に成果が表れつつある企業も増えているのではないかと思われます。
さらにトップダウン的な本格的な業務の開発とは別にボトムアップ的な現場の簡単な業務の開発は、あまりIT知識がなくては比較的簡単に利用できるツールを利用することにより、全体的に効率的な開発が期待されます。
従来は、上記のようなことを実現するためには、複数のRPAベンダーのツールを採用する必要がありましたが、最近では、1つのRPAベンダーから上記の対応を行えるツールも出てきているようです。
2) エンタープライズ型RPAによるRPA価値の拡大
次に、「エンタープライズ型RPAによるRPA価値の拡大」に関して、弊社で理解している内容をご紹介させていただきます。
a)全社規模で実施することのスケールメリット
第1のメリットとしては、同一業務を複数の支店/部署で行っている場合に開発するシナリオを共通利用することや似通った業務を複数の支店/部署で行っている場合に開発するシナリオを部品化/標準化を行い、他部署と共有することで直接的に個別シナリオの開発、運用、保守費用の低減を図ることが可能となります。
さらなるメリットとしては、全社的なRPA推進組織としてCoEを確立し、全社的にRPA開発/運用/保守の集中管理を行うことにより、効率的な教育の仕組みの構築、開発/運用/保守ノウハウの集約や文書化、各部門間での連携などの網羅的で効率的な対応が可能となり、全体的なRPA開発、運用、保守費用の低減を図ることができます。
また、全社的なRPA推進により、セキュリティ/ガバナンスへの対応に関しても、全社的な対応の合意形成の高速化やより網羅的で効率的な対応が進められると思われます。
さらに以前の記事でも、記載させていただきましたが、今後部門を跨った広い範囲の業務をロボット間の連携や人とロボットの協働などで、効率的な自動化を図っていく上では、全社的なRPA推進は必須となります。
b)エンタープライズ型RPAによるパラダイムシフト
さらに、人口減少、少子高齢化、エネルギー・環境制約などの課題先進国の日本が、国際競争力を維持するためには、組織や業界の枠を超えたデータ利活用を推進し、「あらゆる産業がITでつながる」データ駆動型の「Society5.0:超スマート社会」を実現することが重要なテーマの1つとなっています。
※Society5.0とは、政府により提唱される科学技術政策の1つで、詳細は下記内閣府のHPをご参照ください。
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
RPAは「Society5.0:超スマート社会」で重要とされる分断されたシステムをシームレスに連携させ、個人の競争力を高めるキーテクノロジーとなることが期待されます。
RPAの普及はこれまでの社会的な課題を直接解決する可能性を秘めていると考えられます。
今回は、「エンタープライズ型RPAの価値」をご紹介させていただきましたが、さらにエンタープライズ型RPAに関するご理解は深まりましたでしょうか。
次回は「エンタープライズ型RPAに必要な機能」と題し、発見、分析、設計、自動化、計測、モニタリング、再評価などのフェーズごとに必要と思われる機能をご紹介させていただきます。