大手エンジニアリング会社のPM(プロジェクトマネジメント)の“プロ”が実践したプロセスマネジメントとは!?

見積もり段階でのミスはリカバリー困難

大手エンジニアリング会社に限らず、多くの企業ではプロジェクトの成否を担うプロジェクトマネジメントを重要視し、PMBOK[i]に準拠した管理項目の整備やプロセスの標準化、進捗管理の徹底などの対策が取られています。特に技術の複雑化、要求の多様化、規制やコンプライアンスの強化、新興国との競合による低コスト化と短納期化など、様々な要因によりプロジェクトの難易度は上昇しており、プロジェクトマネジメントの重要性はさらに高まっています。

長年、発電所や化学プラントの建設、船舶や海洋構造物の建造、産業機械の製造・販売をグローバルに展開している大手エンジニアリング会社にとって、プロジェクトマネジメントは重要な基幹業務であり、その管理技術とノウハウは脈々と受け継がれてきています。

しかしながら、プロジェクトマネジメントが対象とする期間は一般的にプロジェクトの“受注後”から“納品”までで、プロジェクトマネージャとしてはその期間内において予め設定されたQCD[ii]などの基準を満たすことが責任となります。さて、その事前に設定されるQCDの基準自体が間違った情報を元に算出されたものであったならばどうでしょう。関連各国の規制の見落し、調達リスクの見誤り、顧客条件との不整合が残されたまま受注してしまった場合には、プロジェクト期間でリカバリーすることは極めて難しくなってしまいます。

[i] “Project Management Body Of Knowledge”の略称でPMI(Project Management Institute:PM協会)から発行されたプロジェクトマネジメントの知識体系ガイド

[ii] Quality=品質、Cost=金額、Delivery=納期

プロジェクトマネージャのなり手不足の解消と育成

多くの企業がDXに取り組む中、ITプロジェクトの数が増加しています。高度な技術と豊富な経験、更にはコミュニケーション力やストレス耐性などのソフトスキルが求められるプロジェクトマネージャの不足は深刻な問題で、企業内においてもプロジェクトマネージャ候補となる人材の確保と育成が課題となっています。

組織的な育成プログラムの導入やデジタルツールの活用などの対策が検討され、一部適用が進んでいる企業も多い半面、様々なノウハウの蓄積や継承、社内規定や法令などのタイムリーな更新など、経験値が必ずしも高くないプロジェクトマネージャが安心して業務を推進できる環境を整えることが出来ていない企業も多く存在します。

大規模な建設業・製造業のエンジニアリング部門における課題例と解決策

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経験豊富なプロジェクトマネージャが存在し、プロジェクトマネジメントの技術やノウハウが蓄積されている大手建設業・製造業にあっても、大規模化・複雑化するプロジェクトの上流工程である見積業務における対策は大きな課題でした。また同時に、プロジェクトマネージャの育成や定着という課題についても、もう一歩効果のある施策を見つけられずにいました。

ここでは、大規模プロジェクトの見積もり工程における課題を解決し、適正な事前評価と対策の立案を通して受注後のプロジェクトの適正化とプロジェクトマネージャの育成と定着に大きな効果を上げた成功事例をご紹介します。

課題と解決策①

見積のプロセス整備による精度向上で業績改善

【課題・背景】

これまでも受注後のプロジェクト管理強化には取り組んできたものの、見積段階での誤りが発生した場合、プロジェクトが開始してからの挽回は難しく、結果的に採算割れなどの問題プロジェクトとなってしまうリスクが高くなっていました。

【解決策・効果】

見積に関連する標準プロセスの整備とデジタル化を行い、以下の効果を期待しました。

● プロジェクト見積の精度向上
● プロジェクトマネージャの支援・育成

具体的な取り組み内容は、以下の通りです。

● 法改正や組織変更、プロセス改善などが発生した際、それらを速やかに標準プロセスや規定類に反映させる体制とナレッジベースのデジタル化
● 見積作業時に必要な標準プロセス・規定・法令をデジタル化し、常に参照できる環境の構築

これらを、株式会社サン・プラニング・システムズの「iGrafx Process 360 Live Design(旧iGrafx Platform)」を活用して実現しました。iGrafx は、ビジネスプロセスフローを中心としながら各種成果物(Work Product)やRACI[i]、リソースなどPMBOKに準拠したアプローチと体系に基づいてデータベース化され、それらのリレーションを構築することが可能です。同社では、このITソリューション上にプロジェクト運営要領を構築することで、プロジェクト管理の効果的なナレッジデータベースの整備に成功しました。

[i] プロジェクトや工程の役割や責任を明確にするためのフレームワークで、Responsible=実行責任者、Accountable=説明責任者、Consulted=相談先、Informed=報告先の4つから構成される

課題と解決策②

標準業務の進捗をリアルタイム・網羅的に管理し、要件定義・設計を大幅削減

【課題・背景】

標準業務プロセスのデジタル化は実現したものの、そのプロセスが実際に正しく運用されているかをリアルタイムかつ包括的に確認する手段が不足していました。

さらに、社内で活用しているプロジェクト管理ツールは存在するものの、プロセスの変化に追随できるツールをその中から選定することが出来ずにいました。

【解決策・効果】

進捗状況をリアルタイムに把握できる管理ツールを独自に開発することにしました。iGrafx上に構築したプロジェクト運営要領をシームレスに進捗管理システムに連携するには、iGrafxの持つAPIやBPMNフォーマットなどに精通している必要があるため、株式会社イノベーティブ・ソリューションズをパートナーとして選びました。

開発した進捗管理システムでは、iGrafx上で作成された標準プロセスや各種リポジトリ情報をAPIを通じて取り込み、進捗管理のステージゲートや承認に必要な資料を利活用することができるようになりました。これにより、整備されたプロセスステップを、進捗管理システムにそのまま取り込めるため、標準プロセスをベースにしつつプロジェクト毎の特性を加味するといった自社にあった効果的な進捗管理が可能となりました。

さらに大規模システムの成否は経営に大きく影響し、場合によっては記者会見など社外への説明責任を求められることから、経営層は常に注目しています。経営層の立場から見ると、気がかりなプロジェクトの状況を、報告を待つことなく自ら確認したいというニーズがありました。当システムの完成により、同時に動いているすべてのプロジェクトのステータスを俯瞰して見ることで全体を管理するプログラムマネジメントができ、個々のプロジェクトのステータスを監視できるOODA[i]が可能になりました。

[i] O=Observe(観察)、O=Orient(状況判断、方向づけ)、D=Decide(意思決定)、A=Act(行動)の4つからなるループで、変化に強く迅速な意思決定・行動を行うためのフレームワーク

エンジニアリング会社におけるプロジェクト推進の課題は「iGrafx」と、シームレスに連携できる「進捗管理システム」で解決できる

建設業や製造業などにおける大規模プロジェクトは、開始前の見積の失敗が後工程である実施段階でのコスト増加や納期遅延などで大きな損失を招き、企業の経営問題に発展する恐れがあります。それを防ぐためには、見積工程の実施状況をモニタリングすることにより、プロセスが適切に遂行され、リスクが回避されているかどうかの確認と検証、対策を取ることが必要です。

見積工程におけるリスク管理やプロジェクトマネージャ支援といった課題を解決するには、業務プロセスの標準化と関連情報のデータベース化が鍵となります。こうしたデータベースを活用した進捗管理には、株式会社サン・プラニング・システムズの「iGrafx」と、シームレスに連携したシステム開発が必要です。

「iGrafx」は、BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)に準拠したプロセスフローを使用して、プロジェクト運営に必要な要件や手順、関連資料を一目で確認できるツールです。また、「進捗管理システム」はiGrafxの情報を引継ぎ、各業務ステップの標準に準拠しているか否か、遅延の有無や成果物の完成状況とその担当者までリアルタイムで把握でき、プロジェクトに関わる全員がアクセス可能です。

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