EDR運用の重要性と課題を徹底解説

近年、サイバーセキュリティの脅威が増大する中、EDR(Endpoint Detection and Response)の導入が注目されています。EDRは、エンドポイントの異常をリアルタイムで監視し、迅速に対応することで被害の拡大を防ぐ重要なツールです。しかし、EDRを導入するだけでは十分ではありません。その効果を最大限に発揮するには、適切な運用が不可欠です。本コラムでは、EDR運用の重要性、よくある課題、および解決策について詳しく解説します。

なぜEDR運用が重要なのか?

EDRは、企業や組織の情報システムにおける最終防衛ラインとして機能します。従来のセキュリティソリューション、例えばウイルス対策ソフトやファイアウォールでは防ぎきれない高度な攻撃に対して、EDRは迅速かつ柔軟に対応できます。具体的には以下の機能を持っています:

  1. リアルタイム監視:エンドポイントの挙動を常時監視し、異常を早期に検知。
  2. インシデント対応:検知した脅威に対して即座に隔離や封じ込めを実施。
  3. 可視化と分析:攻撃の進行状況や影響範囲を可視化し、詳細な分析を可能に。

これらの機能を活用することで、被害を最小限に抑えるだけでなく、将来的なセキュリティ対策の強化にも寄与します。しかし、EDRの導入はあくまで第一歩であり、運用が伴わなければその価値を十分に引き出せません。

EDR運用における課題

EDRの効果的な運用には多くの課題が存在します。
以下に3つの代表的なものを挙げ、それぞれの背景を説明いたします。

アラートの多さと対応の負担

EDRは多数のアラートを生成します。その中には実際の脅威ではない”誤検知”も含まれることがあります。これにより、セキュリティチームが膨大なアラートに対応しなければならず、日常業務が圧迫されるケースがあります。このような状況は特に小規模なセキュリティチームにおいて深刻で、重要な脅威を見逃すリスクも高まります。

専門知識の不足

EDRを効果的に運用するためには、サイバー攻撃の手法やEDRの内部動作に関する深い知識が必要です。しかし、こうした知識を持つ専門家は市場で非常に限られており、多くの組織が人材不足に直面しています。また、社内でスキルを補完しようとしても、適切なトレーニングを実施するための時間やリソースが不足している場合があります。

ゼロトラスト環境との統合

EDRの導入や運用にはコストが伴います。ライセンス費用に加え、日々の運用管理やアラート対応にかかる人件費が増大することがあります。また、セキュリティオペレーションセンター(SOC)を構築・運営する場合、そのコストはさらに膨らみます。特に中小企業にとって、これらの費用は大きな負担となることが多いです。

課題への具体的な解決策

EDR運用における課題を克服するためには、以下のような解決策が考えられます。

アラートの精度向上と優先順位付け

機械学習やAIを活用して、アラートの精度を向上させるとともに、優先度の高い脅威を自動的に分類する仕組みを導入することで、対応負担を軽減できます。また、過去のデータを分析し、特定の誤検知を減らす設定を行うことも効果的です

専門人材の育成

社内でのトレーニングプログラムを充実させるとともに、外部のセミナーやオンライン講座を活用して、スタッフのスキル向上を図ります。また、一部の運用をアウトソーシングすることで、専門知識のギャップを補うこともできます。

コスト最適化

必要最低限の機能から運用をスタートし、徐々に拡張していく段階的なアプローチを採用します。また、EDRベンダーと協議して、自社に最適なプランを選定することも重要です。

ゼロトラストとの連携強化

ゼロトラストモデルにEDRを統合する際には、ポリシー管理を一元化するツールやプラットフォームを活用します。さらに、既存のITインフラとの連携を強化し、運用の効率化を図ります。

成功するEDR運用のポイント

成功するEDR運用には、以下の3つのポイントが鍵となります。

プロアクティブな姿勢

問題が発生してから対応するのではなく、定期的なシステムチェックやリスク評価を行うことで、潜在的な脅威を未然に防ぎます。

運用プロセスの標準化

明確な運用ルールやプロセスを策定し、スタッフ全員が共通の手順に従うことで、一貫性のある対応が可能になります。

継続的な改善

サイバーセキュリティの脅威は日々進化しています。そのため、運用体制も定期的に見直し、新しい技術や手法を取り入れることが必要です。

まとめ

EDRの運用は、単なるシステム管理を超えた組織全体の取り組みです。適切な運用を実現することで、企業はサイバー攻撃からの防御力を高め、安心してビジネスを展開できます。本コラムで紹介した課題と解決策を参考に、自社のEDR運用を見直し、セキュリティ対策の強化に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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