【いまさら聞けない】DXの推進によって、得られるメリットとは?

経済産業省が、企業におけるDX推進の促す「DXレポート」を2018年に発表してから、日本でもDXというワードが良く聞かれるようになりました。
今回は、なぜDXという言葉が日本で注目されるようになった背景やDXを推進するメリット、実現に向けた取り組みまでご紹介いたします。

DXとは何か?

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)のことで、いわばデジタル推進によるビジネスの変革です。DXがビジネスにもたらすインパクトは絶大だとされています。

そのDXは、ビジネスの話でありながら、国も積極的に導入推進しています。とくに経済産業省はレポートを出しており、こちらにDXの定義があります。

つまり、仕事のデジタル化推進によって新しいサービスや競争優位を獲得する、ということです。動きの速い民間企業では、DXが非常に盛り上がっています。具体的にはIoT、5G、クラウド、AIが、DXの主要構成です。GAFAMと呼ばれる、Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftなどのグローバル企業はすべてこのハイテクを用いて成功しており、後に続くZoomやNetflixなどの新興企業も、オンラインビジネスを成功させ、追随しようとしています。

DXが日本で注目を集める背景

DXの概念は、20年近く前にスウェーデンの学者によって提唱された新しい生活様式や仕事のあり方を定義するものでしたが、世間一般で注目を集め始めたのはここ数年の出来事です。

国内外でDXが急速に普及し始めた理由として、以下の要因が主に挙げられます。

インターネットの普及

ここ数年でDXが広く普及した最大の理由の一つが、インターネットの普及です。光回線や4G回線といった高速回線が整備され、スマホの登場によってインターネットに触れる機会が急速に増加したことで、もはやインターネットを介して提供されるWebサービスは生活に欠かせないのはもちろん、ビジネスにも不可欠な存在となりました。

ネットを介して提供される企業向けWebサービスも急増したことで、運用コストも低下し、導入のハードルが下がった結果、大企業はもちろんのこと、中小企業や個人でも容易にIT活用が浸透しています。

インターネットが広く普及したことで、ITを活用している企業とそうでない企業の格差が広がり、競争優位性を確保するためのDX推進が各社で行われつつあるわけです。

「2025年の崖」の到来

日本でDXが注目されるきっかけとなったのが、経済産業省によって提唱された「2025年の崖」の存在が挙げられます。「2025年の崖」は経産省が2018年に発表した「DXレポート」のなかで触れられた言葉で、DXが2018年当時のまま進まない状況が2025年まで続けば、以降は毎年最大12兆円もの損失を日本企業が被ることになる、という警鐘を鳴らしたものです。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

独自に構築したシステムが老朽化し、その維持管理にコストがかかるのはもちろん、最新の環境にアップデートができず、新しく利便性の高いシステムとの連携ができず、データ活用などに遅れが生じ、企業が競争力を失ってしまうためです。

「2025年の崖」については国を挙げての解消が進められており、IT導入補助金などの支援を通じて、2018年当時よりもDXは各企業で普及しました。しかしDXはまだ十分に国内で普及しているとは言えず、成功事例やノウハウを固めながら、更なる参入企業が求められています。

働き方改革の浸透

働き方改革が国内で浸透しつつあることも、DXを後押しする要因となっています。働き方改革は、企業に属する社員が個性を活かし、最大限企業に貢献しつつも、自分なりのライフスタイルも充実させることで、ワークライフバランスの実現を進めるものです。

働き方改革のアプローチには多々ありますが、いずれの場合においても最新のWebサービスやコンピュータを使ったデジタルシステム導入や、管理体制の構築は欠かせません。リモートワークを推進するため、勤怠管理をオンラインで行えるシステムを導入したり、遠隔でもミーティングが行えるようWeb会議ツールを整備したりと、多くの取り組みはDXと深く結びついています。

逆を言えば、身近な業務課題からDXの可能性を探ってみるのも良いアプローチであると言えそうです。

次に、DX化の推進によってもたらされるメリットについて、解説いたします。

DX推進によって得られるメリット

これまでにないビジネスモデルの開発

DX推進によって得られるメリット これまでにないビジネスモデルの開発

DXによって従来にはなかった、世界を変えるようなビジネスモデルも生まれます。UberEatsを例に考えてみましょう。UberEatsはオンライン・フードデリバリーサービスで、アメリカ発祥のビジネスです。日本でも、4年前からサービスがスタートし、利用者数が右肩上がりで伸びています。最近では、UberEatsのリュックを背負って、街中を走る自転車を見かけることも増えてきました。

UberEatsには圧倒的にDXを実現しております。なぜなら、UberEatsの配達員は準備が整うとスマートフォンがなり、配達も地図アプリに従うだけで、精算もすべてオンラインで可能であり、利用者だけでなく配達員にとっても利便性がとても高いのです。このDXによるインパクトが、UberEatsの爆発的な成長を支えているといえます。

60億人のグローバル市場へのアクセス

60億人のグローバル市場へのアクセス

まず、DX化によって、世界市場へのアクセスが拓けます。日本は消費人口が減少傾向であり、人口問題はなかなか解決できていないのが現状です。落ち込む内需でひたすら競合とパイを分け合うより、世界経済と60億人の市場にアクセスできれば、国内の競争とはまた違った世界が拓けます。

世界市場にアクセスするDXといえば、ハイアベイラビリティ(高度可用性)の実現です。世界経済は夜日本が眠っている間にも動いていますので、夜間バッチ(システムの深夜入れ替え)で対処するわけにはいきません。24時間止まらないシステムが求められ、急激なアクセスと同時に負荷を上手に乗りこなす技術力も大切です。この辺りが、日本企業の弱いところではないでしょうか。国内向けのサービスならば、9時~18時まで稼働していれば事足りますが、世界を相手にする場合はフル稼働です。それに、世界のある一定の地域でサービスが流行って、思いも寄らない時間帯に高負荷がかかることも十分考えられます。

また世界市場60億人をターゲットにするのですから、眠らないサービス設計が求められます。これにともなうDXのメリットとしては、世界を相手にするレベルの高いビジネスモデルが構築できるということです。

変化への適応、パフォーマンスの最適化、コスト削減

変化への適応、パフォーマンスの最適化、コスト削減

また、DXでは、すべてがデジタル上で取引されます。これによって、変化に適応しやすくなります。

その例として、AmazonやAppleのサポートセンターがあります。電話をかけると日本語が堪能な、外国人の方がサポート対応してくれます。電話応対のサポートの品質を限界まで高めるため、あらゆるAI(アルゴリズム)が駆使されています。順番待ちの最適化、返品を繰り返す不良ユーザーへの対応など、すべてのサポートサービスがデータベース化されて動いています。サポートセンターがDXによって生じるメリットは様々ですが、変化への対応、パフォーマンスの最適化、そしてコストの削減などが挙げられます。
例えば、日本時間の夕方にサポートへのコールが多くなるのであれば、サポートセンターそのものをフィリピンに移すなどのダイナミックな選択が取れ、結果として大きなパフォーマンスとコスト削減が得られるのです。

DXで改革する効果は、巨大企業になればなるほど著しくなります。改革と言えば、従来の日本企業では「カイゼン」という現場での気づきを積み上げるボトムアップ式の改革が主流でした。しかしDXはトップダウン型が多く、上の改革によって構造そのものを変えてしまう存在です。

具体例としては、役所の公文書管理における決裁が挙げられます。従来、役所の決裁は「係員→係長→課長→部長→市長」と決裁ルートが長く、公文書管理に時間が取られるという構造上の問題がありました。そこで、決裁権を 「係員・係長グループ、課長・部長グループ、市長」と3段階にわけて電子決裁を導入すれば、決裁ルートが短く柔軟になり、同時に時間も短縮されます。そして、この決裁権限の変更によって、役所の意思決定が早くなるという効果がもたらされるのです。

BCPによるリスク回避

BCPによるリスク回避

見逃せないDXの最大のメリットがBCP(事業継続計画)です。地球環境の変化が著しい昨今では、大型の自然災害などで、いきなり経済がストップすることはありえるのです。新型コロナウイルス感染症でも、DXに以前から取り組んでいた企業と、旧来型のビジネスを続けていた企業では明暗が分かれました。

コロナをきっかけに、多くの企業はDXに取り組まざるを得ない状況です。在宅勤務に対応したリモートワーク環境の整備、押印の廃止、ソーシャルディスタンスの徹底などもある種のDXを推進しているといえます。

企業が企業である以上は、社会・株主・銀行・そして従業員への社会的責任を背負っています。災害があったからといって、生産も支払いも投げ出して終わりにすれば良いというわけにはいかず、ビジネスは継続し続けることもとても大切です。

ただ、不慮の災害はどうしても起りますし、昨今の異常気象などからもわかるように災害が年々起りやすくなっていますから、事業の継続を意識したビジネスモデル作りが重要になってきます。

リモートワークはその象徴でもあります。出社できなくなり、“密”をつくらない社会に変わったといった社会的要因に加えて、家庭の事情などで、働きたいけれど通常勤務ができないといった、個人的な要因を抱える従業員への対応も、リモートワークで可能になります。今まではリモートワークは限定的なものととらえられていましたが、今はオフィスと同等の環境で働くことができるようになっているのです。

このリモートワークを実現する仕組みも、DXが支えています。オンラインメッセージアプリ・Web会議・進捗報告とタスク管理アプリ・オンライン勤怠管理アプリなど、リモートワークを実現するために必要なシステム(アプリ)はたくさんありますが、すべてクラウドやAIや5G・IoTなどが技術的な面で下支えしています。

旧型の企業体質からの脱却

また、旧型の企業体質から脱却することもできます。マイクロソフト社のWindows95が世の中に登場してから25年が経ちますが、そろそろシステムが古くなっている企業も多いのではないでしょうか。

2018年の時点で、総務省はDX化の研究会を開いています。そのレポートによると、システムが古くなっている企業は、実際に多く、25年前のシステムを6割もの企業が使い続けることになるそうです。

引用:デジタルトランスフォーメーションレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf

このレポートは2025年という少し未来に焦点が当てられていますが、25年前に作られたシステムは2020年でも古さとしては同程度です。その古いシステムを卒業するきっかけとしてのDXがあると考えられます。

古いシステムはシステムで、安定性や実績がありますので、非常に信頼が置ける部分があるのは事実です。銀行のATMがいまだにメインフレーム時代のUIと同じものを使っているのと同じで、信頼性というのは企業にとって代えがたい資産です。

しかし、裏側のコードが継ぎ足しになっていることや、ソースコードを継ぎ足しするがゆえに膨大で担当者依存のシステムになっているのも事実です。その結果、メンテナンスのコストも膨大になり、また優秀な技術者も古いシステムには惹かれないという部分があります。

代表的なDX施策

DXとは一言で言っても、その実践方法は企業が抱える課題に応じてさまざまです。ここでは多くの企業が実施している、代表的なDX施策について、ご紹介します。

クラウドストレージやチャットツール等を使った情報共有の効率化

最も実践しやすい、初歩的なDX施策としては、クラウドストレージやチャットツールの導入が挙げられます。オンライン経由でファイルや画像などを安全に共有できるクラウドストレージは、無料でも導入ができるサービスも充実しており、試しにデジタル活用を推進するには最適のサービスです。

また、メールや電話の代替手段としてチャットツールの活用も進んでいます。テキストメッセージはもちろん、プレゼン資料などのファイル共有にも使えるチャットツールは、メールよりもカジュアルに使える連絡手段であり、電話ほど同時性を必要としない通信手段ということで、多くの企業が採用しています。

バックオフィス業務の効率化・ペーパーレス化

もう少し込み入ったDX施策を実施したい場合、バックオフィス業務全般の効率化、あるいは社内のペーパーレス化に取り組んでみるのが良いでしょう。

経費精算や在庫管理など、バックオフィス業務は多くの作業労働が発生しており、人的負担が大きい一方、企業の売上にはあまり関与しないのがネックです。こういったルーティンワークはクラウドサービスなどを活用することで、多くの場合自動化、あるいは半自動化が可能になっています。

また、契約書作成や各種申請作業など、書類作成が必要な業務も、多くの場合デジタル化が進んでいます。余計な紙を使った業務を解消することで、業務負担の削減はもちろん、紙代の削減やプリンターのリース代削減などにも貢献します。

営業支援システム導入やインサイドセールスの強化

DXによって企業の成長を直接的に推進したい場合は、営業支援システム(SFA)の導入が効果的です。営業活動に必要な機能を、クラウド経由で提供されるSFAによって効率化することで、顧客情報の整理や、営業進捗の管理、日報作成といった、営業業務に不可欠なプロセスを効率化できます。

また、顧客情報の管理や見込み客のスコアリングによって、アプローチすべきターゲットを見える化することで、インサイドセールスのような新しい営業活動にも参入し、新規顧客獲得を拡大することができます。

AIを活用した客観性のある意思決定の実現

高度なDXソリューションを導入すれば、複雑な意思決定が求められる現場においても、優れたパフォーマンス改善が期待できます。AIを使った分析を進め、積極的なデータ活用を推進することで、高度な統計分析も瞬時に行い、客観性の高い意思決定を迅速に進められます。

高度なスキルセットを持ったデータサイエンティストの手を借りることなく合理的な判断が下せるため、企業の成長を省コストで推進します。

DX実現に向けて必要な取り組み

このようなDX施策を自社に導入するためには、以下のような取り組みを心がける必要があるでしょう。

ITの知見を全社で深める

まずは、全社的なITへの関心と知識を深めることです。どれだけDXが企業に有益であっても、現場で働く社員の理解や、経営者の理解が得られなければ、効果的な活用は見込めません。

DXによってどんなことができるのか、どのように働き方は変わるのかを広く周知し、ITへの関心を深めましょう。

経営者が主体となって組織改革を進める

DXに成功している多くの企業は、経営者が主体となって、あるいは経営者の直下にDX推進室を設置し、迅速で決定力のある施策を次々と実行しています。下部組織がDXを推進するとなると、承認作業や同意を取り付けるのに時間がかかってしまい、思うようにDXを進めることができません。

経営者がDXに対して強い関心を持ち、「率先して進めたい」と感じてもらうことが、DXの第一歩に求められています。

DX人材を確保・育成する

DXはただシステムを導入するだけではなく、それを活用するための人材の確保と育成が不可欠です。

DX人材は、DXソリューションに対して知見があり、システムを有効に扱えるスキルを持った人物を指します。近年はDX需要の急増もさることながら、元々理系寄りの人材が不足していることもあり、DX人材の確保が難しくなっています。

DXに詳しい人材がいなければ、どんなシステムを導入すれば良いのかわからず、DXを実行することができなくなります。また、現場社員の育成にも力を入れなければ、せっかく導入した最新のシステムを扱うことができず、DXの効果が得られません。

最新のソリューションに目を向けることは良いことですが、実践に当たっては人を確保する必要性にも目を向けることが大切です。

ビジネスモデルを見直す

既存のビジネスに限界を感じている場合は、DXを踏まえたビジネスモデルの刷新も検討する必要があるでしょう。会社がある地域や、既存のコネクションでは限界がある事業も、新しく顧客別の地域に見出したり、あるいはグローバルな視点で事業を見直すことで、新しい事業モデルの検討や、新しい販路の可能性を見出すことができます。

国内市場の縮小が進んでいるからと後ろ向きになるよりも、DXによって自社はどんなことができるのか、どうすればDXで事業を存続できるのかを考えたり、専門家に相談してみたりすることが大切です。

【まとめ】DXの推進によって、得られるメリットとは?

今回は、DXについてメリットを解説いたしました。DXの推進によって、今まで抱えていた社会の課題が解決でき、ビジネスチャンスが広がることがお分かりいただけましたでしょうか。

もちろん、DX推進が目的ではなく、DXを通じて何を成し遂げたいのかが、重要です。その目標を見失わずに、DXを有効活用していければ、より日本のビジネスが劇的に変化を遂げ、新たなイノベーションを生み出すことができるでしょう。