【解説】DXと働き方改革の関係性とは?

DXとは、いわゆる5G、IoT、クラウド、SNS、ビッグデータといったハイテク技術を用いて、業務をより効率的に、生産性高く、ストレスなしにスマートに進めるものです。

よって、DX化された現場は嫌でも働き方改革と直面することになります。生産性の向上は、日本全体の課題です。今回はDXと働き方改革の関係をみていきます。

DXの定義

そもそもDXは、人間の社会活動全般へ最新のデジタル技術を活用し、変化をもたらそうという取り組み全般を指します。元々はプライベートなライフスタイルも含めたデジタル変革をDXと呼称してきましたが、今ではビジネス分野でのデジタル変革に注目して使われる機会が増えています。

企業が抱えている課題に対して、新しいデジタル技術を持って解消し、生産性向上や業務効率化を図るのがDXとも言えるでしょう。

DXが注目される3つの理由

DXが注目される3つの理由

DXの概念は15年以上も前から提唱されてきましたが、ここ数年でd急速な普及が進んでいます。今になってDXに注目が集まった理由としては、以下の3つの理由が挙げられます。

インターネットの普及とDXサービスの増加

1つ目は、インターネットの普及とDX関連サービスの増加です。スマートフォンが普及し、光回線や4G、そしてWi-Fi利用が一般化したことで、インターネットとの接点はここ10年ほどで急激に増加しています。

結果、日常的なデジタル利用が広く定着しただけでなく、ネットを介したDXサービスが普及し、その種類も多様になったことで、あらゆる業に対してデジタル化が適用できるようになりました。

業務のデジタル化はこれまで多くの初期投資を要する取り組みでしたが、クラウドコンピューティングのような技術が登場し、DXサービス同士の競争も進んだことで、個人や中小企業でも利用しやすいサービスも広く提供されています。

「2025年の崖」の存在

2つ目の理由は、「2025年の崖」です。「2025年の崖」は2018年に経済産業省が提唱した概念の一つで、日本が2018年当時のままDXを進めることなく2025年を迎えてしまった場合、国内全体で最大12兆円もの損害が毎年発生することを端的に示しました。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

発表の中では、老朽化した既存システムの改修コスト増加や、システムの相互運用ができないことによって維持費を圧迫し、日本企業の競争力がますます低下してしまうということを具体的な数字とともに紹介しています。

「2025年の崖」を脱却するためには、各企業が独自にDXを推進し、業務のデジタル化を進めることが大切です。日本政府は「IT導入補助金」を展開するなどして、企業のDX推進を後押ししています。

国内企業の相対的な成長力・競争力の低下

かつては世界第二位の経済力を誇った日本も、今や三位にまで順位は下がり、現在も東南アジア地域を中心に、高い経済力と成長力を持った国々が登場しています。これらの国に共通するのは、高度なデジタル化が国全体で進められ、ITを駆使した経済成長を遂げている点です。

DXが進まないことで、日本企業は海外の成長力と競争力に優れる企業に遅れをとってしまい、相対的に国際的な地位も低下しつつあります。デジタル化が与える業務への影響力は大きく、デジタル技術そのものの進化のスピードも非常に早いため、近い将来、一気に経済力が日本と海外で逆転する可能性も否定できません。

IT活用が盛んな企業は、最新技術の導入に対して抵抗がないため、世の中のニーズやトレンドに合わせて業務改革を推進しやすい環境にあります。日本企業でもこのような柔軟性が強く求められており、IT活用を積極的に進められる環境づくりが必要です。

働き方改革とは

チャットツールも働き方を効率化する

DXと並行して推進されているのが、働き方改革です。働き方改革は、端的に言えば組織に属する従業員が自分なりのワーク・ライフ・バランスを実現し、私生活の充実と業務効率の向上を促せる仕組みづくりを指します。

リモートワークやフレックス制度の導入、産休の積極的な活用など、労働者の多様性を尊重した就労環境を整えることで、魅力的な職場であるとして優秀な人材が集まりやすくなったり、定着率が高まり、採用活動の負担が軽減するなどの効果が期待できます。

人材不足は喫緊の課題として多くの企業が悩まされていますが、働き方改革による福利厚生の改善や多様な就業形態の認可を進め、人材不足に困らない組織作りを実現できます。

DXは働き方改革にどう貢献するのか?

そんな働き方改革の実践に役立つのが、DXです。DXは働き方改革に不可欠な取り組みであるとともに、働き方改革によってDXをさらに後押しすることもできます。DXが働き方改革へどのように寄与するのかについて、解説します。

多様な働き方を実現するためのシステム導入を推進できる

働き方改革にまず必要なのは、多様な働き方の中でも正しく従業員とコミュニケーションができる環境づくりです。リモートワークを推進するためにはチャットツールやWeb会議ツールの運用が不可欠ですが、これらの施策はいずれもDXの一環と言えます。 遠隔でも従業員とコミュニケーションができれば、オフィスでも家でも、多くの業務は従来通り遂行可能です。DXによってメールや電話以外の通信手段を確保し、働き方の多様化の一歩を踏み出しましょう。

適切な労務管理を促せる

従業員の健全な就労環境を実現するためには、労務管理を最適化することも必要です。リモートワークの場合、従来のようにオフィスのタイムカードによって就業時間を管理することができず、自宅でのサービス残業や休日出勤を強要してしまうことにもなりかねません。 クラウドでどこからでも利用できる労務管理システムを導入し、スマホから勤怠を管理できたり、残業時間をコントロールできる仕組みを整備すれば、健康的な働き方を実現可能です。

IT活用で作業労働を効率化し業務負担を軽減できる

多くの企業で人材不足をもたらしている理由の一つに、時間のかかる作業労働を人の手でこなしている問題が挙げられます。書類作成や経費精算、各種申請業務など、時間がかかるだけで企業の成長に直接寄与しない業務は、できる限り負担を軽減したいところです。

近年は専用の書類作成・管理ツールを導入することで、多くの作業労働を自動化、あるいは効率化することができます。作業労働を解消できれば残業の機会を減らせるだけでなく、高度でやりがいのある業務へ社員をコミットさせられるようになるため、仕事に働きがいを持つことも可能になります。

DXによる働き方改革の主な事例

資生堂はWeb会議に自動メイクアップ機能を

ここで、実際のDXによる働き方改革の事例についても見ていきましょう。

株式会社カクイチ

創業135年で製造業界に従事するカクイチは、平均年齢46歳でIT活用は父として進まないなど、日本の中小企業の典型的な課題を抱えている企業でした。しかしDXの必要性が高まるにつれ、社内文化の刷新が求められるにあたり、社内情報ツールの導入からデジタル化を進めています。

社員同士のつながりやコミュニケーションをツール活用によって強化し、社内文化をアップデートすることで、「DXらしさ」を過度に意識することなく組織のデジタル化を進められています。

参考:https://logmi.jp/business/articles/325974

積水ハウス株式会社

住宅メーカーの積水ハウスでは、情報の一元化によるDXを推進し、業界でもトップクラスの働き方改革の実現に成功しています。

「お客様の前に自社の社員の幸せを追求する」というコンセプトのもと、CADプラットフォームの構築や社内情報システムの再構築による業務連携の強化といったDX施策を実行し、現場の負担軽減による働き方改革へと結びつけています。

参考:https://jp.ext.hp.com/techdevice/business/jbp_o21/

富士通株式会社

ITソリューション開発に取り組む富士通は、DXをITと切り離して捉えることにより、DXの円滑な推進を実現しています。企業のIT部門がDXを担当するのではなく、人事と総務、IT部門が連携してDXに取り組むことにより、8万人のテレワーク体制の整備を実現しました。

参考:https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/2009/18/news013.html

株式会社 資生堂

資生堂は、DX化の一環として、Web会議アプリに自動メイクアップ機能のアドオンを付与しました。これは在宅ワークが増えるに従って、オンライン会議のためだけに化粧をするのが手間だと感じている方が数多くいること・パソコンだと肌が綺麗に映りづらいなどの問題点から編み出されたものです。

在宅ワークをできる限り快適に対応して欲しいという願いから、自動メイクアップ機能を利用すれば、ノーメイクでWeb会議にアクセスしても綺麗にメイク補正してくれます。

リモートワークが一般的になりつつある昨今、メイクをすることは必須ではないので、女性にとっては重宝される機能ではないでしょうか。Web会議という働き方改革を促進してくれるツールに対して、上手に利便性を組み込んだ事例です。

https://www.shiseido.co.jp/sw/beautyinfo/telebeauty/

DXによる働き方改革のプロセス

資生堂はWeb会議に自動メイクアップ機能を

具体的にDXを進めるためのプロセスとしては、以下のような手順で進めるのが一般的です。

課題の発見

まず大切なのが、自社が抱えている課題の洗い出しです。業務上で発生しているトラブルや、効率化の余地がある作業など、デジタルを活用することで解決できそうな問題をピックアップします。

適切なソリューションの検討

課題の洗い出しが終わったら、それに適したソリューションを検討します。DXとは一言で言っても、多様な解決策があるため、自社に適したソリューションを選ぶためには課題を把握した上で選び抜く必要があります。

予算や求めるパフォーマンスを定義した上で、最適な製品導入を進めましょう。

システム導入とIT人材の確保・育成

自社に合ったソリューションを見つけることができたら、システムの導入とIT人材の確保を進めます。簡単なクラウドサービスであれば、すぐにでも導入を進めることができるため、まずはスモールスタートでこれらの製品導入から進めていくと良いでしょう。

また、システム導入に当たって、システムを正しく使えるよう、社員教育や新規人材の確保も進める必要があります。簡単なWebサービスであれば既存社員に教育を施し、運用し得てもらうのが適切ですし、高度なソフトウェアや自社でサービス開発を進める場合などは、新規人材の起用が欠かせません。

まとめ

DXや働き方改革は以前よりも格段に広く普及している概念ですが、まだまだ十分な認知は進んでおらず、導入件数も不十分です。

DXと働き方改革は深くお互いに関わっており、程度に合わせてさまざまなソリューションを検討することができるため、まずは自社の課題や先行事例を調べながら、最適な実施計画を考えるところから始めましょう。