デジタルトランスフォーメーション(DX)実現のためには、DXの知見が豊富な人材の確保と、積極的なプロジェクトへの起用が不可欠となります。ただ、DX人材の確保は急激な需要の増加により、獲得が困難になりつつあります。

そもそも、具体的にDX人材とはどんな能力を持った人材で、どんな業務をこなすことができる人のことを言うのでしょうか。

今回は、そんなDX人材について改めて条件を確認し、どんなスキルが求められるのか、そしてどのように人材確保を進めれば良いのかについて、ご紹介します。

DX人材の定義

DX人材を確保するためには、まずDXの意味を確認しておく必要があります。簡単にDXについて振り返ってみましょう。

DXとは

DX人材は、そんなDXを実現するのに足るスキルを持った人材のことを指します。DX人材の役割は非常に幅広く、必要な業務に応じて最適なスキルセットを持った人物が求められます。

そのため、DX人材を確保する際には、自社の課題解決に必要な人材やスキルを細かく理解し、プロジェクトへの参画を募る必要があるでしょう。

DX人材の役割

DX人材には、どのような成果が求められているのでしょうか。ここで、DX人材の主な3つの役割について、確認しておきましょう。

業務の生産性向上

DX人材の一つ目の役割が、生産性の向上です。ハイテクの導入によって、これまで手動で対応していた業務を自動化し、業務効率を高めます。人の数を維持したまま、より多くの業務遂行を実現できるだけでなく、業務スピードを高め、精度の改善にも勤められます。

特に数値入力のようなルーティンワークはコンピュータが得意とする分野であり、ヒューマンエラーの防止と生産性向上の二つのメリットを得られます。DX人材は、自社のどんな業務を自動化できるのか、自動化に当たって、どんな課題を解決しなければいけないのか、どんな技術を採用すれば良いのかなどの問題に取り掛かります。

コスト削減

二つ目の目的は、コスト削減です。少ない人手でもそれ以上のパフォーマンスを発揮できるのであれば、これまでよりも雇い入れる必要のある人の数は少なくなっていきます。

人件費の削減はもちろんのこと、書類の保管や顧客データ管理に必要としていた書類の保管コストや、プリンタのリース費用、さらには人を収容するためのオフィス賃貸費用も削減し、スマートな組織運営を促せます。

必要経費の割合をDXによって削減し、持続可能性の高い安定した企業へと改善ができます。そのためには、データを活用してどれくらいの経費削減効果が見込めるかを計算できるデータサイエンティストや、早期に初期投資を回収できるプランを組み立てられるDX人材が求められるでしょう。

新規ビジネスの創出

デジタル技術の導入は、新しいビジネスの創出にも役立てることができます。例えばECサイトの開設や、ネット決済システムの導入は、日本全国に向けた市場開拓を実現するだけでなく、全世界へと商品やサービスを発信できる機会をもたらします。あるいはデータ活用を進めることで、自社が思ってもいなかった強みを新たに発見したり、逆に弱みを発見して、更なる成長の機会を見出すこともできるでしょう。

組織のスマート化によって、企業経営を安泰なものにするだけではなく、より大きな企業へと生まれ変わることが可能です。このような目的達成に向けたDX人材を起用する上では、問題解決能力が高く、新しいビジネスチャンスを発見できる、向上心と創造力のある人材を登用することが必要になります。

DX人材に必要なスキル

DX人材に必要なスキル

上記のようなDXを実行に移すためには、スキルフルな人材の登用が不可欠になります。DX人材にはどのようなスキルが求められるのか、ここでまとめて確認しておきましょう。

データサイエンスの知見

一つ目の能力が、データサイエンスへの知見です。いわゆるデータを分析する能力のある人間のことで、近年は理系分野だけでなく、経済学などを学ぶ文系の人間においてもポピュラーとなりつつあるスキルです。

データサイエンスの力は、主に統計学を学ぶことによって得られます。最近では優秀な統計ソフトや、データサイエンス運用のフレームワークが固まりつつあるため、大人になっても気軽に学びやすく、かつ実用性が高いと言うことで、学び直しを進める人も増えています。

AI開発や本格的な統計学者になるつもりがなくとも、一般教養として統計の基礎を学ぶことは、得られるリターンの大きな選択です。

ICT活用の技術

二つ目のスキルは、ICT活用の技術です。ロボット開発やプログラミングなど、近年のIT全般のサービス運用や、開発に長けた人材の確保もまた、DX実現の上では欠かせません。

ICTとは一言で言っても、実際にどんな技術が必要なのかは自社の課題や、どんな業種でうんよするかによって大きく異なります。世の中にはどんな技術が存在し、どんなソリューションで課題を解決できるのかを提示できる教養の人物がいるだけでも、DXの進捗は大きく変わってくるはずです。

サービス設計につながる問題解決能力

三つ目は、問題解決能力です。自社が抱える課題に対して、適切なソリューションを選び抜き、設計できる能力は、多くの企業が必要としています。例え直接サービスを開発できる能力がなくとも、必要なソリューションの設計やビジョンを描けるだけでもパフォーマンスは変わってきます。

DXが前に進まない理由の一つに、何をすれば良いのかがわからないという問題があります。優秀なDX人材を確保できれば、このような停滞感を打破する突破力を得られます。

マネジメント能力

DXの進展には、調整能力に優れた人物も欠かせません。DXは組織を抜本的に改革する必要が出てくるケースもあり、その場合には社内の多くの人が業務の仕様変更を強いられることとなります。

その際、各部署との調整ができて、経営層にも了承を得られるような顔の広い人物がいれば、DXの推進をスムーズに行えます。ICTや導入技術についての知見があればあるほど、説得の際に納得感を持たせられるでしょう。

DX人材に求められるマインド

DX人材は、スキルだけでなく精神的なアドバンテージを持っていることも理想とされています。DXに必要なマインドについて、ご紹介します。

自発的な問題意識

一つ目は、自発的に問題発見を行える意識です。問題発見は能力の問題とされることもありますが、物事の見え方を変えるだけで、どんどん見つかることもある身近な能力です。

上司に言われたことだけをこなすラジコンタイプの考え方を捨て、自分で解消すべき課題を発見し、どのように解決できるかを考えて実行する力は、多くの企業が必要としています。

試行錯誤ができる柔軟性

DXは必ずしもテンプレートに則れば成功できるような取り組みではなく、時として忍耐力が試されることも多いものです。

何度実行してもエラーを吐いてしまうシステムと戦い続けたり、意思決定者へ粘り強く説得を続けたりと、地味な業務を延々と繰り返す日々も出てくるでしょう。

それでも、諦めずに何度でも挑戦できる強い心の持ち主は、DXの実現に欠かせないリーダーシップを発見することができるようになるはずです。

DX人材確保のポイント

DX人材を実際に確保していく上では、うまく枠組みを整備したり、環境を整えたりする必要が出てきます。DX人材を招きやすい場づくりのポイントについて、ご紹介します。

DX部門に大きな権限を付与する

一つ目のポイントは、DX部門への権限付与です。DXは全社的な改革となるため、なるべく上層部に近い部署が担当することが求められます。大企業でも、経営陣や社のトップの直下にDX推進室を設置している企業は、DXの成功を迅速に実現できています。

DXに大きな権限を付与することで、部門間の調整にとらわれる時間が少なくなり、トップダウンの形で迅速なDXを実現できます。DXの権限が大きいほど自由度が高く、DX人材が働きやすいと思える環境整備につながるため、人材確保を促せます。

DXに知見のある人物に人選を任せる

二つ目は、DX人材の確保はDX人材に任せる、ということです。いくら人事担当者や経営層がDX人材に関心を抱いていても、現場が必要とするDX人材は、いずれ同僚となる人物や、その方面で知見のある人間でしか分からないものです。

そのため、DX人材の確保を進めたい場合、まずは現場の声を参考にしたり、彼らにも採用活動をサポートしてもらったりするなど、現場中心的な人材確保を実現すべきでしょう。

全社的なデジタルリテラシー向上を促進する

DX人材の確保においては、全社的なデジタルリテラシーを高めることも重要です。いくらDXの余地が大きくても、あらゆるデジタル業務を一部のDX人材に任せていては、いつまで経ってもDXを実現できません。

というのも、デジタルリテラシーのない人たちに新しいシステムの説明を行って了承をしたり、長期的な研修をしたりしなければならず、パフォーマンスが上がるまでに時間がかかるためです。

あらかじめデジタルリテラシー向上に向けた研修などを実践し、ある程度ITに関する知見を深めておくことで、DX人材が余計な調整作業やスロースタートな現場に辟易することなくDXを推進してもらえます。

DX人材の不足を短期で補う方法

最後に、DX人材の確保を少しでも素早く進めていくための、有効な方法について2つご紹介します。

外部サービスの積極的な活用

まず確かな効果を発揮できるのが、外部コンサルタントの招聘や、代行サービスの導入です。DXに知見のあるコンサルタントにソリューションを検討してもらい、人材の確保やサービスの手配を進めてもらうものです。

丸投げという形になるため、コスト面やDXの実現可能性については懸念もありますが、確かな実績に裏打ちされた確実な方法を選択できるだけでなく、自社のリソースを割く必要がなくなるのは大きなメリットです。

人材不足解消につながるアプリケーションの導入

直接の人材確保が難しい場合には、業務効率化につながるクラウドサービスなどを実装して、DXの推進と人材の確保を進めるのも効果的です。最近ではDXに最適なオンラインサービスも充実しており、専門家がいなくとも気軽に運用できるものが増えています。

帳票作成や勤怠管理など、煩雑なバックオフィス業務はこれらのサービスを利用することで、簡単に導入と運用を進め、DXを前進できます。

社内の専門性の高い業務だけスペシャリストに任せ、それ以外は一般に提供されているサービスで賄う方式を採用すれば、迅速かつコストパフォーマンスに優れたDXを実現できます。

まとめ

今回は、DX人材に求められるスキルや、どんなことが彼らの確保によって実現するのかについて、ご紹介しました。DX人材の役割は幅広く、自社の課題に応じた人材の確保を進めることが必要です。

近年は専門的な技能を持った人物がいなくとも利用できるサービスの提供が増えており、簡単にDXを推進できるケースも増えています。自社の抱える課題の重さを客観的に分析し、最も効率的に解決できるソリューションの検討を進めていく必要があるでしょう。