デジタルトランスフォーメーション(DX)は短期的なトレンドではなく、今後の日本企業の成長と持続可能性を支える重要な取り組みです。また、DXの実現は企業へ速やかに多くの利益を与えてくれるということで、積極的に取り組みたい施策でもあります。

具体的に、DXはどのようなゴールを目指し、そのためにどれくらいのコストを必要とするのでしょうか。今回は、成果につながるDXを目指すために必要なプロセスや、具体的なコストなどについて、ご紹介します。

DXの定義

そもそもDXは、デジタルの力で生活をより良いものにしていこうという取り組みです。企業活動だけでなく、私たちの日常生活にもDXの余地はあるとされていますが、今日では多くの企業が喫緊の課題として取り上げているため、ビジネスの側面が大きくなった言葉です。

日本企業は世界的にもDXの浸透が遅れているとされており、早急なデジタル化によって、業務を次世代に対応させていく必要があります。

DXで得られる成果とは

DXは単にこれからのスタンダードとして重要なのはもちろんですが、実現した組織には多くのアドバンテージをもたらしてくれます。DX推進に取り組む場合、以下のような成果を目指すのが理想です。

業務効率の改善

業務効率の改善は、DXの大きな醍醐味の一つです。手作業のデータ入力を自動化したり、データベースの一元化で顧客管理を効率化し、営業支援のためにデータ活用を進めたりと、多くのメリットが期待できます。

コストパフォーマンスの向上

業務の効率化が進めば、少ない人手でも業務を遂行できるようになり、人件費などの削減効果をもたらせます。また、文書をデジタル化して紙媒体への依存度を減らせば、複合機のリース料金を削減することもでき、紙代も節約できます。

オフィスに必要なヒトやモノの絶対数を減らせば、オフィスのスケールダウンを実現し、賃貸コストをカットできます。デジタル化によって、実に多くのコスト削減をもたらせます。

新しい働き方の実現

業務のデジタル化によって、従業員のライフスタイルに最適な働き方の提案も可能になります。より円滑なフレックス制度を導入したり、家からでもオフィス同様のパフォーマンスが期待できるリモートワークを開始したりと、就労環境の多様性を確保できます。

新規ビジネスの創出

業務のデジタル化、及びオンライン対応によって、新しいビジネスチャンスを獲得することができます。

顧客データの一元化、及び自社への関心度合いのスコア化によって、これまで想定していなかった見込みの高いユーザー層へのアプローチを実現したり、地域密着型で提供していたサービスを全国エリアへ展開したりと、より大きなマーケットの開拓を実現します。

あるいは越境EC対応によって、グローバル市場への参入も容易になるでしょう。

 

【DX推進】日本企業がDXを成功させる4つの注意点・ポイント https://dxnavi.com/dx-success-4step-point/

DX実現に必要な取り組み

このような成果が得られるDXを実現するためには、具体的にどのような取り組みを進める必要があるのでしょうか。ここでは、DXを進めるにあたって必要な施策をご紹介します。

業務のデジタル化

DX推進にあたってまず必要なのが、業務のデジタル化です。帳票作成や承認作業など、これまで紙媒体を通じて行っていた業務をできる限り電子化することで、DXの大幅な推進に繋げられます。

業務プロセスの改善

業務のデジタル化に伴い、場合によっては業務プロセスを改善する必要も出てくることがあります。ICTの導入によって、どのような手続きの違いが現れるのかを確認しながら、業務の進め方を最適化していきましょう。

部門間連携の強化

DXの効果を最大限発揮するために必要なのが、部門間の連携です。営業担当とマーケティング担当の部門が異なる場合でも、同じ顧客データベースを元にして業務を遂行すれば、お互いのコミュニケーションを強化して業務効率と成果を高められます。

別個のシステムを使うのではなく、全社的に同じシステムを共有し、連携効果を高めていきましょう。

意思決定者の判断の最適化

現場環境の変化だけでなく、DXには意思決定者の文化を最適化していくことも求められます。経営者の主観や経験に依存した判断だけでなく、企業が蓄積しているデータを活用し、客観的な情報をもとに価値判断ができるような姿勢や文化を醸成しなければなりません。

データ活用を最大限高めるためには、組織ぐるみで対応する必要があります。

具体的なDXの進め方

ここでは、具体的にどのような手順でDXを進めれば良いのかについて、見ていきましょう。DX推進のアプローチは企業によって様々ですが、大抵の場合は以下のような順序で行われます。

自社課題の可視化

まずは、自社が抱える課題の可視化です。そもそもDXを進めるにあたり、どんな課題を解決したいのか、どんな問題が自社に最も負担となっている中など、DXで解決したい問題をブラッシュアップしましょう。

自社課題に最適なDXソリューションの確認

続いて、ソリューションの確認です。DXを実現するにあたり、具体的なソリューションとして利用できるサービスは非常に多様であるため、自社に最適なものをピックアップする必要があります。

多様な課題に応えるべく、今やDXソリューションは細かなニーズにも対応できる製品が豊富に揃っています。自社に適したサービスを実装できるためにも、あらかじめ課題を明確にしておくことが重要です。

ソリューションの実装

導入するDXソリューションが決まった後は、導入計画を固めて実装に移ります。システムをいつから、どれくらいの規模で導入していくのかなどを計画段階で決めておけば、実装に伴う混乱を最小限に抑えられます。

マニュアルのアップデートや研修の実施

ソリューションの実装とともに実施しておきたいのが、サービスの運用マニュアル作成と研修の実施です。新しいシステムを導入するということは、業務プロセスも改変が発生するため、導入後へ迅速に対応できるよう社員のアップデートも済ませておく必要があります。

あらかじめ研修を実施し、実際の運用にも支障が出ないよう研修することで、導入後の業務効率の低下を回避することができます。

評価と改善

ソリューションの実装後、本格的な運用を進めていきます。事前の計画通りのパフォーマンスを発揮できれば良いのですが、必ずしもその通りに行くとは限りません。

システム運用にあたり、どのようなところで支障を期待しているか、より効率を高めるにはどうすればいいかという評価を丁寧に行い、更なる効率化を目指して改善施策を実施しましょう。

スケールアップ

ソリューション導入後に成果が出てくるようになったら、今度は別の部署でも実装を進めていきましょう。いきなりの全社的な運用は、多くの混乱を招いてしまいやすいため、初めはスモールスタートをおすすめします。

段階的なスケールアップによって、社内にノウハウを蓄積できるため、迅速なトラブルシューティングと、トラブルの発生件数を抑えられます。

DXに必要な期間

それでは、こういったDXソリューションの運用に至るまでにはどれくらいの期間がかかるのでしょうか。結論から言えば、必要な期間は会社の規模や導入ソリューションなど、複数の要素が絡み合って判明するため、一概にこれくらいと言い切ることは難しいものです。

ただ、導入するソリューションによって必要期間の目処はある程度立てられるため、自社に当てはめて考えてみると良いでしょう。例えば、社内向けチャットツールの導入を、数十人規模の小さな事業部や会社で進めるのであれば、1週間程度で運用まで持っていくことができます。

逆に大規模なRPAの導入に伴うデータベースの統合やシステムの開発を進めるとなると、半年から1年以上の期間を必要とすることもあります。サービスそのものはクラウドで提供されているケースが増えているため、すぐに用意はできても、社内で体制を整えるのに時間がかかる場合もあります。

そのため、DXを検討する際には、思わぬ時間を必要とすることもあるので、とにかく迅速に動いていくことが必要になります。

DXに必要な費用

DXにかかる費用についても、導入に必要な機関と同様、一概に言い切ることは難しいところです。無料のチャットツールを少人数で運用するのであれば、初期費用と運用コストをゼロに抑えることができますが、大規模なシステムであれば数百万円のコストがかかることもあります。

ただ、クラウドサービスを利用すれば初期費用をゼロに抑えられることも増えており、コストは月額、あるいは年額の維持管理費だけで済む場合もあります。自社にサーバーを置く必要もなく、開発期間も短く抑えられるため、コストパフォーマンスはどんどん向上しています。

成果につながるDXのポイント

このように、DXはそのアプローチから必要コストに至るまで、実際のケースは千差万別です。そのような掴み所が難しい取り組みにおいても、共通して意識すべきポイントが存在します。

ここでは成果につながるDXを実現するための、3つのポイントをご紹介します。

経営層のコミットメントを重視する

1つ目は、経営層の積極的なコミットを促す必要があるという点です。どれだけ現場の人間やシステムが大幅なデジタル化を遂げても、そこから得られたデータを活かした意思決定ができなければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。あるいは、意思決定者の承認作業に遅れが出ていることで、DXの推進にも露骨に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるでしょう。

DXをスムーズに進めていくためには、まず経営層が主体的に関わっていく必要があります。DXによってどんな取り組みを進める必要があるのか、現場の課題は何かなど、丁寧な理解とDXへの順応が求められます。

高い効果が見込める現場からDXを推進する

DXをスムーズに進めていくためには、確かな成果を早い段階から証明することが重要です。例え自社に複数の課題がある場合でも、早急な対策が必要な現場を無視してDXを進めていては、成果が薄く、DXの真価を確認できない場合があります。

現場へのヒアリングを行い、喫緊の課題を抱えている部門からDXを進めていきましょう。

最終的には全社的なDXを目標とする

DXの効果を最大限に高めるためには、全社的なDXを実現することが求められます。一つの部門だけでDXを進めていても、部署をまたいだ連携効果は得られず、データ活用の効果も半減してしまいます。

最初こそスモールスタートで始めるべきですが、最終的にはあらゆる部門で統一されたシステムを活用し、業務効率を最大化することが重要です。

まとめ

今回は、具体的なDXの進め方や、目指すべき成果、そしてどれくらいの期間や費用がかかるのかについて、ご紹介しました。それぞれの会社でDXに求められる成果や、必要なソリューション、期間やコストは大きく変わってくるため、「これくらいの余裕を持てば良い」と言い切ることは難しいものです。

しかしそれでも、DXの具体的なプロセスや実施内容をある程度理解しておけば、良し悪しの判断基準を主体的に立て、自社に最適な意思決定を促すことが可能になります。実際に必要なソリューションを見直し、それらの導入にどれくらいの費用がかかるのかを比較しながら、DXに向けた準備を整えておきましょう。