データセンターインフラ管理

ここ数年で企業によるICTやクラウドの利用は大幅に増え、データセンターの大規模化や複雑化が進んでいます。規模が大きくなるに合わせて管理が煩雑になったり、運用コストが増大するといった悩みを抱える担当者が増えてきているいう問題が出てきました。

この問題を解決できると最近注目されているのが「データセンターインフラ管理(DCIM)」です。初めて聞く言葉だというひとも多いので、データセンターインフラ管理(DCIM)とは何かについて詳しく解説していきます。

データセンターインフラ管理(DCIM)とは

データセンターインフラ管理とは

まず、データセンターインフラ管理(DCIM)について説明します。DCIMは「Data Center Infrastructure Management」の略で、データセンター内の設備や機器を統合的に管理するシステムです。ここでいう「インフラ」とは、データセンターの稼働に欠かせない基盤(電源や配線、空調設備、蓄電池など)のことを指します。

これまで一般的にはエクセルをはじめとした表計算ソフトを用いてデータセンターの情報を管理していました。しかしIT技術が発達するにつれ、管理の対象となる機器が増大したため、運用にかかるコストや工数が増大してきました。そのため、データセンターインフラ管理(DCIM)を導入することで、データセンター内のインフラを統合的に管理しようと試みる企業が増えてきているのが現状です。

データセンターインフラ管理(DCIM)の機能とは

データセンターインフラ管理の機能

データセンターインフラ管理(DCIM)には、一般的に4つの機能が搭載されています。

  1. センサー機器との連携機能
  2. 電源や空調のモニタリング機能
  3. レポートやグラフの作成・表示機能
  4. 異常検知・アラート機能

データセンターインフラ管理(DCIM)を利用することによって、蓄電池や電源などのパフォーマンスを随時確認することができたり、機器に異常が発生した場合はアラートで通知することができます。

データセンターインフラ管理(DCIM)における成熟度レベル

データセンターインフラ管理における成熟度レベル

[451 Research社]という調査会社によると、データセンターインフラ管理(DCIM)を管理活動として見たると、次の5つの成熟度レベルに分けられるようです。

  1. レベル1:ハードウェアによる機器の個別監視
  2. レベル2:ソフトウェアによる機器の統合監視
  3. レベル3:データセンター資産全般の統合運用管理
  4. レベル4:外部ツールとの連携による全体最適化
  5. レベル5:データセンター管理の自動最適化

レベル5を最終的に目指したいのですが、現時点ではベンダーが提供している製品のほとんどがレベル3までの製品なのでレベルアップが期待されています。

それでは、ベンダーで提供されている製品の多い、レベル1~3までの各詳細を解説します。

[レベル1]ハードウェアによる機器の個別監視

まずは[レベル1]から説明します。データセンターインフラ管理(DCIM)のレベル1は、電源の稼働状況や温度や湿度などを計測できるセンサーをラックやデバイスに取り付けることで、個別に監視が行われている状態のことです。センサーで収集したデータは、一般的にはエクセルなどの表計算ソフトを用いて集計します。レベル1の個別監視を実現するためには、専用のセンサーを購入して、各機器に取り付けることで実施できます。しかし、個別監視のままだと管理が煩雑になってしまうという問題があるので、将来的にはレベル2以上を目指したほうが良いでしょう。そのためには、ソフトウェアとの連携を見据えて、機能や拡張性が十分にあるかを確認しておくことがとても重要になってきます。

[レベル2]ソフトウェアによる機器の統合監視

次のレベル2では、ただ専用のセンサーを購入し機器に取り付けるだけでなく、センサーで集められたそれらの情報を一元管理できるソフトウェアを利用するという段階です。専用のシステムを用いることによって、各センサーから計測したデータを収集し、ひとつの画面で情報をまとめて表示させることができます。実際に製品を選定する際は、自社の目的に応じて「オンプレミス型かクラウド型か」「センサーとの互換性はあるか」など、検討することがポイントです。

[レベル3]周辺資産も含めた統合運用管理

レベル3では、ラック周辺の機器だけでなく、その他の空調設備や蓄電池といった資産や、配線の接続状況までを一元的に管理している状態をさします。これまでのエクセルをはじめとしたツールを利用する必要がなくなり、ひとつのソフトウェア上ですべての監視・管理が完結する状況です。レベル2まではセンサー機器の監視がメインだったのですが、レベル3ではデータセンターにかかわるあらゆる資産を統合運用できるようになるのが大きな特徴といえるでしょう。

データセンターインフラ管理(DCIM)の市場規模

データセンターインフラ管理の市場規模

株式会社グローバルインフォメーションが実施した『データセンターインフラ管理 (DCIM) の世界市場・COVID-19の影響 (~2026年):コンポーネント・用途 (アセット管理・電力モニタリング・容量管理)・展開モデル・データセンタータイプ・産業・地域別』という調査によれば、データセンターインフラ管理(DCIM)の市場規模は、2021年で18億アメリカドル、2026年には32億アメリカドルに達すると予測されています。

近年、市場が拡大しているのは、ITインフラの可視化に対する需要が高まっていることや、AI活用などの次世代システムが登場してきたりしていることが要因として考えられます。
特に、2020~2021年は新型コロナウイルス感染症が流行したことによって、リモート環境での機器管理をが求められ、クラウド型のデータセンターインフラ管理(DCIM)を導入する企業が急増しました。世界や日本においてこれからも、データセンター管理のシステム化に取り組む企業が増えることが予想できます。

データセンターインフラ管理(DCIM)の導入メリット

データセンターインフラ管理の導入メリット

データセンターインフラ管理(DCIM)を導入することによって、どのようなメリットがあるかを解説します。導入するメリットは大きく2つあります。

①データベースや台帳の管理を効率化

データセンターインフラ管理(DCIM)を導入することによって、社内に散在していたデータベースや台帳を一つに集約することができるので、効率的な管理が可能となります。これまでは、部門や部署ごとにデータベースや台帳を用意して、それぞれで必要な情報だけを管理するのが一般的でしたが、社内で同じ種類の台帳が重複して作成されるなど、現物や台帳間との情報が一致しないといった問題が多く発生していました。問題の対策として、データセンターインフラ管理(DCIM)を導入すれば、データセンターに関するあらゆる情報をひとつの箇所へ集約することができるので、部門や部署間で共通認識を持つことができプロジェクトが迅速に進められるようになります。

②業務の標準化

データセンターインフラ管理(DCIM)を利用することで、全社で業務の運用フローを統一させ、属人化の解消が期待できます。特にサービス・アプリケーション開発といった上位レイヤーの業務と比べると、データセンターの運用業務は割けるリソースが少なくなりがちです。そのため、特定の担当者へ依存する傾向があり、問題として非効率やミスに気づきにくくなってしまいます。
例えば、その業務の担当者が体調を崩し休職や離職してしまうと、依存していたぶん、最悪の場合では運用業務がストップしてしまう可能性も考えられます。
データセンターインフラ管理(DCIM)を導入することによって、運用の仕組みやルールがひとつのシステムで統合管理されれば、業務のブラックボックス化を防ぐことができます。データセンターの運用業務に特化した機能や操作性を有しているベンダーが提供する製品を購入し、使い方さえ覚えれば簡単に操作することが可能です。

データセンターインフラ管理(DCIM)の導入を検討しましょう

今回は、データセンターインフラ管理(DCIM)の概要や機能、活用メリットを中心に解説いたしましたがいかがでしたか?近年は、データセンターの大規模化・複雑化が進むことで、管理すべき項目が非常に多くなっており、専用のシステムを導入する企業が増加しています。実際に導入を検討する場合は、データセンターの管理(成熟度)レベルに合わせて段階的に導入していくことがポイントです。

ぜひこの記事を参考になさって、自社のデータセンター運用の効率化を検討してください。