デジタルトランスフォーメーション(DX)は、今やあらゆる領域で喫緊の課題となっている、高い導入効果が期待されるデジタル施策です。コールセンターは人同士のコミュニケーションであるため、一見するとDXの余地はないと思われがちですが、周辺業務をDXによって改善することで、優れた業務効率化が実現します。

今回はコールセンター業務にDXが必要とされる背景や、具体的なコールセンターにおけるDX業務について、ご紹介します。

コールセンターのDXが必要とされる理由

そもそもDXは、デジタル技術を導入することで、企業が抱えている業務課題を解消し、業務効率化や生産性向上などの成果を生み出す取り組みを指します。コールセンター業務にDXが求められている理由としては、以下の理由が挙げられます。

人材が不足しているため

1つ目の理由は、人材不足です。少子高齢化の影響により、若い働き手を確保することがあらゆる領域で困難になりつつあります。そのため、人材確保に必要なコストは年々上昇し、少ない人数での業務遂行によって、人件費の削減に努める必要性が高まっています。

少ない人材で業務を遂行するためには、DXによる業務効率化は不可欠な取り組みです。

従業員の定着率を高めるため

2つ目の理由は、従業員の定着率改善です。ただでさえ少ない人数で業務を遂行しなければならない状態で、頻繁に離職者が現れてしまうと、引き継ぎ作業や人材確保のためのコストが組織を圧迫してしまい、スマートな経営状態を維持することができません。

人材コストを下げ、安定したパフォーマンスを確保するためには、DXによって業務を効率化し、現場のスタッフにかかる負担を小さくすることで、長く働ける職場づくりを推進することが求められています。

顧客関係構築の重要性が向上しているため

3つ目は、顧客との関係強化を進め、末長く取引をしてもらえることの重要性が高まっている点です。

日本は少子高齢化に伴い、働き手の不足だけでなく消費意欲の減退も見られており、市場のパイは小さくなるばかりです。海外を視野に入れたグローバルマーケットへの展開を検討する企業も少なくありませんが、日本向けの事業を展開している場合、小さくなる市場にも適応できるビジネスモデルを構築しなければなりません。

そこで近年注目を集めているのが顧客との関係強化で、顧客の数よりも質にこだわり、常に自社と取引してくれる顧客層を集めることで、安定した収益の拡大を実現することの重要性に注目が集まっています。

DXによって顧客管理を徹底し、常に最適なサービスの提供に努められるようになることで、リピーターを獲得し、末長く付き合いのできる関係構築を進められます。

コールセンターにおけるDX施策

コールセンター業務におけるDXには、例として主に以下のような施策が挙げられます。どんな取り組みができて、自社で解消すべき課題は何なのか、当たりをつけてみましょう。

顧客応対のDX

1つ目の施策は、顧客応対のDXです。コールセンター業務における顧客応対は、これまで有人での遂行が当たり前でしたが、顧客の要件に応じて応対を自動化することが可能です。

専門性の高い、複雑な相談にはまだまだ人間のオペレーターが必要ですが、簡単な相談や質問は、メールや電話といった有人応対で実施する必要はありません。

チャットボットによる自動での問い合わせ対応や、自動音声応答システム(IVR)を使った自動応対を進めれば、有人応対の負担を大幅に削減し、高度な質問に対して時間を割くことができたり、現場の負担軽減につなげたりできます。

オペレーションのDX

2つ目の施策は、オペレーションのDXです。顧客の応対記録の記入や進捗管理といった業務をDXによって自動化することで、オペレーターの管理業務負担を削減可能です。

顧客情報管理の効率化を進め、誰でも高度なオペレーションを担えるようになります。

データ活用のDX

3つ目の施策は、データ活用のDXです。ただ顧客応対記録を管理するだけでなく、ツールを活用して自動的に記録されたデータをもとに、より優れたサービスの提供を進められるようになります。

応対記録をもとに、オペレーターのフィードバックを強化したり、顧客動向をカテゴライズし、アップセルやクロスセルの機会を逃さないようにして、売上の向上に努めたりすることも可能です。

コールセンターでDXを実施するメリット

コールセンターのDXを実現することで、業務効率化はもちろんのこと、以下のようなメリットも期待することができます。

属人化を脱却できる

1つ目のメリットは、属人化を脱却できる点です。コールセンターのオペレーション業務は、オペレーターのコミュニケーション能力やトークスキルに大きく左右されるため、ただ人員を確保したからといって業務が円滑に進むとは限りません。 DXによってオペレーターの業務を効率化し、応対をサポートすることで、経験の浅いオペレーターでもスムーズに業務を遂行したり、速やかな送客につなげたりすることができます。

ケアレスミスを回避できる

2つ目のメリットは、ケアレスミスを回避できる点です。顧客情報の更新や進捗共有などを有人で対応すると、日々の業務を多忙に過ごしている場合はどうしてもミスが生まれる機会も増えていきます。

DXによって入力作業やデータ出力の業務を自動化すれば、ヒューマンエラーのリスクを回避し、質の高い業務遂行に貢献します。

コスト削減につながる

3つ目のメリットは、コスト削減です。今よりも少ない人員で、今と同じ、あるいは今以上のパフォーマンスをDXによって実現できるため、余計な人件費の発生を抑えられます。

新規人材の獲得に費用をかける必要がなくなり、余剰人材は他の人員不足の部門に回せるため、スマートな組織づくりを目指せます。

コールセンターのDXに役立つツール

コールセンターのDXに役立つツールとしては、主に以下のようなものが活躍しています。

IVR

IVRは自動音声応答システムの略称で、顧客からかかってきた電話に対して自動で応答してくれるツールです。IVRを使って、ある程度顧客の問い合わせ内容をカテゴライズすることで、専門性の高いオペレーターに案内するのを手助けしてくれます。

また、相談内容によってはチャットでの問い合わせやメールでの問い合わせ、あるいは公式サイトを参照にしてもらうなど、有人オペレーターの必要性を限りなく小さくできるような案内を届けることも可能です。

ACD

ACDは着信呼自動分配装置の略称で、問い合わせの入電を自動的に最適なオペレーターへ振り分けることのできるツールです。大量の問い合わせが入っている場合、オペレーターが対応可能になるまで入電者には待ってもらう必要がありますが、その際、最適なオペレーターの割り振りを行うのにも時間を要します。

ACDを導入することで、オペレーターへの割り振りを自動化し、振り分けにかかる時間を短縮できるので、速やかな問い合わせ対応をサポートしてくれます。

コールセンター業務の規模拡大を検討している際には、ACDの導入によって業務効率化と顧客満足度の向上の両立が可能です。

CRM

CRMは、顧客関係管理システムの略称です。問い合わせのあった顧客情報を、必要項目を入力することで、すぐに引っ張ってくることができるシステムで、顧客の購入情報やこれまでの問い合わせ履歴などを、すぐに参照し、最適な案内の提供が可能です。

チャットボット

チャットボットは、チャットシステムに導入する自動返答プログラムのことです。チャットツールは有人での対応が可能なのはもちろん、チャットボットを使って自動的に問い合わせ対応を処理することができます。

製品についてのよくある質問はチャットボットの返答システムに任せ、高度な質問のみ有人オペレーターが対応することで、業務の効率化を進められます。

まとめ

本記事では、コールセンターDXの重要性や、具体的なDX施策の一例についてご紹介しました。コールセンターは有人対応が主体となる業務が多いものの、DXによってその業務負担を大幅に削減し、現場のストレス改善やパフォーマンスの向上に役立てられます。

スマートな組織作りと顧客満足度向上の両立に役立つため、積極的に実施を検討することをおすすめします。