業務プロセスを可視化するための方法は?メリットや実施ポイントを解説

組織のDXを進めていく上で、まず必要になるのが業務プロセスの可視化です。一般業務においては様々な情報のやり取りや手続きが発生しますが、目に見えない形で処理されているケースも多く、改善の余地は少なくありません。
業務プロセスを可視化することで、様々な課題発見を促したり、改善のきっかけを掴めたりできます。この記事では、業務プロセスの可視化とはどのような手続きなのかについて、具体的なメリットや実施方法に触れながら解説します。

業務プロセスの可視化とは

業務プロセスの可視化とは、会社や部門の中で発生している業務が、どのような流れで形になっているのかを言語化したり、図式化したりする取り組みです。日々の業務の中でルーティンワークとなっている作業も、そのプロセスを可視化してみることで、はじめて改善の余地が見つかることがあります。というのも、その業務の担当者は感覚的に仕事をこなしていたり、ケースバイケースで対応していたりすることがあるからです。

業務プロセスの可視化は、そんな日々のワークフローの中の曖昧な部分や冗長になっている部分を発見するための手続きと言えます。

業務プロセスの可視化から得られるメリット

業務プロセスの可視化によって、具体的に企業はどのようなメリットを期待できるのでしょうか。ポイントとしては、以下の5つの利点が挙げられます。

①早期にボトルネックを特定できる

業務プロセスの可視化によって、ボトルネックの特定を迅速に行うことができます。業務全体の中で、最も停滞を招いている箇所を迅速に把握し、解決のための改善施策を検討可能です。一つの業務の中に改善の余地が複数あることは珍しくありません。ただ、全ての課題が等しく問題であるとは限らず、解決すべき課題の優先順位は場合によって異なります。

業務プロセスの可視化は、単に課題発見を促すだけでなく、課題の優先順位を特定する上でも役に立ちます。

②業務の属人化を解消できる

業務プロセスの可視化は、属人化の解消につながる取り組みです。業務をどのように進めるかが明らかになっていないと、担当者が不在の時に業務の進め方がわからず滞ってしまう可能性があります。また、業務を引き継ぐ際もマニュアルなどのような形で情報を共有することができず、引き継ぎに時間がかかったり、正しく業務が引き継がれず、パフォーマンスが低下してしまったりすることもあるでしょう。このような問題を解消する上で、業務プロセスの可視化は有効です。業務の手順を全て客観的に把握できるようにして、マニュアル作成や引き継ぎ作業の精度を高めることができます。

③品質向上につながる

業務プロセスの可視化が、直接業務の品質向上につながることも期待できます。どのような手順で業務が行われているのかを明確にして、管理者による確認を強化し、ミスやトラブルの発生を抑制できるからです。作業の手順がブラックボックス化していると、どうしても課題の特定やミスの原因の把握が難しくなってしまいます。業務プロセスの可視化によって、このようなクオリティの問題の解決を促せるわけです。

④コスト削減に貢献する

コストパフォーマンスを高める上では、業務プロセスの可視化は非常に重要な役割を果たします。業務のどこで無駄が発生しているのかを特定して、コストの削減を効果的に進められるからです。一つの業務あたりにかける時間を小さくして、従来よりも少ない人手で業務を遂行できるようになれば、人件費の削減につながります。

また、パフォーマンスや必要性に対して遂行そのものにかかっている業務負担の大きさも見える化し、無駄の削減を進めるためのきっかけを得られるでしょう。

⑤内部統制の強化が実現する

内部統制の強化を推進したい場合でも、業務プロセスの可視化が良い影響を与えてくれます。そもそも業務の適正を評価するとともに、不祥事の発生を予防する上では、内部統制3点セットの作成が有効です。内部統制3点セットとは、業務プロセスを図式化したフローチャート、業務の手順を記した業務記述書、業務上起こりうるリスクとその対策を明文化したリスクコントロールマトリックス(RCM)のことを指します。

内部統制3点セットの作成を効果的に進める上で、業務プロセスの可視化は必須とも言える作業となるでしょう。

業務プロセスを可視化する方法

業務プロセスの可視化の手順として最もスタンダードなのは、現場の担当者にヒアリングを行い、業務プロセスを言語化していく手法です。業務の流れを言葉や図を使って、順を追って形にしていきます。

ただ、業務プロセスの可視化を手動で行う場合は、多くの時間を必要とすることもあります。業務の規模や複雑さによってはかえって業務の停滞を招く可能性もあるものですが、そんな時に役立つのが専用の可視化ツールです。近年はDX需要の高まりに伴い、様々な業界や業務に対応した業務可視化ツールが登場しています。可視化したい業務にあったツールを導入して、効果的に業務可視化を進めると良いでしょう。

業務プロセス可視化の実施手順

業務プロセスの可視化を進める場合、以下の手順で施策を進めていくことが大切です。どんな作業が発生するのか、あらかじめ確認しておきましょう。

■現場の課題意識や問題点を把握する

業務プロセスの可視化を進める上では、まず現場でどのような課題が問題視されているのかを知ることが大切です。現場の担当者にヒアリングを行い、どんな問題が業務を阻害しているのかを確認しましょう。問題点をリストアップすることで、部門全体での問題共有を効果的に行い、改善の必要性を認知させたり、改善に前向きな空気を育むことができます。

■プロセスマップを作成する

プロセスマップの作成とは、一言で言えば業務の流れの視覚化です。業務内容をヒアリングや普段の業務を観察し、マップに落とし込んでいきます。プロセスマップの作成では、業務の始まりから終わりまでを記号化図式化してチャート化を行います。ポイントとしては、できるだけ簡素に、それでいて明快に業務をマッピングすることです。

あまり文字を多様してプロセスマップを作ると、マップが複雑化してしまい、直感的な問題発見を阻害してしまいます。記号や図を使ったシンプルなマップにすることで、課題発見と改善のアプローチを効率よく促せます。

■マニュアル化を進める

プロセスマップから得られた情報をもとに、マニュアル化を進めます。プロセスマップよりも具体性を高めて業務プロセスを見える化する手順です。テキストはもちろん図やグラフも使いながら、わかりやすく業務の内容を伝えられるマニュアルに仕上げましょう。マニュアルを読んだ従業員が瞬時に次にやることを把握できたり、どんな部門と連携すれば良いのかを把握できたりするのが理想です。

業務プロセス可視化につながる主なツール

業務プロセス可視化につながる主なツール

■iGrafx

iGrafxは、業務プロセスの可視化から分析、そして自動化に至るまでをワンストップで実現できる可視化ツールです。

複雑な学習を必要としない直感的な操作性を担保していながら、AIを用いたプロセスマイニングという高度な業務を可能にし、ボトルネックの発見と業務プロセスのモデリングを実現できます。

設計した業務プロセスはユーザーの意見も参考にしながら、会話型AIを使った自動化を促します。国内における採用実績はすでに3,500社を超え、幅広い業界に採用されながらも、銀行業界では48%ものシェアを誇る、信頼性に長けたサービスです。

■MITERAS仕事可視化

MITERAS仕事可視化は、PCの操作をログとして記録し業務の可視化を進められるツールです。勤怠管理データと連携することでPCの利用時間と照会し、残業発生の有無を確認したりができます。テレワークにおける過剰労働の発生や休日出勤の抑制を促すことで、ホワイトな職場環境の構築に役立てられるサービスです。

■みえるクラウドログ

みえるクラウドログは、AIを使って労務データの取得を実施し業務プロセスの可視化を進められるツールです。作業時間や作業内容、勤務状況や残業時間などを総合的に分析して、それぞれの業務におけるパフォーマンスを評価したり、残業の発生を確認したりすることができます。各業務において発生する業務上の無駄の発見と削減や、リソース配分の最適化などに役立てられるサービスです。

■ワークライフログ

ワークライフログは、労務管理AIが自動で従業員の勤務状況やパフォーマンスを評価して、改善を促すことができるサービスです。現在の業務プロセスと目標数値を分析し、どこをどのように改善すれば良いかを、データに基づいて客観的にAIがプランを提示してくれます。業務の状況を逐一把握し、担当者に「次何をすべきか」を自動で伝えてくれる機能も便利なツールです。

業務プロセス可視化を行う際のポイント

業務プロセスの可視化を実践する上では、

  • 可視化の範囲を決めておく
  • KPIを設定する

ことが重要です。業務の全てを一気に可視化しようとすると、業務プロセスの改善を進めるのに多くの時間がかかります。まずは問題の多そうな業務に焦点を当て、一つずつ対処していくと良いでしょう。また、可視化に際しては事前にKPIを設定し、改善目標を短期的に追いかけることも重要です。KPIを設定しておくことで、直近でどのような数値目標を達成すれば良いかの目処を立て、アクションを促しやすくなるからです。残業時間の削減、十分な業務時間の確保、リードタイムの短縮などを参考にしてみると良いでしょう。

まとめ

この記事では、業務プロセスの可視化とはどのような取り組みなのかについて、具体的なツールや方法に触れながら紹介しました。業務プロセスの可視化を成功に導く上では、どのような課題を解決したいのかを考えることが重要です。課題設定が明確になるほど、施策の方向づけを行いやすいからです。まずは現場へのヒアリングなどを通じて、解決したい課題や問題点を把握し、有意義な可視化を進めましょう。

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