業務改善で必ず押さえるべきポイントと、実施の流れを解説

自社の生産性向上のため、業務改善に取り組む企業が以前と比べて増えてきました。一方で、「どこから着手すればいいのか分からない」「どういったポイントに気を付ければいいのかを知りたい」と考える担当者も多いはず。

そこでこの記事では、業務改善を実施する際に押さえておきたいポイントを、実際の流れとともに解説します。わかりやすい例を挙げながら説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。

そもそも業務改善とは?

そもそも業務改善とは、社内の業務フローや目的を見直し、改善につなげる活動のことです。業務改善を達成すると今までよりも業務が効率化し、生産性の向上やコスト削減を期待できます。

業務改善と似た言葉に、「経費削減」や「業務効率化」があります。一見違うように思えますが、これらは業務改善の一環として取り組む内容です。また「業務改革」という言葉もありますが、こちらは業務改善よりも、より大きな単位で会社全体を抜本的に改革する取り組みのことをいいます。

業務改善では、社員が日々おこなう「日常業務レベル」で課題を把握し、改善していくのが特徴です。

業務改善の必要性

それでは、なぜ業務改善が必要なのでしょうか?理由のひとつに、労働人口の減少や労働生産性の低下が挙げられます。

近年は少子高齢化が進み、労働市場に参加する人が少なくなってきています。従来のようにマンパワーで業務をこなすことが難しくなってきているうえ、従業員一人当たりの労働生産性が伸び悩んでいるのが現状です。

最近では、政府が「働き方改革」を呼びかけたり、コロナ禍にあってDXが促進されたりするなど、日本全体で業務改善に向けた取り組みが積極的に進められています。日本の労働市場の現状を鑑みれば、生産性向上やコスト削減に向けた業務改革は必須といえるでしょう。

社内で業務改善を進める流れとポイント

社内で業務改善を進める流れとポイント

ここでは、社内で業務改善を進める流れや、気を付けるべきポイントについて解説いたします。

1.業務や課題の洗い出し

まずは、自社の業務や課題を洗い出すことからはじめましょう。どの部門がどのような業務をおこなっていて、どれくらいの時間がかかっているのかを把握することが大切です。

たとえば、以下の情報をエクセルや専用のツールに記入します。

  • 部署名:営業部門
  • 作業場所:オフィスのデスクトップパソコン、もしくは社用のノートパソコン
  • 業務名:営業日報の作成
  • 業務の目的:案件の進捗情報を共有するため
  • 作業工程・ツール:エクセルを使用して自由なフォーマットで作成
  • 業務にかかる時間:合計30分ほど。担当者によってバラバラ
  • 業務が発生する頻度:1日に1回程度。一社の訪問が終わる度に都度作成している担当者もいる
  • 業務の課題:担当者ごとにフォーマットがバラバラで、確認しづらい。日報の作成に追われ、訪問に費やす時間が少なくなってきている

 

営業部門であれば、上記の営業日報の作成以外にも、提案用資料や経費精算書、請求書など、さまざまな書類作成業務が発生します。また、顧客訪問、得意先への定期的なメール送信、電話対応など、営業担当者がやるべきことはたくさんあります。

ここでのポイントは、とくに課題となりそうな業務を絞り込んでから詳細を把握することです。部門や部署によっては、業務の数が数百に及ぶこともあるため、すべてを洗い出すときりがなくなってしまうでしょう。

加えて、現場の担当者へヒアリングを実施し、具体的にどのような業務に課題を感じているのかを聞き出すことも大切です。例で挙げた「報告書作成に30分程度かかっている」「日報の作成に追われてしまい、訪問に割ける時間が減ってきている」といった情報は、現場の担当者の声を聞いたからこそ分かるものです。

2.施策の検討

業務や課題の洗い出しが終わったら、それぞれに対する施策を検討します。以下では、主に取り組みが可能な3つの施策をご紹介いたします。

手段は変更せず、プロセスだけを変更する

1つ目は、業務を遂行するための手段には手を加えず、プロセスのみを変更する方法です。先ほど挙げた「営業日報のフォーマットがバラバラで確認しづらい」の例だと、既存のエクセルによる作成手段は変えず、フォーマットのみに変更を加えて効率化を図ります。

プロセスだけの変更であれば、今までと業務の遂行方法が変わらないので、現場の担当者に受け入れてもらいやすいのがメリットです。ただし、業務によっては効果が出ない場合もあるので、その際は別の施策を検討しましょう。

業務を丸ごとアウトソーシングする

3つ目は、業務を丸ごとアウトソーシングする施策です。とくに業務プロセスを外部委託することを「BPO(Business Process Outsourcing)」と呼び、最近では活用する企業が増えてきています。

BPOで依頼できるのは主に、経理や総務、人事など、直接利益を生まない「ノンコア業務」が中心です。自社で比較的重要度の低い業務を外部に委託することで、従業員をほかの重要な業務へ回せるようになります。

以上、業務改善で実施できる3つの施策をご紹介いたしました。改善施策を検討する際は、現場の担当者とよく話し合うことが重要です。「その案で本当に業務は改善されるのか」「かえって業務フローが複雑になってしまわないか」といった点を入念に確認しましょう。

3.施策の優先順位付け

続いて、施策の優先順位付けをおこないます。すべてを同時並行で進めると、現場が混乱する可能性があるため、ひとつずつ順に取り組むのがポイントです。具体的には、以下に当てはまる業務へ優先的に取り組みましょう。

  • 即効性のある業務

  • 改善へすぐに着手できる業務

たとえば、「書類作成のフォーマットを統一する」「無料のビジネスチャットを導入し、コミュニケーションを一元管理する」といった施策は、すぐに取り組めるうえ、大きな改善効果を期待できます。対して、「会計システムを刷新する」などの比較的大きな改善施策は、人手や予算、時間が必要になるため、どのタイミングではじめるべきかを慎重に検討すべきです。

社内の業務改善を成功させるには、まず目に見える成果を出し、現場の理解を得ることが重要。仮にひとつでも成功すれば、ほかの改善施策も理解してもらえ、スムーズに進めやすくなります。

4.数値目標の設定

取り組むべき施策が定まったら、可能な範囲で数値目標を設定しましょう。改善施策に効果があったのか、どの部分に不足があるのかを理解するために重要なステップです。

具体的には、改善後の業務時間、削減予定の金額、現場の満足度などです。ただし、必ずしも定量的に測れる業務ばかりではないため、むやみに設定するのは避けましょう。

5.施策の実施・定期的なチェック・評価

最後に、施策を実施し、定期的にチェック・評価します。定量的な目標数値を定めているのであれば、数値目標に達しているかどうかを、定性的な目標であれば、現場の声を聞いたりしてスムーズに業務が進められているかを確認しましょう。

ここで重要なのは、短期的に成果を追い求めないことです。なぜなら、業務改善を実施してから現場が慣れるまでに時間がかかるため。不足している内容は少しずつ改善していき、中長期的な目線で成果を出すイメージで取り組んでください。

業務改善で使えるフレームワーク4つをご紹介

業務改善で使えるフレームワーク4つをご紹介

ここでは、企業が業務改善をおこなう際に使えるフレームワークを4つご紹介いたします。

ECRS(イクルス)

ECRS(イクルス)は、「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(再配置)」「Simplify(単純化)」の頭文字をとった業務改善のためのフレームワークです。主に製造業で用いられますが、その万能性の高さから、一般の企業でも多く活用されています。

具体的には、以下の内容を中心に改善策を検討します。

  • Eliminate(排除):現状の作業をなくせないかを検討します。
    (例:従来から続いている無意味な業務慣行なくす、無駄なコミュニケーションを減らす、など)
  • Combine(結合):複数の業務をひとつにまとめられないかを検討します。
    (例:分業していたものをひとつにまとめる、システム間連携でデータを統合する、など)
  • Rearrange(再配置):作業工程を入れ替えたり、担当者を変えたりして、業務を効率化できるかを検討します。
    (例:作業を行う順番を変えてみる、権限を下位の責任者へ移譲する、など)
  • Simplify(単純化):既存の業務をより簡素化できないかを検討します。
    (例:書類を電子保存して検索性を高める、ツールやプログラムを用いて定型業務を自動化する、など)

ロジックツリー

ロジックツリーとは、思考や課題をツリー状にして要素分解し、物事の全体像や本質を理解できるよう手助けするためのフレームワークです。

具体的には、まず最上位概念としてひとつの課題を設定し、明記します。次に、その課題を要素分解し、それぞれをひとつ下に並列で記載して、最上位概念と枝分かれするようにしてつなぎます。そして、要素分解したものをさらに要素分解し…、最終的には枝分かれしたツリーのような形状になるのが特徴です。

ロジックツリーを作成する際は、「モレなくダブりなく」を意味する「MECE」を意識しておこなうことが重要。業務改善においては、課題を原因究明する際に活用できます。

QCD

QCDは、「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」の3つの頭文字をとった造語。主に、製造業で顧客満足度を向上させるためのフレームワークとして使用されています。

QCDの考え方は、製造業以外の業務改善の現場でも用いることが可能です。たとえば、施策の目的を検討する際に、それが「サービス品質を向上させるための取り組み」なのか、「コストを削減するための取り組み」なのか、あるいは「納期を早めるための取り組みなのか」といったことを明らかにできます。

また、Quality・Cost・Deliveryのそれぞれはトレードオフの関係になっているのが特徴。「業務改善で品質を追求しすぎて、かえって原価が上がっていないか」「納期を早めるための施策を導入した結果、品質がおろそかになっていないか」といったバランスを把握できます。

施策内容が、会社全体の目的とどのようにかかわっているのかを把握したいときにおすすめです。

緊急度・重要度のマトリクス

「緊急度・重要度のマトリクス」は、世界的に有名な本である「7つの習慣」の著者、スティーブン・R・コヴィー氏が発案したフレームワークです。タスクを「緊急度」と「重要度」の2つの軸で捉え、本当に優先すべきものから着手するように促します。

具体的には、以下のように分類し、上から順に優先的に取り組みます。

・緊急度も重要度も高いタスク
・緊急度は低いが、重要度が高いタスク
・緊急度が高いが、重要度は低いタスク
・緊急度も重要度も低いタスク

とくに後回しにされがちなのが、2番目の「緊急度は低いが、重要度が高いタスク」です。重要性が高いと分かっていても見逃されやすく、ややもすると、重要度の低い3つ目や4つ目のタスクへ手を出してしまうことがよくあります。

業務改善の現場では、業務の洗い出しや施策の優先順位付けのステップで活用することで、より重要度の高い施策へ取り組めるようになるでしょう。

業務改善の流れとポイントを理解して、実際に取り組んでみよう

この記事では、業務改善の概要や、流れとポイント、そして便利なフレームワークについて紹介いたしました。まとめると、以下のポイントに気を付けることが大切です。

  • 現場の担当者とよくコミュニケーションを取る

  • 効果が出やすい施策から順に取り組む

  • 目標を設定し、長期的な目線で改善活動を続ける

企業が取り組める改善施策は、無料ですぐにはじめられるものから、比較的大きな労力を必要とするものまで、さまざまにあります。自社の業務や課題を把握し、優先順位の高い施策から順に実施しましょう。

ぜひこの記事を参考に、業務改善に取り組んでみてください。

超上流工程の進め方