企業が更なる成長を求める上では、既存の業務の定期的な見直しを図る必要があります。ただビジネスの規模を拡大するだけでなく、既存業務の改善を行うことで、利益率を高めたり、従業員の業務効率化に努められます。

今回は、そんな業務改善を実施する上で最適な手法や、成果につながる業務改善の進め方について、ご紹介します。

業務改善とは

業務改善は、一言で言えばその名の通り業務の改善につながる施策を実行することを指します。業務をより良いものへと改善するためには、既存業務における課題を発見するだけでなく、確かなソリューションを実施しなければなりません。

既存業務のどのような点に問題を抱えているのか、あるいは改善の余地があるのかをうまく発見し、その問題に最適な解決策を提案、及び実行に移せる力と枠組み作りが、効果的な業務改善には不可欠です。

また、業務改善は一度取り組めば良いというものではなく、できるだけ定期的に実施するのが理想的です。そのため、継続して取り組める環境づくりについても、一度見直してみる必要があるでしょう。

業務改革(BPR)との違い

業務改善と似たような言葉として、業務改革と呼ばれるものもあります。文字だけを見れば「改善」か「改革」かの違いというわけですが、取り組む内容については大きな違いがあります。

まず、業務改善についてはあくまで既存業務の見直しを図るもので、通常業務における無駄なフローや、コスト負担の大きい部分を改善し、スマートな業務へとアップデートするための取り組みです。

一方の業務改革は、抜本的な取り組みによって業務を再構築していく大掛かりなプロジェクトです。事業そのものを見直すところから初めていく必要があるため、気軽な手直しのつもりで取り組めない点は注意しなければなりません。

また、業務改革の一環として、目先の業務改善に取り組まなければいけないケースもあります。業務改善と業務改革は完全に別個のものではなく、業務改革の一環として業務改善に取り組むケースがあることも覚えておきましょう。

業務改善で得られるメリット

業務改善は業務改革よりも比較的カジュアルに取り組めるプロジェクトですが、得られるメリットは決して少なくありません。主に期待できるのは、以下の3つのメリットです。

コストパフォーマンスの改善

1つ目のメリットは、コストパフォーマンスの改善です。業務上発生していた、無駄な費用を削減することにより、従来と同じ生産性を発揮しながら経費削減を実現できます。

経済的な業務形態を実現することで、利益率の改善につながります。

生産性の向上

2つ目のメリットは、生産性の向上です。金銭的な業務上の無駄を削減するだけでなく、余計に発生していた業務フローやコミュニケーションコストを減らしていくことにより、就業時間を圧迫することなく生産力を高められます。

時間内に業務を遂行できる環境を構築できれば、生産力向上はもちろんですが、残業時間を減らすことができ、労働基準法に反しない働き方の推進や、残業代の削減にもつながります。

従業員にとって働きやすい職場を提供し、定着率の改善にもつながるでしょう。

商品・サービスの品質向上

3つ目のメリットが、商品やサービスの品質向上です。余計なコストを削減すれば、その分サービスや商品をこれまでよりも安価に提供し、競合との差別化を容易に実現できるようになります。

また、価格への上乗せを抑えながら、従業員のパフォーマンスを最大限高められる業務環境を構築できるため、クオリティの改善にも期待が持てます。働きやすく、能力を存分に発揮できる企業となれば、優秀な人材も集まりやすくなります。

既存の従業員にとって優れた場であることはもちろん、将来有望な新しい人材の獲得で、これまでにない高品質な商品や、新しいビジネスモデルを構築できるでしょう。

業務改善で取り組むべき問題の事例

業務改善とは一言で言っても、具体的な取り組み内容は企業が抱える課題に応じて様々です。ここでは、業務改善において目指すべき目標設定について、一般的な事例を見ておきましょう。

無駄な作業の削除

業務上発生する無駄な作業の見直しは、業務改善における典型的な取り組みです。通常業務において、いつ、どんな作業がどれくらいの無駄を生んでいるかを洗い出し、それらを削除することでどのような効果が得られるのか、検討してみると良いでしょう。時間的コスト、金銭的コスト、精神的コストといった多様な側面から成果が期待できます。

人員配置の最適化

2つ目に、人員配置の最適化です。上記のような業務の無駄を省く上では、ICTの活用などはもちろんですが、仕組みだけでなく人の配置にもテコ入れを加える必要があります。

適材適所という言葉がある通り、従業員一人一人の能力の違いに目を向けることで、最適な配置が見えてきます。彼らのスキルセットを可視化できるシステムを実装できれば、ベストな人員配置でパフォーマンスを最大化できます。

効果的な人材育成の実現

3つ目は、人材育成の最適化です。長期的に生産性を高めていくためには、既存のスキルセットに満足するだけでなく、先を見据えた人材育成にも着手する必要があります。近年注目されているデジタルトランスフォーメーション(DX)も、肝心のDXに携われる人材が市場に不足しているということで、大手企業を中心に自社でのDX人材育成が進んでいます。

自社におけるカリキュラムを見直し、パフォーマンス改善につながる新しい研修システムの導入や、長期的視野を前提としたカリキュラムの抜本的な見直しが求められます。

コア業務・ノンコア業務の明確な分類

業務の無駄を省く上では、コア業務とそうでないノンコア業務を明確に分類して、対処法を考えることも重要です。組織にとってどんな業務が売上に直結しているのか、事業と直接関係のない業務はどれかを把握することで、人員の配置や分配、予算の見直しを効率よく進められます。

ノンコア業務と判断できた業務については、外部にアウトソーシングしたりと、業務パフォーマンスはそのままに、効率化に取り組めるケースも出てきます。業務を一括りにしないアプローチを進めることも大切です。

業務改善の進め方

業務改善で取り組むべき問題やゴールが明らかになったところで、続いては業務改善そのものの進め方について見ていきましょう。適切な手順を踏みながら業務改善に取り組むことで、確かな成果へと結びつけることができます。

問題発見と分析

業務改善において最初に取り組むべきなのが、問題発見と分析です。業務上、どのような部分に問題が発生しているのか、問題としての重要性はどれくらいで、どれくらいの負担を強いられているのかなど、定量的に問題を把握できるのがベターです。

また、問題を洗い出せた後は、それがどのような原因で発生しているのかを分析しましょう。業務上のどのようなところに負担の原因があって、慢性化しているかを理解し、解決に向けた糸口を掴みます。

解決策の検討

問題への理解が深まった後は、具体的な解決策の検討です。どんな仕組みづくりを進めていけば良いのか、どんなソリューションサービスが有効なのかなど、適切な選択肢が選べるよう多方面から考えていきましょう。

どれか一つを選ぶというよりも、多方面から解決策に取り組むことがベターなケースもあります。無理に一つを選び切るよりも、時間や予算が許す限り、色々と試してみることが重要です。

ソリューションの実行と評価

解決策の選定が終わった後は、実行フェーズに移ります。システムを導入する際には、ベンダーの選定や実装に向けた要件定義の打ち合わせなども入るため、時間をかけて取り組む必要があります。

ソリューションを実装し、運用が始まった後は、定量的な効果測定を実施しましょう。導入した施策がどれくらいの効果を発揮しているのか、期待していた通りの成果を得られたかどうか、見直す作業が大切です。

期待していたような成果が得られなかったときはもちろん、期待以上の成果を得られた場合でも、きちんとその要因を分析することが大切です。アクションに対する分析も忘れずに行い、次回の業務改善に向けてレポートを作成しておきましょう。

業務改善につながるソリューションの例

続いて、業務改善につながる具体的なソリューションの例についても見ておきましょう。多様な解決策が揃う中、主に採用されているのが以下の2つです。

業務の可視化

業務の可視化は、ポピュラーな業務改善施策の一つです。申請から承認までのワークフローを見える化したり、経費精算のオンライン化、あるいは人事評価の指標をシステムで管理したりなど、様々な方法で可視化に取り組むことができます。

業務の可視化において重要なのが、Webサービスやソフトウェアの導入・刷新です。最新の機能を利用できる環境へアップデートすることで、高い効果を見込めます。

ICTの導入

業務の可視化以外にも、ICTの導入は有効です。勤怠管理システムを導入して、自宅や出張先から打刻を行えるようにしたり、ホワイトボードをオンライン化できるコミュニケーションツールを導入して、リモート環境でも円滑なコミュニケーションが取れたりと、様々なやり方があります。

目的や課題に応じて、ICTを使い分けましょう。

業務改善に役立つフレームワーク

業務改善の効果を最大化するためには、昔から使われてきたフレームワークを有効活用することが大切です。ここでは業務改善に活躍する、ポピュラーなフレームワークを3つご紹介します。

PDCAサイクル

PDCAサイクルは、最もポピュラーな業務改善フレームワークと言えます。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのフェーズを順番に繰り返すことで、効率よく結果につながる改善施策を展開できます。

改善施策をやりっぱなしに投げてしまうのではなく、実施した計画を評価し、そこからさらに改善を加えることで、業務改善の効果を高められる取り組みです。

ロジックツリー

ロジックツリーは、発見した問題について、その原因をロジカルに分析していき、真の要因を発見するためのフレームワークです。

問題に関連していると考えられる要因をツリー状に明記していき、そこから真因を発見するため、網羅的な要因の分析を行えるのが特徴です。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析は、顧客に商品やサービスが届くまでのプロセスにおいて、最も価値が大きいのはどの段階か、ということを特定する手法です。

どんな強みを、どのプロセスで発揮できるかは企業によって異なるため、バリューチェーン分析を実施することで、自社の強みを再確認し、顧客へ届けるべき価値に注力したビジネスを展開できます。

業務改善の際に押さえておくべきポイント

業務改善の実施においては、以下の3つのポイントを整理し、改善フローに取り入れることが大切です

課題と目標を明確にする

1つ目のポイントは、課題と目標を明確で具体的にすることです。業務改善施策は、何らかの課題を発見し、それを解消することで成果につながらなくてはいけません。どんな問題を解決するのか、その問題を解決して、どのような成果を得るのか、明らかにしてから進めましょう。

コスト20%減、売上1.5倍達成など、数値目標を立てられるのがベターです。

現場へ一定の裁量権を与える

2つ目のポイントは、現場へ裁量権を与えることです。意思決定権を持つ人物が現場に近しいのであれば問題はありませんが、そうでない場合、現場のニーズにあった業務改善施策を行えない場合があります。

こういったギャップを回避するためにも、ソリューションの導入の際には現場へのヒアリングやシステムのテスト運用などを丁寧に行い、最適な選択肢を選べるような決定権を与えてやることが望ましいです。

ICTの積極的な活用を促す

3つ目のポイントは、ICTの活用です。業務改善は既存の仕組みに改善を施す取り組みですが、アナログ業務が多い、老朽化したシステムを使い続けているという場合は、新しいサービスの利用も積極的に検討するのがおすすめです。

まとめ

業務改善は定期的に取り組む必要があるため、長期的なプランを見据えた実施が求められます。最新のICTを活用することで、業務の可視化やデータの数値化を容易に行えるだけでなく、クラウドサービスであれば多様な働き方にも対応できるため、大いにメリットを活かせます。

最適なソリューションを検討し、行動へ移していきましょう。

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