人が行っていた業務をロボットによって自動化する「RPA」の市場規模は、現在急速に拡大しています。業務効率化や働き方の変化に注目が集まる中で、このような傾向は今後も続いていくことになるでしょう。そこで、この記事ではRPAの市場規模の実態や、今後も伸びていくと考えられる具体的な背景などについて解説します。
RPAの市場規模
株式会社矢野経済研究所が2020年に行った調査によると、RPAの市場規模(RPA関連サービスおよびRPAツール製品の合計値)は、2016年にはわずか85.2億円であったのに対し、翌年2017年には178億円、2018年が338億円、2019年には529.7億円と急激な成長を見せています。
この数字を対前年比で比較すると、2017年が約2.1倍、2018年が約1.9倍、2019年が約1.6倍となっています。なぜこのように急激な伸びを見せたかというと、日本国内では金融業界がRPAに注目し導入を進めたことがきっかけと考えられています。事例が増えることで導入効果が可視化できるようになり、同じ効果を狙った導入が促進されていったのです。
導入規模の増加比率自体は少しずつなだらかになっていますが、市場規模自体は今後も大きくなっていくことが予想されています。RPAの導入にまとまった資金をかけるケースがある程度落ち着いた後も、すでに導入済の企業がメンテナンスや拡大に投資するケースが増えていくことから、今後も一定の増加が見込まれるでしょう。
RPAが注目される理由と今後の課題
RPAがこれほど大きく市場規模を拡大している背景には、導入事例から考えられるいくつかの理由があります。
エラー防止に役立つ
RPAは機械による業務の自動化なので指示された通りに、確実に遂行してくれます。そのため、コピペの範囲指定ミスや貼り付け場所のミスといったエラーは起こりません。このようなヒューマンエラーを防止でき、業務効率を大きく上げられることも大きな魅力です。
コストダウン・人的リソース不足解消につながる
導入時にはシナリオ設計といった手間がかかりますが、一度導入してしまえば大幅な人件費の削減が可能になります。
これは、社内の人材不足の解消にもつながる大きなメリットです。単純作業はロボットに任せて、社員は人にしかできない複雑な業務にあたることができることから、採用や人材育成がうまくいっていない企業の問題解決にも効果的です。また社員にはより生産性や創造性の高い、やりがいのある仕事を任せることになるため、個々のモチベーションアップやスキルアップにもなるでしょう。
このように多くのメリットがあるRPAですが、自動化が可能な業務がある程度限られてしまうという課題もあります。データをもとにした見積書や請求書の作成、顧客リストの作成といった、コピー&ペーストがメインになるような作業は任せられても、手書きの書類や画像がかかわる業務を自動化するためには、AIやOCRなどを組み合わせて対処する必要があります。
近年、このような複雑な業務の自動化に関する開発環境も整いつつありますが、一般に広く普及していないのが実情です。また、開発のハードルが高いと感じられたり、社員の理解が得られなかったりして、結局従来の方法でやり方が続けられているケースもあります。
RPAの市場規模は今後も拡大傾向が続くと予想される
大きな成長を見せているRPAの市場規模ですが、この拡大傾向は今後も続いていくと予想されます。
10倍以上の成長が見込まれるRPA業界
先述の矢野経済研究所の調査によると、2016年には85.2億円だったRPA市場は、2021年には1,020億円規模(予測)と、約12倍近い成長が見込まれるとされています。
政府の進める働き方改革の中に含められているペーパーレス化は、こうしたRPAの導入と相性も良く、データ間の連携がスムーズにいく可能性もあります。業務効率化やIT化が進む中で、今後も飛躍的な発展を続けると考えて良いでしょう。
AIの発達が今後のカギ
今後の成長のカギとなるのは、RPAにAIを組み込むことによってより複雑な業務を自動化する技術です。すでに導入済みの企業の中にも、ごく限定的な単純作業しか自動化できていない企業が存在しています。このような企業が、AIを組み込んだRPAの導入によって、より幅広い分野の業務を自動化させていくことで、より一層浸透していくことになるでしょう。
今後は、AIをどのように組み込み、活用していくのかということや、組み込む際の開発ハードルをいかにクリアするかといった点が業界の課題になっていくと予想されます。
最後に
RPAの市場規模拡大が続くとされる理由は、業務の正確性や効率化、コストダウンといった企業のニーズにマッチした手法であることです。導入によって単純な業務を自動化することは、人材不足の解消やより高度な人材を育成するという観点からもメリットがあると言えるでしょう。
AI技術の発展により、さらに幅広い業務の自動化も可能になっていくことで、今後も長期的な拡大傾向が続くと予想されます。