作業効率改善のためRPAの導入を検討しているけれど、どのように進めて行けば良いのか分からない、RPAの企業選定に悩んでいるといった方もいるでしょう。ここでは国内でも大手物流会社(以下A社)の導入事例と実際に運用するまでの流れをご紹介します。導入選定基準や活用方法に悩む方はぜひ参考にしてください。
予測される労働人口の減少による人材不足
今回導入事例として紹介するA社は、日本国内だけではなく様々な国をつなぐネットワークを持っており、陸路だけではなく海路や空路など様々な輸送方法で世界の物流を支えてきました。しかし、今や物流業界は確実に荷物の輸送ができていれば良いというだけでは無くなっています。荷物を配達しつつもプラスアルファのサービスが提供できなければ、他社との競争に勝つことが難しくなってきているのです。
しかし現在の日本では、どの業界においても従業員の確保は容易ではありません。今後労働力が不足されることは大いに予想される自体なのです。今いる人材の流出抑制と新たな人材の確保。その2点を果たすためには、早急に社員が働きやすい職場環境を作り上げる必要がありました。
その一環としてA社が検討したのがRPAの導入です。担当者が目指したのはまず事務作業の効率化による労働時間の削減でした。それによって新しいサービスを展開するための時間を捻出することが可能となります。そして大きな目標には、社員が安心して働ける環境の整備がありました。
既存システムや作業環境にマッチしたRPAの導入
A社の導入事例では、まず利用するRPAツールの選択から始まりました。導入を検討し始めたのは2017年の終わり頃です。当時国内で提供されていた複数社のRPAツールを比較し、様々な条件に合うものを探しました。そして最終的にUiPathの使用が決定したのは、翌年の3月でした。
UiPathを選定した大きな理由はその汎用性の高さです。社内で事務作業に携わるスタッフが使用するWeb環境は、状況や案件によって異なります。システムによっては利用できるブラウザが限られていたのですが、UiPathはその限定がありませんでした。更に注目されたのが、A社で既に用していたシステムとの連携です。当時稼働していた200種類以上ものシステムにも対応できたのがUiPathでした。
また、UiPathの世界的なサポート体制も大きな魅力です。将来的には海外の拠点でもRPAを検討していた同社にとっては、すでに海外にてシェアを多く持っているUiPathは選択理由の1つとなりました。
正式な導入前には7つの業務に絞ってRPAの検証を行い、試行錯誤を繰り返しました。複雑な業務も対象にしたため、すべてが上手くいったわけではありません。しかしそれによってRPAに適した作業とそうでないものを判別することもできました。
また社内での検証を積み重ねることで実績にも繋がり、最初にRPA化を希望する業務を募ったときには75案件だったものが、半年後には3倍以上に増加したのです。
更に社内インターネット研修においてRPAについての学習を行ったところ、事務作業者のが9割近く参加し、RPAの有用性を周知できました。
累計34万時間の業務削減とストレスの軽減
社内にてRPAの認知度を高めることに成功したA社は、次に開発の進行に着手しました。導入までの主導は業務改善担当のIT部門が行っていましたが、ここからは実際にRPAを利用する部署も関わる必要が生じてきます。そこで各部門からRPA推進担当者選出し、IT部門と協力して進めていく体制を整えました。推進スタッフの人数は全社で150名以上。教員段階に合わせたランクを適用し、育成を進めました。それによってIT部門が開発したロボットを各部門の担当者が実際の業務にて使用するという、部署を跨いだ連携が可能となったのです。
開発したロボットはUiPathの管理ツール、Orchestratorを使用して集中管理しています。複数のロボットに適宜作業を振り分けることができるため過剰な負荷が減り、システムエラーの発生を防止できるのです。予定された作業がトラブルによって中断することなく続けられるという点も、UiPathの大きなメリットです。
A社がRPAの導入を検討し始めた2018年から約2年、今では約34万時間以上の作業時間の削減に成功しています。
また、事務作業によるスタッフのストレスも軽減されました。ミスが許されない作業を自動化することでプレッシャーを感じることなく業務に取り組めるようになったのです。
まとめ:物流業の新たなサービス展開を視野に入れた取り組み
今回導入事例を紹介したA社では、2021年度の終わりまでには合計で100万時間を削減することを目標とし、達成に向けた様々な取り組みが検討されています。その一つが物流業務に多い手書き伝票や帳票に関する改善です。AI-OCRの読み込み能力ととRPAシステムの連携を導入することで、ドライバーの負担を大幅に軽減できると考えています。
また、現在使用しているシステムの入れ替えの際にもRPAを活用することで大幅な経費の削減と安定的な連携が可能です。海外でのRPA運用もスタートしており、新たな物流サービスのあり方を模索するA社において、これからますますRPA活用の幅は広がるでしょう。