RPAの利用を検討する際、その目的は企業によって様々です。今回紹介するのは製薬会社(以下B社)です。薬を開発、製造販売する製薬会社と、主に事務系の作業を自動化するRPAには一見大きな関係はなさそうに感じられるかもしれません。しかし、より良い製品を低コストで販売するためにも、企業全体のコストカットは欠かせないものとなります。
B社における導入事例を参考に、自社での活用方法と導入のメリットを検討してみてください。
コストを抑えることでより良い商品を。安定した経営のためのRPA導入
導入事例のB社は医薬品メーカーです。新しい薬の開発において莫大な費用と時間を要しますが、その薬を独占的に製造・販売できる期間は永遠ではありません。特許期間が切れる前に新しい薬を開発することで、安定した経営が図られてきたのがこれまでの製薬業界の形でした。企業の中心である新薬の継続的な開発において、B社では最新のAIの導入やデジタル技術の導入を進めてきました。
そして同時に検討したのが事務的な管理業務の効率化です。RPAの導入によってオフィス作業を集約し、システムに自動で実行させることでコストの削減が図れるのではないかと考えました。
大きな企業であるほど、多くの場所で同じ内容の事務作業が発生しやすくなります。それを一カ所に集中させることで少ない人数でも行えるようになり、コスト削減が可能となります。
また、必要な情報の整理や管理業務の効率化を図ることで新薬の研究や製造をスムーズに行うことも目的の一つでした。RPAを活用することで研究に必要なデータの収集や、処理などがより迅速に行えるのではないかと考えたのです。作業現場における効率化だけではなく、事務作業の効率を上げることで生産性のアップを図ることが導入を検討した目的です。
将来的なビジョンを見据えたツールの選択
導入事例のB社がRPAの導入を検討したのは2016年。その後さまざまな情報を取集し、検証がスタートしたのは翌年の2017年です。実際の現場の業務におけるRPAの使用方法や効果が具体的にイメージできるよう、担当者は複数の部門で管理業務に携わっていた人材を起用しました。そして人事部や総務部など、実際に導入を検討している複数の部署で行われた検証によって、約1,000時間もの業務の削減という非常に大きな効果が見られたのです。
数あるRPAツールの中でもUiPathにした理由は、使用しやすいシステムであることと、将来的にロボットを拡大させていった場合もしっかり統括できる能力があるかという点において優れていたためです。将来的に各部門の社員が数百人単位でロボットを開発し、利用人数は数千人規模になることを見据えていたB社では、重要なポイントでした。
また、企業規模が大きいほど、各部門ごとに必要なシステムは違ってきます。UiPath Orchestratorによって、システム全体を管理し、それぞれの部門ごとに必要なロボットだけを安全に利用できる環境が整えられることも大きな魅力でした。
導入によるコスト削減と、そこから広がる活用方法
検証期間を経て正式にRPAを導入したB社では、現在まだ一部の部署だけでの使用にも関わらず、3,000時間もの業務時間を削減できる見込みとなっています。特に削減が目覚ましかったのは、経費を処理するための作業に掛かっていた時間です。世界各地で仕事をしている社員の経費を処理するためには、これまで人が手で入力作業を行っていました。ここにRPAを導入することによって、500時間の削減に成功しています。経費の精算処理はどの部門でも必要となるため、これから導入部署を増やすことで一層の削減が期待できます。
また、一度の業務処理に要する時間が短くても、毎日、毎時間ごとに行わなくてはいけない仕事などもあります。その時間社員は会議に参加することや、休むこともできません。定型化した作業をロボットが行うことで、その時間を有効活用できるようになりました。
全ての業務がRPAで完了するわけではありません。しかし最終的にシステム化することを視野に入れた業務でも、RPAの導入は有効であると考えられます。システム開発の際に時間もコストも掛かるのは、どのような作業をどうシステムに落とし込むかの定義部分です。RPA化する際にその定義をある程度設定しておくことになるので、システムを開発する際もその部分の費用削減に繋がるのです。
最後に
RPAシステムはまだまだ馴染みがなく分かりづらいイメージがあるかもしれませんが、使い方自体は決して難しいものではなく、導入によって非常に大きな効果を発揮するものです。使いこなせる社員の教育に力を入れることも最終的にコストの削減に繋がります。導入事例のようにいろいろな部署の共通業務をシステムに任せたり、単純作業を依頼することで業務時間が大幅に削減しやすくなるでしょう。