
街頭の大型広告やイベント会場、商業施設などで目にすることが増えた「LEDビジョン」はデジタルサイネージ市場の拡大とともに注目を集めています。しかし、「LEDビジョンとはそもそも何なのか?」「液晶モニターとの違いがわからない」「導入にあたってのデメリットや注意点はないのか?」——こうした疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
本記事では、LEDビジョンの基本的な仕組みや特徴のほか、液晶モニターとの違いやメリット、導入時に押さえておきたい注意点をわかりやすく解説します。
LEDビジョンとは?
LEDビジョンとは、「発光ダイオード(LED)」を用いた大型のディスプレイ装置のことです。「LEDスクリーン」ともよばれ、小さなLED素子が点灯することで映像を映し出しています。
LEDビジョンの基本構造として特徴的なのは、LED自体が光を発する“自発光型“のディスプレイである点です。これにより、LEDビジョンは外光の影響を受けにくく、直射日光が当たる環境下でも十分な明るさが実現でき鮮明な映像が表示できます。このような特性から、屋内での使用はもちろんのこと、屋外に設置する広告看板やスタジアム、駅構内など、高い視認性が求められる場所や用途に広く活用されています。
さらに、LEDビジョンは複数のモジュールを組み合わせて設置されるため、スタジアムに設置するような超大型スクリーンの構築が可能です。平面はもちろんのこと、曲面や円柱状への設置もでき、柔軟なデザイン性を活かした演出にも対応できます。
LEDビジョン・液晶モニター・LEDモニターの違い
LEDビジョンと混同されやすいのが「液晶モニター」や「LEDモニター」です。いずれも映像を表示するための装置という点では共通していますが、基本構造やサイズ、使用環境に大きな違いがあります。
項目 | LEDビジョン | 液晶モニター・液晶ディスプレイ | LEDモニター・LEDディスプレイ |
---|---|---|---|
表示方式 | 自発光(発光ダイオード自身が光る) | バックライト+液晶で表示 | 自発光(発光ダイオード自身が光る) |
明るさ(輝度) | 輝度が高く屋外でも見やすい | 輝度は低く屋外使用には不向き | 輝度が高く屋外でも見やすい |
サイズ展開 | 大型・曲面にも対応可能 | 小~中型 | 小型~中型 |
視認性 | 遠距離からでも鮮明に見える | 視野角や距離に制限がある | 液晶モニターに比べると視野角が広く見やすい |
価格 | 高価 | 安価 | LEDビジョンに比べると安価 |
冒頭で説明した通り、LEDビジョンは発光ダイオードが自ら光ることで映像を表現しますが、液晶モニターは液晶とよばれる特殊な物質にバックライトの光を照射する仕組みを採用しています。
自発光型で輝度の高いLEDビジョンは屋内・屋外を問わず使用できる一方で、液晶モニターは輝度が低いため屋外使用には不向きといえます。また、液晶モニターはバックライトと液晶パネルで構成されるためスクリーンのように大型のサイズ展開は難しく、主にPC用のディスプレイやテレビなど小型から中型のサイズに適しています。
ちなみに、LEDビジョンと混同しやすいものに「LEDモニター」や「LEDディスプレイ」もありますが、これらは液晶モニターのように小型であらかじめサイズが決められているものを指す場合が多く、大型のLEDビジョンとは区別されることが一般的です。
導入の目的や使用場所に応じて、それぞれの特性を理解したうえで選定することが重要です。
LEDビジョンのメリット

LEDビジョンには、液晶モニターやプロジェクターでは得られない多くのメリットがあります。主な強みとして挙げられるのが以下の4点です。
高い輝度と優れた視認性
LEDビジョンの最大の特長は、非常に明るく鮮やかな表示が可能な点です。真夏の屋外スタジアムやイベント会場など、強烈な直射日光が差し込むシーンでも映像がくっきりと表示され、昼夜を問わず高い視認性を確保できます。
たとえば、駅前の大型広告にLEDビジョンを採用すれば、天候や時間帯に左右されることなく見やすい映像を表示でき、メッセージや広告を効果的に届けられるようになります。また、夜間においても遠くから多くの人の目を引くため、集客アップの効果も期待できるでしょう。
幅広いサイズ・形状に対応
LEDビジョンは小さなユニットを組み合わせて構成されるため、設置場所に合わせて柔軟なサイズ調整が可能です。液晶モニターの場合、◯インチといったように製品ごとにサイズが決められていますが、LEDビジョンは1枚のモニターのように決まった大きさではなく、縦長や横長、円柱、曲面など自由なレイアウトにも対応できます。
これにより、数メートルから数十メートルの巨大スクリーンや商業施設の壁面演出、展示会やライブイベントの舞台装飾など、クリエイティブな用途にも応用しやすくなります。
ちなみに、大型のデジタルサイネージやスクリーンを設置するために、複数の液晶モニターを組み合わせるという方法もありますが、この場合液晶モニターのベゼル(縁)が継ぎ目のように目立ってしまいます。しかし、LEDビジョンであれば継ぎ目のない美しい見た目を実現できる点も大きなメリットといえるでしょう。
耐候性に優れている
屋外使用を前提としたLEDビジョンは、高い耐候性・耐久性が備わっています。防水・防塵・耐熱・耐寒設計が施されており、悪天候や温度変化の激しい環境下でも安定して稼働できる点は液晶モニターにはない大きな強みといえるでしょう。耐久性が高くメンテナンスの頻度が少なくて済む点も魅力です。
LEDビジョンのデメリット・導入にあたっての注意点

メリットの多いLEDビジョンですが、導入にあたってはコストや設置条件、運用面での課題も伴います。ここでは導入を検討する際に押さえておくべき注意点をご紹介します。
導入コストが高額
LEDビジョンの最大の障壁は導入コストが高額である点です。価格を左右する要因はさまざまですが、主にサイズが大きく、ピクセルピッチが小さいほど高額になる傾向があります。また、使用環境に応じて屋内用と屋外用がありますが、耐候性が求められる屋外用はより高額です。
一般的な液晶モニターやテレビなどは本体を設置するだけで使用できますが、LEDビジョンは設置場所に合わせて工事が必要であり、設置工事費用や撤去費用なども加算されます。
場合によっては建築確認や自治体への申請なども加わるケースがあるため、導入前には明確な費用見積もりと運用計画が必須です。
設置環境に配慮が必要
屋外LEDビジョンを設置する場合には屋外用の機種を選定することはもちろんですが、特に強い日差しが差し込む場所や風雨にさらされる場所では、設置角度や冷却対策、排熱処理なども考慮して設計しなければなりません。これには専門的な知見が必要であり、
都市部では、LEDビジョンの明るさが周囲に影響を与えることもあるため、条例や景観ガイドラインの確認も忘れずに行いましょう。
解像度と視認距離のバランスに注意
LEDビジョンの画質は「ピクセルピッチ(LED間の距離)」で決まるといっても過言ではありません。また、一般的にピクセルピッチが狭くなるほどLEDビジョンの価格は高額になる傾向もあります。
LEDビジョンの導入にあたっては、設置場所に応じて適切なピクセルピッチを検討する必要があります。たとえば、ピクセルピッチが広いと近距離で見たときにドットが目立ちやすく、表示が粗く見えるおそれがあります。反対に、屋外で10m以上離れて見る場合には、ある程度のピクセルピッチを空けても一定の視認性を確保しやすくなります。
LEDビジョンの導入が適している主なケース・活用事例
これまで解説したLEDビジョンの特性やメリット・デメリットを踏まえ、どういった場所・用途への導入が適しているのかを活用事例も踏まえてご紹介しましょう。
屋外スクリーン・デジタルサイネージ
屋外に設置するデジタルサイネージや街頭ビジョン、大型スクリーンなどはLEDビジョンの得意分野です。
輝度が高く日中の直射日光下でもくっきりと映像が表示できるため、通行人や車からも視認しやすいでしょう。また、動きのある看板広告は人の目を惹きやすく、広告そのものとしても高い効果が期待できます。
ちなみに、店舗内やお店の軒先などに設置する比較的小型のデジタルサイネージであれば、LEDビジョンよりもLEDモニターのほうが設置しやすくコストも抑えられます。
【活用事例】
- 駅前・繁華街の大型屋外ビジョン
- 商業施設外壁への設置
- 屋外イベント・フェスのステージ装飾 など
多くの人が多方向から行き交う施設
LEDビジョンは自発光型という特性上、どの方向から見ても視認性に優れています。液晶テレビや液晶モニターの場合、わずかに横にずれただけで画面が暗く見えたりすることも多いですが、LEDビジョンの場合はそのような心配がありません。
このような特性を活かし、さまざまな方向から多くの人が行き交う場所にも向いているといえるでしょう。
【活用事例】
- 駅構内の天井吊り広告
- 展示会・見本市のブース
公共施設の広報表示 など
自由なレイアウトが求められる施設・スペース
LEDビジョンは複数のモジュールを構成して設置されるため、曲面、円柱状など、平面ではない複雑な形状の場所にも広告や演出を展開できます。
【活用事例】
- 高級ホテルや高級ブランド店舗の演出
- アミューズメント施設での空間演出 など
LEDビジョン導入のステップとポイント

LEDビジョンは機器を購入すればすぐに設置・使用できるものではなく、設計や許可申請、施工、運用など複数のステップがあります。導入までの一般的な流れと、それぞれの工程で注意すべきポイントを紹介します。
【ステップ1】目的・使用環境の明確化
まず最初に行うべきは、なぜLEDビジョンを導入するのか目的を明確化しておくことです。
たとえば、屋外広告に使用するのか、イベントのステージ装飾で使用するのかによっても求められるサイズや解像度、その他スペックは異なります。
目的や使用環境を明確にしておくことで、必然的にLEDビジョンに求められるスペックや設置条件なども定まってきます。
【ステップ2】現地調査・設置可否の確認
次に設置場所の現地調査を行います。調査の内容はさまざまですが、代表的な確認項目は以下の通りです。
- 壁面・天井・床などの設置箇所の強度、スペース
- 電源・通信回線の有無、容量の確認
- 屋外の場合は、雨風・直射日光・温度条件などの確認
- 「景観条例」や「屋外広告物法」などの法的制限の確認
設置スペースや電源、環境など物理的な条件に問題がなかったとしても、法的に何らかの制限がありこれを見逃していた場合、施工そのものを断念せざるを得なくなるため必ず確認しておきましょう。
【ステップ3】製品選定・設計
現地調査に問題がなければ、条件にマッチしたLEDビジョンの選定と施工設計に移行します。
製品選定にあたっては、設置場所や視認距離に応じてサイズとピクセルピッチを設計する必要があり、これ以外にも筐体の形式(壁掛け式orスタンド式)、コンテンツの表示方法(物理メディアorネットワーク配信)など検討項目は数多くあります。
【ステップ4】設置工事
製品の選定と設計が完了したら、いよいよ設置工事に入ります。LEDビジョンの設置にあたっては電源の引き込みや配線、筐体の構造計算なども必要なため、専門業者による施工が必須です。
高所作業や夜間作業など危険を伴う作業も多いため、安全管理の徹底と無理のないスケジュールで工事を終えられるよう綿密に打ち合わせておきましょう。
【ステップ5】コンテンツ制作・表示テスト
設置工事と並行して、LEDビジョンで表示する動画や画像コンテンツの制作も進めておきましょう。コンテンツ制作にあたっては、LEDビジョンのサイズやピクセルピッチ、視認距離なども考慮しながら、現場でどのように見えるのかを意識することが大切です。
表示テストを繰り返しながら、文字が潰れたり色が飛んだりして見えづらくならないか、音声やテロップのタイミングなども確認しておきましょう。
【ステップ6】運用体制の構築
LEDビジョンの設置が完了し本運用がスタートして終わりではなく、その後も定期的なコンテンツ更新や機器メンテナンスが必要です。
どういったスケジュールでコンテンツを更新していくのか、その方法や担当者の割り当てはもちろんのこと、ドット抜けや配線の緩みなどがないかLEDパネルの点検を行ったり、万が一異常が発生した際の対応マニュアルも整備しておくことが大切です。
LEDビジョンの導入にあたっては信頼性の高い専門業者に相談を
「昼夜を問わず鮮明な映像を映したい」、「屋内・屋外で超大型のスクリーンを設置したい」、あるいは「曲面など複雑な形状のスペースに演出を施したい」といった場合、LEDビジョンは最適な選択肢といえるでしょう。
一方で、LEDビジョンの導入にあたっては設置場所に応じて現地調査や設置工事が必須であり、作業には専門的な知識・ノウハウが要求されます。また、設置するエリアによっては景観条例や屋外広告に関する条例、工作物確認申請といったさまざまな手続きが必要になるケースも少なくありません。
安全かつ確実にLEDビジョンを導入するためにも、まずは信頼できる専門業者へ相談してみましょう。