デジタルサイネージの運用方法とよくある3つの課題の解決策を解説

デジタルサイネージとは、デジタルディスプレイやモニターを使用して情報を映像で表示するシステムです。

従来の看板や紙のPOP、掲示板などと異なり、デジタルコンテンツをリアルタイムで更新・表示できるデジタルサイネージは小売・飲食店、オフィス、交通・教育機関など多くの場所で活用されています。本記事では、デジタルサイネージの運用方法とよくある課題の解決策について解説します。

デジタルサイネージ運用の基本とメリット

まずはデジタルサイネージの概要と、効果的な活用の重要性について知っておきましょう。

デジタルサイネージ運用の基礎知識

デジタルサイネージは、主に以下の5つを目的として導入されます。

  • 広告配信・販売促進
  • ブランディング
  • 顧客体験の提供
  • 情報提供
  • 環境演出

動画・静止画・テキストを用いたリアルタイムな情報提供と柔軟な更新が可能なデジタルサイネージは、主な効果として「注目度向上」「広告効果の向上」「情報の適時性確保」などが挙げられます。

デジタルサイネージを導入するには、以下の機器が必要です。

名称 役割
ディスプレイ
  • コンテンツを表示するための装置
  • 設置タイプには「壁掛け式」「スタンド式」「埋め込み式」の3つがある
  • 設置場所や目的に応じてディスプレイのサイズや種類を選定する
プレーヤー(STB)
  • ディスプレイにコンテンツを表示するための装置
  • CMSで設定したスケジュールに沿ってコンテンツを表示する管理機能もある
コンテンツ管理システム(CMS)
  • コンテンツの作成~配信スケジュールの設定~配信を行うためのシステム
  • 遠隔からの一括管理も可能
ネットワーク接続
  • リモート管理更新を行うために必要
  • ネットワークにつなげずに運用する「スタンドアロン型」の場合は不要
サーバー
  • コンテンツの保存、配信管理を行うための機器
  • オンプレミス型(自社で管理)とクラウド型(事業者が提供するサーバーを利用)の2種類がある
  • クラウド型の場合自社での設置管理は不要

デジタルサイネージを効果的に運用するメリット

デジタルサイネージの導入には、以下の5つのメリットがあります。

  • 時間帯や状況に応じたリアルタイムな更新
  • 場所や対象に合わせたピンポイントな訴求
  • 動画や高解像度の画像による視覚的インパクト
  • 視聴者の反応の効果測定も可能
  • システムによっては顧客との双方向コミュニケーションも可能

しかし、デジタルサイネージを導入するだけで効果が出るとは限りません。デジタルサイネージで効果を最大化するためには、特徴を活かした適切な運用と継続的な改善が必要です。

デジタルサイネージの運用方法5ステップ

次に、デジタルサイネージを実際に運用する際の流れとポイントについて、5つのステップに分けて解説します。

デジタルサイネージの運用方法とよくある3つの課題の解決策を解説

1:運用プラン設計

デジタルサイネージの導入で期待する効果を上げるためには、まず何を訴求・提供したいのかについて明確な目的設定が必要です。機器選定や運用方針は販促、情報提供、ブランディングなどデジタルサイネージを導入する目的に応じて異なります。

例えば販促目的でデジタルサイネージを導入する場合には、キャンペーンやイベント、セールなどの販促計画を基にしてコンテンツの更新計画を立てるのが一般的です。

機器や設置場所についても、人通りの多さや視認性、滞留時間などを考慮して屋内か屋外か、ディスプレイのタイプや大きさをどうするかなど、目的に合わせて決定します。

また、目的が複数店舗での販促ならネットワーク型、更新頻度がそこまで多くない情報提供なら単独のスタンドアロン型など、デジタルサイネージのシステムについても初期段階で検討が必要です。

2:コンテンツ計画と制作

目的に合わせた機器やシステムの選定導入が終わったら、次にコンテンツの計画と制作に入ります。

適切なコンテンツの長さを決定するための主な要素は視聴環境です。例えば販促目的で駅構内や街中など一瞬通過するだけの人が多い場合には短め、待合室やレジ前など一定時間見てもらえる設置場所は長めにするなど、視聴者の滞在時間に合わせて設定します。

コンテンツは必ずしも動画がベストとは限りません。訴求内容やターゲットに応じて動画・静止画・テキストから適切な形式を選びます。

専門性の高い高品質なコンテンツを制作したい場合は外部委託も検討すべきですが、自社で制作する場合にはテンプレートのあるサービスを利用すると制作の負担が少なく済みます。

3:スケジューリングと配信

デジタルサイネージにとって重要なのはきめ細かい配信運用であり、定期的に更新しないと単なる「ポスターの電子化」になり効果が十分に期待できません。

以下のように時間帯、天候、ターゲット層、設置場所、イベントなどに応じてコンテンツを変更することで、デジタルサイネージの強みを活かし効果を上げられます。

  • 飲食店で朝昼夕で異なるセットメニューを表示する
  • 雨天時に暖かいスープや鍋材料をPRする
  • 人気スポーツの試合の日は応援セットとしてお酒とおつまみを訴求する

自動配信のスケジュール設定が可能なネットワーク型のデジタルサイネージなら、配信スケジュールを事前に設定し、自動で切り替えられます。コンテンツ管理システムを活用すれば、複数拠点の一括管理や、急な変更への対応も容易です。

4:効果測定と改善

配信後は、通行人の視線を直接観察したり、視聴率が測定できるディスプレイを導入したりといった方法で効果測定を行います。

次に、配信による来店客数の変化や売上への影響を分析します。これらのデータを基に、コンテンツの内容、配信時間、設置場所などを継続的に改善するサイクルを短期間で回せるのも更新が容易なデジタルサイネージの強みです。

5:メンテナンスと更新

電子機器であるデジタルサイネージのデメリットの一つが機器の劣化や故障です。そのため、紙媒体の広告と異なりソフトウェアの更新やハードウェアの点検など定期的なメンテナンスが必要です。運用を外部委託する場合は、サポート体制や代替機の提供などのサービス内容を確認しておくとよいでしょう。

特に屋外設置の場合は天候などによる設置環境の影響を受けやすいため、定期的な清掃も行います。

コンテンツの定期的な更新も欠かせません。同じ内容を長期間表示し続けると効果が薄れるため、季節や流行に合わせて随時更新できるような負担の少ない運用体制を整えましょう。

デジタルサイネージ運用におけるよくある課題と解決策

デジタルサイネージの導入効果を上げるためにも、運用で起こりがちな3つの課題と解決策についておさえておきましょう。

費用対効果の低さ

原因 解決策
ターゲット理解の不足
  • 購買履歴データ、ウェブサイトのアクセスログ、顧客分析などの実施による顧客ニーズの把握
コンテンツの質が低い
  • コンテンツカレンダー(コンテンツをいつどこで公開するかのスケジュールをまとめたツール)の使用
  • 外部へのデザインコンテンツ作成の委託
  • デザインテンプレートの利用
  • 目的とコンテンツがずれていないか確認
視聴率が低い
  • 視認性が上がるディスプレイ配置場所の再検討
  • 見やすい適切な照明レベルの確保
費用が高い
  • 機器のレンタル/リースの検討
  • ターゲットが重なる企業への広告枠の販売
  • 内製化の検討

コンテンツ更新の負担

 

原因 解決策
頻繁な更新作業の必要性
  • リモート管理や自動更新機能の活用
  • 素材の差し替えで再利用できるコンテンツのテンプレート化
  • ウェブサイトやSNSなど、他メディアで使用した素材の活用
  • 端末の一括管理ができて少人数体制が可能なクラウド型配信管理システムの導入
内部リソースの不足
  • コンテンツ作成の外部委託
  • 小規模からの運用
コンテンツ作成の知識不足
  • コンテンツ作成の外部委託
  • デザインテンプレートがあるサービスの利用

技術的トラブル

原因 解決策
ハードウェアの故障
  • 年間保守契約(AMC)の締結
  • 定期的なメンテナンスの実施
  • バックアップ機器の準備
ソフトウェアの不具合
  • 定期的なソフトウェアアップデート
  • 安定性の高いソフトの選択
ネットワーク接続の問題
  • 安定したインターネット回線の確保
  • セキュリティが高いシステムの導入
  • オフライン時の代替コンテンツの準備

デジタルサイネージの運用代行を外部委託すべき?

デジタルサイネージの導入には、機器の導入費に加え運用費用や電気代などのコストがかかります。そのため、運用を内製化するか外部委託するかも重要な検討事項です。

内製化・外部委託それぞれで運用した場合のメリット・デメリットは以下のとおりです。

項目 メリット デメリット
内製化
  • 長期的観点でのコスト削減
  • 細かなカスタマイズや迅速な対応が可能
  • 社内の運用ノウハウの蓄積
  • 制作・運用に専門知識スキルが必要
  • スキルのある人員がいない場合の育成コスト
  • 運用負担の大きさ
外部委託
  • 専門知識を基にした運用アドバイスの提供
  • 社内リソースの効率化
  • 最新トレンドへの対応
  • コストの高額化
  • 内製化と比較した意思疎通の難しさ

 

運用を内製化すれば運用コストはおさえられますが、自社にスキルとリソースがそろった人員がいるかも重要な検討ポイントです。運用の専門家のノウハウを活用しつつ、社内の限られたリソースを事業に集中投下したほうが結果的に効果が上がる可能性もあります。

また、外部委託した場合の意思疎通については、事前の詳細な要件定義や委託先との緊密なコミュニケーションにより解決できます。

まとめ

効果的な情報発信ツールとして多くの利点を持つデジタルサイネージですが、効果を最大化するためには単に導入するだけではなく適切な運用が成功の鍵となります。

デジタルサイネージの導入目的や自社の状況を考慮しつつ、導入効果を最大限に引き出す運用体制を選択しましょう。

【デジタルサイネージガイド #01】デジタルサイネージ3つの導入メリット