
近年幅広い分野で普及が進んでいるのが、画像や動画、音声を駆使して動的な情報発信を行う「デジタルサイネージ」です。ディスプレイの大画面化・軽量化やコストの低下によりデジタルサイネージの国内市場規模は2027年で3,294億円と2022年比で65.4%の成長が見込まれ、さらなる拡大が予測されます。
本記事ではデジタルサイネージ導入の手順と導入例、導入のポイントについて解説します。
デジタルサイネージ導入の目的と効果
動画や画像を活用し、リアルタイムで更新される動的な情報を発信できるデジタルサイネージには主に以下の効果があります。
- 動的なコンテンツの配信により、視覚認識が向上し顧客の注意を惹ける
- 伝えたいコンセプトや世界観を効果的に伝えられ、ブランドイメージや顧客の購買意欲を高める
- リアルタイムな情報発信により、正確な最新情報を提供できる
- 顧客ターゲットに合わせた情報提供が可能になり、広告の配信効果がアップする
- パーソナライズされた情報提供や双方向のやりとりにより顧客体験の向上につながる
- 限られたスペースで多くの情報を表示でき、効率的な空間利用が可能になる

(引用:奈良市)
これらの特徴と効果により、デジタルサイネージは主に「集客力の向上」「販売促進」「効果的な情報提供」「ブランド認知度の向上」「顧客満足度の向上」を目的として導入されます。
デジタルサイネージ導入の5つのステップ
デジタルサイネージの導入で効果を上げるためには、計画的なアプローチが必要です。ここでは、導入に向けた5つのステップについて解説します。
1:目的の明確化
導入の第一歩は、具体的な目的と期待する効果を設定することです。デジタルサイネージ導入の目的としては、主に以下が挙げられます。
- 集客増加
- ブランド認知度向上
- 機能/サービスの紹介
- 情報提供の効率化
- 設置場所の環境演出
目的とターゲット層に応じて必要な機能や設置場所、効果的なコンテンツも異なります。効果を上げるためには、導入によって何を達成したいのかを明確にしましょう。
2:設置場所・設置タイプの選定
デジタルサイネージの効果を最大化するには、設置場所と設置タイプの選定が重要です。まず顧客の動線や視認性を考慮し、人通りの多い場所やターゲット層が集まるエリアを選びます。
エントランスやエスカレーター付近、待合スペースのような人の目線や動きに自然に入る位置で、一定時間滞在できる場所への設置が効果的です。設置タイプには、大きく分けて以下の3種類があります。
- 壁掛け式:視認性が高い
- スタンド式:移動が容易
- 埋め込み式:景観に溶け込みやすく人の通行を妨げない
決定した設置場所の視認性や安全性を考慮して、適した設置タイプを決定しましょう。
3:機器とシステムの選択
デジタルサイネージは通常ディスプレイ、プレーヤー(STB)、ソフトウェア、ネットワーク、サーバーで構成されるのが一般的です。まず、設置場所や目的に応じてディスプレイのサイズや種類を選定します。
- 屋内設置:32~50インチ
- 屋外(地上):32~85インチ
- 屋外(大型):120インチ~(目安)
屋外設置の場合は輝度の高さや防水・防塵機能、安全性も重要となります。配信システムタイプは主に以下の3つです。
- スタンドアロン型:USBメモリなどで簡易的に運用できる
- ネットワーク型:遠隔管理ができる
- インタラクティブ型:タッチパネル機能を持ち双方向コミュニケーションができる
コストだけにとらわれず、目的や設置場所を踏まえた機器とシステムの選定がデジタルサイネージの効果を引き出します。
4:コンテンツ戦略の立案
デジタルサイネージでの訴求力を向上させるためには、ターゲットの年代・性別に合わせたコンテンツ作成が欠かせません。以下の例を参考に、目的に合ったコンテンツタイプを選択しましょう。
- サービス案内
- 期間限定商品
- おすすめ商品
- イベント案内
- セール価格訴求
- 商品スペック
- イメージ訴求
- 教育・情報提供
- インタラクティブコンテンツ
市販のソフトや動画作成ツールを自社でコンテンツ作成することもできますが、テンプレートや専門サービスを活用するとコンテンツの幅が広がります。動画と静止画の組み合わせや他社コンテンツの組み込み、AI機能を搭載したコンテンツなどの技術も効果的です。デジタルサイネージのメリットが最大化できるよう、運用の柔軟性があるコンテンツ作成を心がけましょう。
5:運用体制の構築
デジタルサイネージは導入して終わりではなく、継続的に運用して効果を最大限に発揮します。最新情報や季節に合わせた内容を提供する継続的なコンテンツ更新、安定運用のためのメンテナンス、Webカメラや顔認証システムなどを活用した効果測定による戦略改善も必要です。
デジタルサイネージサービスを行っている会社に依頼すると、システム設計・制作・設置・運用・保守まで一貫して提供してもらえるため安定した運用が可能になります。
利用用途別のデジタルサイネージ導入例

ここではデジタルサイネージの配信内容や効果、導入のポイントについて導入例を簡単にまとめました。
設置場所 | 配信内容 | 効果/導入のポイント |
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商業施設・スーパー |
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企業 |
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公共施設 |
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教育機関 |
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医療機関 |
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公共交通機関 |
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飲食店 |
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この表からわかるように、デジタルサイネージは設置場所や目的によって従来の広告や情報伝達の枠を超えた視聴者へのさまざまなアプローチが可能です。
デジタルサイネージ導入時に考慮すべきポイント
デジタルサイネージ導入時には、導入後も含めた多角的な視点からの検討が必要です。以下で、主要な考慮すべきポイントについて解説します。
費用対効果(ROI)
一般的に、デジタルサイネージには以下の費用がかかります。
初期費用 | ランニングコスト |
---|---|
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総額は設置するディスプレイサイズやシステムによって大きく異なりますが、ディスプレイだけでも10万円~300万円の費用がかかります。
これらの費用に対し売上増加や顧客満足度向上、業務効率化などの予測を数値化し費用対効果について検討します。費用対効果を上げるために、クラウド型システムの選択やテンプレート利用などのコスト削減も検討しましょう。
コンテンツ更新の必要性
デジタルサイネージの最大の利点は、コンテンツを柔軟かつ迅速に更新できる点にあります。頻繁に変わる情報や季節ごとのプロモーションなどには効果的ですが、更新頻度が低い場合は静的な従来の紙媒体や看板の方が適しているかもしれません。
導入前には、デジタルサイネージ導入の必然性について検討しましょう。店頭などに設置を検討している場合には、タブレット型コンピュータを使い低コストで運用する方法もあります。
セキュリティ対策
デジタルサイネージは効果的な情報発信ツールですが、ネットワーク型の場合インターネットに接続するためサイバー攻撃によるコンテンツ改ざんや情報漏洩、プライバシー侵害などのセキュリティリスクがあります。これらのリスクを避けるためには、OSやソフトウェアの定期的な更新やシステムと外部との接続点のセキュリティ確保、定期的なセキュリティ点検が不可欠です。
メンテナンス計画の立案
デジタルサイネージのディスプレイの法定耐用年数(税法上で定められた固定資産の使用可能期間)は約3年です。
実際におおむね5年程度使用可能ですが、輝度の低下による見にくさや劣化による事故のリスクを考えると壊れない限り使用できるわけではありません。そのため定期的な点検や修理に加え、機器の耐用年数を考慮した入れ替え計画と予算の確保も必要です。
デジタルサイネージの効果的な導入・運用には、導入目的に合ったサービスを提供できる会社の選定が重要です。専門知識、導入実績、サポート体制、サービスの幅広さなどを総合的に評価し、信頼できる企業との連携を検討しましょう。
まとめ
デジタルサイネージは、リアルタイムでのコンテンツ配信や効果的なコミュニケーションを可能にする強力なツールです。
しかし、その効果を最大限に引き出すには、導入目的に合った適切な計画と実施が不可欠です。本記事を参考に適切なステップや考慮すべきポイントをおさえ、効果的な導入と運用を目指しましょう。