SaaS型ERP製品の導入方法は、Fit to StandardなのかFit＆Gapなのか？

ERPパッケージは、企業の基幹システムとして、企業の活動に必要な機能を集約した情報システムです。
これにより、データの一元管理や業務の統合が可能になります。独自のシステムを一から構築して導入するスクラッチ開発に比べてコストが低く、導入期間も短いため、昨今導入する企業が増えています。

導入にあたっては、Fit to StandardやFit&Gap分析を通じて自社の導入目的に沿った最適なERPパッケージを選択し、必要に応じて業務プロセスを変更することが大切です。

本記事では、Fit to Standard・Fit&Gap分析とは何なのか。また、ローコード開発のPower Platformと組み合わせてカスタマイズの導入が可能なERP製品「Dynamics 365 Business Central」についてご紹介します。

Fit to Standardは、既存の標準機能を最大限に活かし、必要に応じて複数のクラウドサービスと組み合わせて導入する方法です。システムの既存の標準機能を充分に活かすことを前提としており、追加のカスタマイズ・アドオンの開発は行いません。

従来、企業は自社の要件に合わせてERPシステムを構築・運用してきましたが、Fit to Standardでは、システムの標準機能を最大限に活用することを重視します。この方法により導入期間が短縮され、低コストでの導入が実現できます。

しかし、システム側に業務を合わせて変更することによって現場からの不満が出たり、業務によってはシステムに合わせることが難しい場合もあります。

Fit & Gapとは、システムの標準機能（Fit）と企業の現在の業務プロセスや要件との間のギャップ（Gap）を洗い出す手法です。その目的として、必要なカスタマイズやプロセスの変更を明確にし、システムを企業の具体的なニーズにマッチさせるようにすることです。

このアプローチでは、業務プロセスをシステムに合わせ、システムがカバーできない部分についてはアドオン開発を実施いたします。従って、アドオン開発のボリュームが大きいほど労力は増え、導入期間が長くなります。

Fit to StandardとFit & Gap（アドオン開発を行う導入方法）の違いは、以下の通りです。

Microsoft社製SaaS型ERP製品の Dynamics 365 Business Centralは、Fit to Standardで足りない部分（Gap）をローコード開発のPower Platformと組み合わせてカスタマイズする導入方法を推奨しています。

Microsoft Power Platformは、直感的にコラボレーションできる拡張可能なプラットフォームで、効率的で柔軟なソリューションを簡単に作成するローコードツールを提供しています。 このプラットフォームは、ビジネスの課題に対応するために、以下の4つの主要なツールを組み合わせています。

分析: Power BIは、クラウドやオンプレミスのデータソースに接続し、簡単な操作でデータを統合・モデル化するツールです。Excelのように直感的に使用でき、高度な分析機能を提供し、 多様なデータからインテリジェントなインサイトを導き出します。

対応: ローコードソリューションを構築してビジネスの課題に対応します。つまりプログラミングなしで、様々な業務をアプリにすることができ、業務改善や効率化に繋げることができます。

自動化: コーディング不要の自動化でプロセスを合理化することができます。ノーコードプラットフォームとして設計されており、エンジニアやデータ入力作業を行う従業員の作業効率を大幅に向上させることができます。

支援: 会話型AIで日常的な問い合わせを大規模に処理します。他のMicrosoft製品とデータ連携ができるため、顧客データに関するタスクの自動化も行うことが可能です。

本記事ではFit to StandardとFit&Gap分析、Dynamics 365 Business Centralをご紹介しました。

ERPの導入には、要件の明確化やAS-IS、TO-BEの可視化など、十分に準備を行い、最適な製品選定を行った上でFit to Standard/Fit & Gapにて導入する必要があります。

導入前の分析を通じて、自社に必要なシステムの要件をあらかじめ洗い出し、それらとパッケージ製品が持つ機能はどれぐらい条件を満たしているのか？どの部分が足りないのか？を事前に分析し、把握しておくことが非常に重要です。